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第二十三章~一夜限りのバンド結成~

それは突然、ユキちゃんからの声掛けだった。




「Tさん、みぎゃ子さん、白みぎゃ子ちゃんと黒みぎゃ子ちゃんも、


 力を貸して頂けませんか!?」




皆、どうしたどうした?と、いつもなら冷静なユキちゃんの


あまりに焦った様子に心配する。




「実は、学校で仲良くしている友達のアオ君が、バンドメンバーが皆


 車でスタジオに来る時に事故ってしまって、その・・・アオ君以外、


 皆お亡くなりになってしまって・・・。」




Tさんが冷静に、だが少し動揺して言った。




「それはただ事じゃあねぇな。


 つまりはアレか、その事故に、何らかの霊が関わっているかを


 調査して欲しい、と?」




「いいえ、そうでは無いんです。


 その亡くなった方達、かなり高額でチケットを販売していて、


 あお君一人ではチケットの払い戻しが出来なくて・・・。」




黒みぎゃ子が口を挟んだ。




「まさか、その金額をTさんに肩代わりして欲しいとか言うわけ!?」




ユキちゃんが答える。




「いえ、違うんです。


 バンドメンバーは皆さん、結構ヤンチャな方だったようで、


 そんな中であお君だけが高校生で、真面目で、彼、


 ベース担当なんですけど、ライブは何としても決行したいって。」




みぎゃ子が口を挟む。




「つまり、代わりのメンバーを私達に探して欲しい、と?」




「いえ、そういう話でも無いんです。


 あの、実は・・・!!」




最後に、悟ったような笑顔で、白みぎゃ子が言う。




「私達に、バンドをやって欲しい、と言う事ですよね?」




「そうです!!」




「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇっぇ!!!!!???」


Tさん、みぎゃ子、黒みぎゃ子が動揺から大声をあげた。




「いや、でもホラ、その、いきなり、急過ぎじゃん?」




そこへ、Tさんが恐る恐る、声をあげた。




「まぁ、オレ、昔ドラムやってたけどな。」




みぎゃ子が上ずった声で答える。




「そうなの!?」




続けて、白・黒みぎゃ子達が言う。




「私達は天使と悪魔だから、人間がやる事なら、


 何でも大体チョチョイのチョイ、だけどね。」




「楽器くらいなら、お任せして下さい。」




みぎゃ子はヒドく動揺した。




「えぇぇぇぇ!?


 いや、アタシもさ、ギターを少しは触った事あるんだよ。


 でもさ、さすがに残り一か月で、ライブ演目全部をって、


 覚えられなくない?」




「メインギターは私が担当しますので、みぎゃ子さんは、


 ボーカルをお願いします。Tさんはドラム、アオ君がベース。


 白みぎゃ子ちゃんはキーボードを担当して貰おうかな。


 あぁでも、そうなると黒みぎゃ子ちゃんにギターと


 サブボーカルやって貰おうかな、何だかんだで、形になりそう!」




いつもと違った、少し、いやかなり強引なユキちゃんの態度に、


みぎゃ子は、あぁこの子はよほど、そのアオ君に惚れているのだなと


何となく思ったのだった。




いざ、スタジオで音合わせをしてみると、ユキちゃんのリードギター、


アオ君のベースに、過去相当ドラムを叩いていたTさん、更には


人間界の楽器の扱いくらいお手の物の白・黒みぎゃ子と、


アッサリとバンドは形になって行った。


そこにみぎゃ子の歌が乗り、見事に演目曲は完成した。




Tさんが、ふと思い立ったように言う。




「だけどよ、良いのか?


 そのバンドの演奏や、メンバー達を楽しみに来た客達に、


 オレ達じゃあ示しが付かないんじゃ・・・。」




ユキちゃんが答える。




「あ、そこは大丈夫です。


 ファンはほとんど、アオ君のファンなんです。


 だから、他のメンバーが変わっても、あぁそうか、


 くらいで皆さん、あまり驚かれないと思います。


 実際、アオ君は以前のバンドでも一番人気で、


 彼が抜けた後、そのバンドは見向きされなくなったとか。」




みぎゃ子は、率直に思った。




「この普通にまぁ爽やかイケメンではあるけれど、特別に何か


 MCが面白いとかでも無い彼に、一体何が・・・あ。」




みぎゃ子は気付いてしまった。


彼には、スター霊として、人々の人気を搔っ攫うような運命が、


強力に憑いていたのだ。




「なるほどね。ユキちゃんも、この霊にやられていたわけか。」




そして、せっかくだからと言う事で、オリジナル曲を作る事になった。


作曲はアオ君が、作詞はみぎゃ子が行う事になった。




「作詞ってした事無いけど、まぁやるからには頑張るか。」




こうして着々と、ライブの日は近づいて行った。




ライブ当日。


当然の緊張がそれぞれにそれぞれなりのレベルであった。


しかし何よりも、スタジオでの音合わせで既にかなり完成され、


問題が無い事は周知となっていた為、むしろワクワクの方が


勝っているくらいだった。




みぎゃ子がMCで、まずは自分達が出演する事になった経緯を話す。


そして、一夜限りではあるものの、このバンドを全力で楽しんで貰い。


自分達もその期待に応えられるよう、全力を出し切る事を誓った。




白みぎゃ子の、曲により性格を変える繊細かつ計算され尽くしたピアノ。


Tさんの、正確だが強弱を付けたニクいドラム。


黒みぎゃ子の、みぎゃ子に合わせて脇役に徹するサブボーカルと、


ユキちゃんのメインリードギターをサポートする、


サブバッキングのギター。


客の多くが目的として来ているアオ君のベースは、


ギターに負けない存在感を持ちながらも決して主張し過ぎない。


おそらく、彼にスター霊が憑いたのは偶然では無いのだろう。


ユキちゃんは元々ギターは触っていたのだが、


今回のアオ君からの頼みで、メインギターという大事な役を買った。


黒みぎゃ子やみぎゃ子のサポートもありつつ、彼女の繊細で、


人の心を動かすようなギターは、メインと呼ぶに相応しかった。


そして、みぎゃ子のボーカルは、テクニックよりも、その心根から出る


本音としての言葉が人々の芯に刺さった。


歌詞はみぎゃ子なりに変えている部分も多々ある。


しかしそれが逆に、みぎゃ子らしさとの合致の中で、これまでの曲とは


全く違った色合いを持ったものとなった。


総じて、本当に一か月での即興バンドとは思えないくらいのものだった。


そして最後の一曲を終えた後、アンコールコールがあり、


そこでオリジナル曲を歌う運びとなった。




みぎゃ子が言う。




「皆さん、今日は本当にありがとうございました。


 本来のメンバー達は、ヤンチャな人だったとは聞いていますが、


 彼らなりに伝えたい何かがあって、音を届けていたのだと思います。


 そこで今回、私なりに皆さんに伝えたいメッセージをこの歌に込めて、


 これを最後の作品として皆さんに届けます。


 聞いて下さい、「あなた」。





あなた


作曲:アオ 作詞:みぎゃ子




あなたがあなたを生きられるように


小さな魔法を一つだけかけてみるね


あなたは幸せな未来を


想像するだけで良いんだよ




暖かな風が吹く丘の上で


足りないものなんて一つも無い


そんなあなたと笑う私と


祝福の太陽と小鳥も笑ってる




傷付き疲れてここに来たんだよね


現実は時々息が詰まり生き詰まる


それでも生きてる私とあなただから


ここらかもう一度やり直せるよ




立ち止まったままで泣いていても良いよ


無理に笑う事だって必要ないよ


それでもいつかきっとまた昔のように


笑えるあなたはどこにも行ってなんかないんだよ






みぎゃ子の、会場を包み込むような歌声と、演奏メンバー全員が、


全ての悩みや理不尽、疲れや傷を受けて入れて、明日からまた少し


笑顔が増えて笑って生きられる、そんな未来を創りたいと言う気持ちで


全力を出し切った。


観客もスタンディングオベーションで、拍手は幕が閉じた後も鳴りやまず


本当に素晴らしいライブとなった。




この一夜限りのライブは映像化もされず、ただそこにいた人達だけが聞いた


幻のような一夜であった。


しかし、Tさん達は知っていた。いや、視えていた。


亡くなったバンドメンバーや、他にも多くの救いを求める霊達が、


このライブに集まっていた。


それはユキちゃんの癒しの力に縋るものや、みぎゃ子の強さに憧れたり、


Tさんの生き方に同調する者、様々な事情で多くの霊達が、このライブを


物理的には圧迫しない形で、空間の密度を上げていた。




みぎゃ子達は、翌日非常に激しい筋肉痛になっていた。


だが、それが本当に心地良いと思えるほどに、最高の一夜だった。




こうした出来事の中で、5人の仲間としての絆は深まり、


世界を守り、ひいては多くの霊達が抱える現世への憧れややりきれなさ、


様々な救いの根本は現世も霊界も変わらないという事、多くの考えが


Tさんやみぎゃ子、ユキちゃん達の頭の中に巡っていた。

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