第三十章~トーナメント決勝/天穿ノ剣戟③~
焔城 アカネ
「ようし、それじゃあ、まずはアタシから行くかな♪」
夜桜 カオリ
「いえ。どうせこの子、連戦するんでしょ。
だったら、まずは私に戦わせて。
弱って死にそうな所に攻撃しても、何も楽しくないもの。」
焔城 アカネ
「え、カオリに楽しいとかあったのかよ~、意外~。」
夜桜 カオリ
「別に、顔に出ていないからって楽しんでいないわけじゃないわ。
コレでも結構、駆け引きとかは好きな方なのよ。」
焔城 アカネ
「はいはいっとぉ~。
ま、アタシがやる頃にはもうボロボロだろうから、ツンって一押しすれば
すぐに倒れちゃうザコザコになっちゃってるだろうけどね(笑)」
黒みぎゃ子
「言わせておけば~!!(怒)」
黒みぎゃ子が速攻をかける。
黒い半透明の魔法陣が翳した手の前面に浮き上がり、
それを夜桜に打ち込む。
「ブラック・カーズ(黒い呪い)!!!!」
夜桜は見事にそれを喰らってしまい、顔や体に黒い模様が浮かび上がる。
夜桜 カオリ
「コレは・・・!!」
黒みぎゃ子
「ヘヘ、アタシのお手製の呪いの紋章さ。
アタシもその紋章にエネルギーを与え続けないといけないけど、
アンタも同じようにエネルギーを吸われ続ける。
死なばもろとも、とにかくまずは確実にアンタを倒す!!」
夜桜 カオリ
「何て事!!
そんな事をして私に勝っても、アカネには勝てないわよ!」
黒みぎゃ子
「それはその時に考える!!
とにかくまずは、アンタを倒す事だけだよ!!」
夜桜 カオリ
「生意気だね!!
フォーリング・チェリーブロッサム!!」
夜桜の詠唱の後に、周囲に狂い散る赤黒い桜の形をした花弁が
黒みぎゃ子にまとわり付き、身体を切り裂いて行く。
黒みぎゃ子
「ぎゃぁああ!!」
夜桜 カオリ
「私にダメージを与え続けるのは良いけれど、貴女も一緒でしょう?
そこに更に別のダメージがあれば、貴女の方が先にダメになるでしょ?」
黒みぎゃ子
「悪魔を・・・舐めるなよ・・・!!」
黒みぎゃ子が急に腰を落とし、苦しそうな声を上げながら、
黒く大きな球を生成した。
「ぐおおぉぉ・・・グラビティー・・・ボム!!!!!!」
瞬間、黒い球体がはじけ飛び散り、黒い花びらが消え去る。
そしてそれは夜桜にも当たっていた。
夜桜 カオリ
「ぐっ、さすがはTチーム1の霊力ね!
だけど、コレはどうかしら!?」
夜桜が突然、大きな桜の木を召喚し、それを抱え込みながら、
黒みぎゃ子目掛けて振りかぶった。
黒みぎゃ子
「ぐわはぁッッッ!!!!!!!」
黒みぎゃ子が血を吐く。
切創としての肌の外傷と共に、口内の出血、ひいては
喉等にもダメージがあったようで、一瞬声が出ない。
夜桜 カオリ
「ボロボロだね・・・フフ、私も確かにダメージはあるけれど、
これでもう貴女もかなりキツいんじゃない?」
しかし、黒みぎゃ子は口内に溜まった血をペッと吐き出し、言った。
「良い気になんじゃねーよ。
悪魔を舐めるなって言っただろ?
悪魔の怖さ、見せてやるよ。」
両手を天にかざし、すると雲が引き、夜になる。
しかし異常なのは、その夜の闇が暗すぎる。暗いと言うより、漆黒。
「さぁて、お互い、どこから来るかもわからない回転刃の海の中で、
ボロボロになろうぜぇ?」
およそ、少女の見た目からは似つかわしくないくらいに挑戦的な物言い。
しかし次の瞬間に、それは始まった。
夜桜 カオリ
「グッ!!何だ、頬に刃物が・・・次は、足!?
コレは・・・まさか、このステージ上を、漆黒の闇の中で、
小さな刃物が舞っていると言うのか!?」
黒みぎゃ子
「フフ、当たり~。コレはね、自分も同じ環境で、痛っ・・・、
一緒に傷を味わ・・いてっ・・うからこそ出来る、最狂の
デスマッチなんだよ・・・降りるなら、今のうちだよ、クク。」
その様子を見ながら、白みぎゃ子とみぎゃ子、ユキちゃんが心配する。
ユキちゃん
「ダメだよ、黒みぎゃ子ちゃん、そんな、自分を大切にしない戦い方・・」
みぎゃ子
「クソッ、アタシが次の戦いは出たいけれど・・・それやったらアイツが、
あ~クソッ、黒みぎゃ子、やめるんだ、もう十分だよっ!!」
白みぎゃ子
「黒ちゃん・・・ごめんね・・・私が、勝てなかったせいで、
こんな事に・・・・。」
しかし、黒みぎゃ子は傷だらけで気丈に笑った。
「ハハッ、気にすんなよー、皆!!
ホラ、もうアイツ、意識無いみたいだよ?」
見るとそこには、ただ茫然と意識を失い立っている夜桜が居た。
すぐに、焔城が助け出す。
焔城 アカネ
「何ちゅう戦い方するんだよ、アンタ!!
でも、もうコレでアンタもボロボロ、後はアタシが一押しすれば
倒せるくらいにもう余力ないだろ?」
一旦、漆黒の刃物舞う空間を収める黒みぎゃ子。
その姿はもう、立っているものやっとでフラフラだった。
黒みぎゃ子
「ヘっ、まだまだ・・・さっきまでのは、オードブルだぜ・・・。」
焔城 アカネ
「強がんじゃねーよ!!
大体、今のアンタには無理だけど、アタシに勝った所で、
そこの青シャツじゃあ天城には勝てねぇよ。
アイツはアタシ達とは強さの次元が違うんだ。
結局、お互いにボロボロになり損になるくらいだったら、
素直に負けを認めて降参しろよ。
アタシだって別に、アンタの命を奪いたいワケじゃねーよ。」
黒みぎゃ子
「ハッ、この程度の傷と苦境で泣き言言ってたら、悪魔の名が廃るわ。
さっきも言っただろ?これはまだ、オードブルだ、って。」
焔城 アカネ
「いや、、んー、わかんねぇなら、少し強めに殴ってやるから、
まぁ死なねぇ程度に気絶させて、それで終わらせてやるよ。
だから、すぐに仲間に回復して貰うんだぞ?」
黒みぎゃ子
「だ・か・ら・ぁ~!!
誰が、もう限界だって言った~!!!????」
傷だらけの体で、ゼェゼェと息が整わないまま、黒みぎゃ子が次の魔法陣を
空中に描いた。そしてそれを地面にそっと移す。
すると・・・
グゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
地面が揺れ、ステージに裂け目が出来始めた。
そしてその底から、赤く煮えたぎるマグマを纏った、
赤黒く光る山ほど巨大な存在が現れた。
蠅の頭と山羊の頭を持ち、周囲には腐臭をまき散らし、
比喩では無く、本当に耳を壊す音で叫ぶ、まさに厄災の悪魔。
黒みぎゃ子
「ク・・ク。コレは、悪魔辞典にも名前の無い悪魔だ。
名前を付けてしまえばそれは、この常世を破壊し兼ねんからな。
さぁ、女。命乞いするなら今のうちだぞ?
コイツを呼んだからにはアタシもそれなりに差し出すものがある。
もうコイツを戻らせるには、誰かの血と絶望が大量に必要なのだ!!」
あまりの圧倒的な光景に、両チームともにただ目の前を見るしか無かった。
それはもう、トーナメントと言う人間の戦いの枠組みに収まるような
人智の至る出来事の範囲を遥かに超えていた。
焔城 アカネ
「な・・何なんだよ、コレ・・・こんなの、勝てるわけ・・無いじゃん。
降参、します。」
黒みぎゃ子
「何だとー!?
お前、それでも・・・ぐ、あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁ!!!!!!!」
焔城が降参を宣言した途端に、名の無き悪魔が黒みぎゃ子を飲み込んだ。
周囲が静寂に包まれる。
・・・。
そして、約1分後。
悪魔の口から、黒みぎゃ子が吐き出された。
ほぼ回復したみぎゃ子が、駆け寄る。
その顔は死んではいないものの息が浅く、そして何より・・・
Tさん
「霊力が・・・感じられねぇ。」
白みぎゃ子が言った。
「黒ちゃん・・・この技は、相手を殺せなかったら、自分の霊力を
奪われてしまう・・・また戻るには、一体どれだけの時間がかかるか、
わからないのに・・・ごめん、ごめんね、黒ちゃん・・うう・・。」
両チーム共に、本当にいたたまれない気持ちのまま、しかし双方、
譲れないものがあった。
みぎゃ子
「アタシはやっと全快したよ。2勝2敗、これでイーブンだ。
天城さん、最後の戦いをしよう。」
天城 シン
「あぁ。オレ達だって、絶対に負けられない。
何故なら、お前達は結局の所、こんな技に頼らなければならない程弱い。
そんなヤツらがこの世界の真実を知った所で、何もならない。
オレ達だけが唯一、この世界の真実を知り、それを救いに変えられる。」
こうして決勝戦最後の戦いが始まった。




