第二十六章~トーナメント一回戦/ロトカ・ヴォルテラ~
トーナメント会場に辿り着いたみぎゃ子達を待っていたのは、
早速一回戦の対戦相手達だった。
中心の男が言った。
「ボク達はロトカ・ヴォルテラ。捕食者と被食者のバランスを示す、
自然の摂理を基軸にしたチームさ。」
いまいちわからないと言った様子のみぎゃ子に対して、
人形を抱えた少女が言う。
「簡単に言えば、弱肉強食よ。本戦は8チームによるトーナメントだから
あなた達を含めて3回勝てば、世界の真実とやらに触れられるのよね。」
Tさんが霊力を測る。
「骸骨が6400、紫ロング髪の女が7200、真ん中の男が9100、
人形を持った女が5800、ロン毛の男が8600、か。」
ルールは3勝先取制、勝利した場合はそのまま連戦も可能。
降参か戦闘不能となれば敗北となる。
Tさん
「じゃあ、オレがまず先鋒を務める。
相手チームの傾向を掴んでくれ。」
ロトカ・ヴォルテラからは骸骨戦士”ボーンズ・ウォーリアー”が、
意気揚々と前に躍り出た。
「さぁて、死にたいのはどいつだ?」
Tさんが答える。
「まぁ、まずはお互いに様子見って感じだろ。
オレが相手をさせて貰うぜ。」
「様子見?・・・そんな無意味な事はしない。
最初から全力で潰しに行くだけだ。」
ボーンズの体が不意に消えたかと思うと、しゃがみ込みながら
Tさんの前面まで飛んで来た。そしてそのまま、アッパー。
「ぐはぁぁぁ!!」
不意を突かれたTさんは、すぐに態勢を立て直そうとした。
だが、すぐに次の二撃が顎に叩き込まれる。
「がはぁっ!!」
Tさんが血を吐く。
ボーンズはTさんの後ろに回り込み、脇に手を回す。
そしてそのまま、Tさんの背中に何度も膝蹴りを食らわす。
「がぁ!げはっ!ぐほっ!!」
膝蹴りを浴びる度に、Tさんの息があがる。
そしてダメージにより意識朦朧とした所で、
ボーンズは脇から回した手を抜き、そのまま前方へと
背中を思い切り蹴り倒した。
「ぐぉあぁぁ!!」
必死に手を付いて受け身を取ろうとしたTさんだったが、
力が入らず、中途半端に付いた手がぐにゃりと曲がる。
「wgkぽkうぇpg!!!!!!」
そしてそのまま、Tさんは気絶により敗北した。
すぐにユキちゃんが駆け付け、回復呪文を唱える。
ボーンズがチームに戻ると、みぎゃ子が威勢をあげた。
「次はどいつだ!アタシと戦おうぜ!!」
髪の長い男が前に出て、自己紹介を行う。
「ヴォルテラック・ノーマンだ。
呪符で呪い殺してくれようぞ、クク・・・。」
すぐに始まった2回戦、次鋒戦だ。
「奇遇だよね、アタシも実は呪符使いだったんだよ。」
「ほぅ?しかし私はかなり高位の呪符使いだぞ?」
「いや、だから、”だった”って言ってるじゃん。」
「む?今は呪符は使ってはおらぬ、と言う事か。」
「そういう事!そんなまどろっこしい事するよりも、
殴れば手っ取り早いからさ!」
みぎゃ子右ストレートがノーマンの頬にヒットした。
「おのれ!会話の途中に攻撃する等、貴様それでも
元呪符使いか!」
「いや、元とか関係ないでしょー。
そもそもさ、その術師特有の変なマナーみたいなものとか、
プライド?みたいなのとか、本当どうでも良いんだよねー。」
みぎゃ子が話している間に、ノーマンは呪符を取り出し、
自らの眼前の空中に並べた。
「ふふ、貴様がお喋りをしている間に並べたぞ。
まずはその体、拘束させて貰おうか!」
ノーマンの呪符が、みぎゃ子に飛び掛かる。
しかし、みぎゃ子はそれをかわし、手から炎の気を放った。
「やぁ!!」
「チッ、簡単な術式も使えるのか!」
「あのさぁ~、型にハマって、呪符使いだから呪符しか使いません~とか、
フィジカルタイプなので体術だけです~とかさ、何なの、それ?」
みぎゃ子はノーマンの背後に回り込み、素早く腕を取り、後ろ側へと
引っ張った。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
「悪いけど、アタシ容赦ないからね?別にアンタの腕を折るくらい、
何とも思ってないから。大切な呪符を放つ腕、壊されたい?」
「ぐっ、生意気な・・・!!こんな形で終わってなるものか!!」
「・・・だったら、どうするの?ココからアンタ、何か出来るワケ?」
「・・・・」「・・・・」「・・・・」
ノーマンは少し考えたが、やがて諦めたように言った。
「降参だ。」
あっけなく終わったかに思われた試合だったが、
これはみぎゃ子の圧倒的なフィジカルと、適時即応の術式の判断、
こうした恵まれた戦闘スタイルにより、強敵であってもいとも簡単に
組み伏せているように見えるのだった。
多くの戦闘描写における引き延ばしのような事は無く、現実的には
戦闘は圧倒的に短時間で終わる。
しかしそれに至るまでの読み合いや葛藤は、結果的には勝敗を分ける。
みぎゃ子はそうした計算も素早く正確で、まさに天性の才能だった。
「もう良いよ、ボクが行く。」
中心にいた白髪の男が前に出た。
「ボクはロトカルラ・クオーツ。このチームのリーダーだ。
みぎゃ子、キミと戦いたいんだが、もちろん受けるよな?」
みぎゃ子はクオーツをチラッと一瞥し、ニヤッと笑い、答える。
「もちろんだよ。あんなヤツが続くんじゃあ、アタシ一人で
アンタら全員全滅させてやれるかもね?」
「あまり強い言葉で挑発しない方が良いよ。ボクは、結構強い。」
言い終わるか終わらないかで、クオーツはみぎゃ子に飛び掛かった。
首元目掛けて腕を横に伸ばし、ラリアットを喰らわせる。
「が・・・あ・・・!!!」
喉元を強く叩かれて、みぎゃ子が声にならない叫びをあげる。
続けて、クオーツが手に球を掴んだような素振りを見せると、
そこに赤と黒が混ざった火球が出来上がる。
「キミのスタイル、ボクと似ているけれど、残念ながら
ボクの方がより洗練されているよ。ノーマンとは、
相性が良かっただけだって思知らせてあげるよ。」
仰向けに倒れ込んでいるみぎゃ子の腹部を目掛けて、
火球を強くめり込ませるクオーツ。
「あ”あ”あ”あ”あ”-----------!!!!!!!!!」
目が強く見開き、耐えきれない痛みに瞳孔が開くみぎゃ子。
すかさず、Tさんが外野から野次をあげる。
「みぎゃ子、意識があるうちに降参しろ!
そいつはヤバい!一勝しただけでも十分にお前はよくやった!
今は命を優先しろ!死んだら元も子もないぞ!!」
薄れた意識の中でハッキリとその声を聞いたみぎゃ子は小さく、
「負け・・・ました。」と呟いた。
目からは自然と涙がこぼれた。
すぐにTさんがステージに上がり、みぎゃ子を抱きかかえる。
「おい、お前、今の聞こえただろう。
コイツは降参したんだ、連れ帰るからな。」
「フン、調子に乗った小娘ちゃん、呆気ない終わり方だったね。」
「コイツは、小娘じゃねーぞ。お前、本質が見えてねぇんだな。」
「何だと!?」
「別に何も言う事はねーよ。じゃあな。」
Tさんは即座にみぎゃ子をユキちゃんの元に横たわらせ、
ユキちゃんもすぐに治療を始める。
「みぎゃ子さん!!シッカリして下さい!!
必ず、すぐに治しますからね!!」
この様子を見ながら、黒みぎゃ子はイライラしていた。
「あーもう、アイツらムカつくわ~、舐めた態度取りやがって!
次、アタシが出ようかな!!」
しかし、それを白みぎゃ子が諫める。
「まぁまぁ、落ち着いてよ。次は私が出るよ。
次はあの人形使いの子みたいだから、あぁ言う可愛い子ぶった子、
・・・・私、大っ嫌いだから(真顔)」
いつもは大人しい白みぎゃ子だったが、今回の件については
怒り心頭のようで、実際の所は黒みぎゃ子よりも先にこのストレスを
発散してしまいたかったようだった。
Tさんチームが1勝2敗の状況で、ロトカ・ヴォルテラからは、
人形使いの少女が前に躍り出た。
「次はアタシよ。サーリャ・エストロゲス。
お察しの通り、人形使いよ。」
「随分と、センスの悪い人形ね。1000年以上前に生きていた魔女で、
現代のセンスがわからないとかかしら?」
いつもならあり得ないくらい、毒舌でまくしたてる白みぎゃ子。
「ハァ!?アタシ、まだ30歳なんですけど!?
アンタ天使でしょ!?2000歳とか、そんなん!?
人間離れした人外のババァに、そんなの言われたくない!!」
「アラ、30!?それで、そんな人形遊びを・・・?
あぁ、友達、いなかったのね、かわいそう。」
白みぎゃ子は目を細めて口元を手で隠し、薄く笑う。
「もう、我慢ならないわ・・行け!ロドリゲス!!」
人形が白みぎゃ子に向かって飛んでくる。
霊力が込められているようで、黒いオーラを纏っている。
対抗しようと呪文を展開するために手を前に出した白みぎゃ子だったが、
人形は白みぎゃ子の頭の上に飛び上がり、後頭部へとぶつかって来た。
「キャッ」
痛みはそれほど無かったようだったが、不意の攻撃に意表を突かれた。
続けて人形が手を前にかざし、氷の小粒を大量に作り出し、それを
白みぎゃ子めがけてぶつけて来た。
「痛い!さすがは人形使い、卑怯な手を使うわね!!」
「卑怯も何もあるもんですか。それにこれは、結構普通の戦術よ?」
「でしたら・・・。」
白みぎゃ子が杖を天にかざし、すると黒雲が寄せ集められた。
「雨雲よ、裁きを!!」
突然黒い雨がサーリャの頭上にのみ降り注ぎ、ドロドロとへばり付く。
ぬぐおうとするサーリャだったが、髪を撫でた所、数十本が抜けた。
「え、ちょ、何コレは!?酸性雨!?いやでも、あまりに強すぎない!?」
「フフ、有機物を溶かす死の雨ですわ。
早く降参しないと、そのうち肌までドロドロに溶けますわよ?」
「ちょ、無理無理無理無理!!!降参、降参するから、雨止めて!!!」
こうしてTさんチームは2勝2敗、次の試合が結果を左右する事となった。
しかし白・黒みぎゃ子からするともう勝利は確信しているようだった。
「さぁ~、戦おうかね・・・と思ったけどさ、あまりに弱そうで、
戦うに値しなさそうなんだよね、アンタ。」
そう言われて、カッとなり言い返す紫髪の少女、アリヤ。
「な、戦う前から何を言っているの!?次の試合は勝ち負けを分ける、
一番大事なものじゃない!!
勝負もせずにそんな事言ったって、アタシ全力で行かせて貰うわよ!?」
「あーもう、小物臭が凄いんだよな、アンタ。
面倒だし、呪言使うか。行くよー、『降参と言え』」
「降参・・・しました。」
何と、いとも簡単に降参の二文字を言わされてしまったアリヤ。
何がどうしたと言うのか!?
「ちょ、何で!?呪言って、聞いた事はあるけど、
そんな簡単に使えるわけ・・・!!」
「あー、そうだよ。普通はもっとややこしい条件とかがあるの。
だけど今回はあまりにアンタとアタシの実力に差があり過ぎて、
戦わずして呪言だけでアンタを負けに出来たってワケ。
格の違い、わかった?」
「ちょ、そんなの・・・納得出来ないわよ!!!」
しかし、周囲に多数配置された監視ドローンと、会場中央のモニターから
「勝者:Tチーム」と宣言された。
「あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!!」
このようにして、一回戦は幕を閉じた。
コレによりTさんチームは準決勝へと駒を進めた。
一体このトーナメントの果てに待つ『真実』とは何なのか!?




