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Wonder Chronicle Other Stories  作者: Erde
【One of the bag】
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5/10

Episode -005【Disappointment】

 返事をしないローゼンハルトを背負ったベクターの前に現れたのは、「新たなスキルを覚えました」という画面であった。それを飲み込めずにいるベクターに対し、さらに文字が表示された。そこには「スキル:ディフェンデ」という文字であった。


 「一体、何だっていうんだ? こんな時に。 これもゲームの仕様の所為か、くそっ!!」


 ここワンダー・クロニクルではスキルを覚えると自動的にスキルの名前が表示され、次にスキルの説明が表示されるようになっていた。そしてベクターの気持ちとは裏腹に、スキルの説明がベクターに対して表示された。


  『スキル説明:その昔、ある一人の騎士が大切な仲間を守れなかった事を嘆き後悔した。このスキル「ディフェンデ」は、その騎士がもう二度とそんな事にならないようにと心に誓い鍛錬した事により生まれた力である。このスキルはあらゆる事から人々を守る事が出来る』


 目の前にスキルの説明が表示されたベクターであったが、それを読む気にはなれなかった。


(レベルも上がっていないのに、何なんだよっ!?)


 ローゼンハルトを横に寝かし、声を掛けるベクター。


「ヤスハラ!! 目を覚ませよ、ヤスハラっ!!」


 必死にベクターが声を掛けるが、それでもローゼンハルトは目を覚ます気配がなかった。その様子を見て、地面を叩くベクター。


「くそっ!! 何が何でも守れるだっ!? そんな事ならヤスハラの傷を治しやがれよっ!! スキル、ーーディフェンデッ!!」


 投げやるように覚えたばかりのスキルを唱えるベクター。するとベクターの左腕が輝き出し、そこには見た事もない盾が装備されていた。そして、その盾は白く綺麗な輝きを放っていた。


「盾……だと?……」


 それを見て、嘆くベクター。そして地面に両手を付き、うなだれ始めた。


「ふざけるなよ……。今更、盾なんてどうでも良いんだよ……。俺はヤスハラの傷を治したいんだよっ!! そもそも盾なんて、俺に必要ねぇだろうがよっ!!」


 〈清風の洞窟〉にベクターの怒号が響き渡る。その時、一瞬だけ盾の輝きが強くなったように見えた。


「いちいち、何だってんだ!? 俺はヤスハラの傷を治したいんだ!! 大人しくしてろっ!!」


 スキルにより現れた盾に怒るベクター、しかしそんなベクターの気持ちとは裏腹に盾の輝きがまた強くなった。


「こいつっ!! いちいち俺の言葉に反応しやがって、それに何で消えねぇんだよっ!?」


 ベクターの気持ちが伝わったのか、今度は発動された盾がベクターの言葉に反応しなかった。それを見て、少し気が収まるベクター。


「やっとか……。 それよりも早くヤスハラの傷を治さないとっ!!」


 そして、またローゼンハルトの元へと行くベクター。するとまた盾の輝きが強くなった。それを見たベクターにある思いが過った。


「もしかして、こいつは……」


 盾を自分の方へと向け、ある言葉を発するベクター。


「ヤスハラの傷を治したい」


 するとベクターの言葉を聞いた盾が、また輝きを強くした。


「やっぱりか!! こいつは俺の想いに反応していたのか!! という事は、こいつは本当にどんな事からも守れるっていうのか!?」


 そして盾をローゼンハルトの傷の方へと向け、傷口を盾に触れさした。するとローゼンハルトの傷口が見る見ると塞がっていき、ローゼンハルトの傷が治っていった。


「ヤスハラの回復魔法でも治らなかった傷が!!」


 そしてベクターの左手にあった盾が消えていった、すると途端にベクターの体に疲労感が伝わってきた。


「どうしたんだ!? まるで剣聖の頂を使った時みたいだ」


 自分の体に起きた異常を確認する為にステータス画面を開くと、男との戦いの後に回復させたMPが残り僅かになっていた。


(そうか、さっきのスキルを使った所為か。相当なMP消費量だったんだな。それに再発動するのに6時間も掛かるのか。それでもーー)


 ローゼンハルトに目をやるベクター。


(ヤスハラが助かって、良かった。俺の傷は大した事は無いから、後でまた治すとするか)


「おい、ヤスハラ。起きろよ」


 そしてローゼンハルトの体を揺する。しかしそれでもローゼンハルトは目を覚まさなかった、それにローゼンハルトの体は酷く冷たくなっていた。


「どうしてだよっ!? おい、ヤスハラっ……」


 ローゼンハルトの傷は治ってはいたが、もう既にローゼンハルトは死んでいたのであった。そして段々とローゼンハルトの体が薄くなり、宙に浮き光に包まれていった。それをどうする事も出来ずに、ただ呆然とするベクター。


「ヤスハラ……。 行くなっ!! ヤスハラぁああっ!!」




ーー〈清風の洞窟〉から〈バックウォーター〉に戻ってきたベクター、その表情は酷い有様であった。そして足取りの思いベクターの周りでは、いつもの様に人々が賑やかに街の中を行き交っていた。それでもベクターには、それがいつも通りの〈バックウォーター〉には見えなかった。


(本当にここがいつも居るバックウォーターの街なのか……?)


 そんなベクターであったが、ある場所へと向かっていた。俯いたまま、そこへと向かうベクター。出来る事なら、そこに行きたくないベクターだったが、そこへと着いてしまった。ベクターの目の前に大きな建物が現れる。そしてその建物の外には幾つ物の荷物が置かれており、その荷物を何人かの人々が運んでいた。


「お、ベクター。遅かったな、そんな大変なクエストやったんか?」


 荷物を運んでいた一人がベクターに気付き、声を掛けてきた。


「あれ? ヤスハラはどないした? 先に鞄でも作りに行ったんか?」

「……いや」

「どないした? 何や元気ないのう、お前」

「ウィルヘルム……、そうじゃないんだ……」

「はい? お前声小さぁて、よう聞こえへんぞ。何て?」


 その言葉に俯き、声を震わせるベクター。


「ヤスハラが……、死んだんだ……」


 それを聞いてキョトンとするウィルヘルム。


「それ、おもんないぞ」


 そこにロビンが現れてきた。


「おい、ウィルヘルム。何サボっとんねん!? 忙しんやさか……、あれ? ベクター、戻って来とったんか?」

「おい、ロビン。ベクターがおもんないギャグ使いよんねん、どう思う?」

「ベクターがギャグっ!? ありえへんやろ?」


 二人の会話を俯いたままで聞いていたベクターが、二人に顔を向けて声を掛けた。


「ヤスハラが死んだんだよっ!!」


 ベクターの目からは大粒の涙が流れていた。






スキル説明


【ディフェンデ】

その昔、ある一人の騎士が大切な仲間を守れなかった事を嘆き後悔した。このスキルは、その騎士がもう二度とそんな事にならないように心に誓い、鍛錬した事により生まれた力である。これはあらゆる事から人々を守る事が出来る。

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