↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Wonder Chronicle Other Stories  作者: Erde
【One of the bag】
PR
2/10

Episode -002【The world of crack】

 ベクターが辿り着いた街〈バックウォーター〉は、現実世界におけるヴェネツィアの様に運河が縦横に走る水の都であった。その性質上、この街は交易が盛んな都市であり様々な人間が往き来をしていた。また運河の運営、発展の為に街は学術に力を入れており沢山の学院が設立されていた。

 そして今回の話は、その街を拠点にベクターが様々なクエストをこなして数ヶ月が過ぎた頃の事である。



「やあ、ベクター」


 船着き場にある石階段に腰を掛け、行き交う舟を眺めるベクターに男が声を掛けてきた。


「なんだ、ヤスハラか」


 声を掛けてきた男にベクターが言葉を返した。


「ヤスハラ言うなし!! ローゼンハルトだし、俺!!」

「どっちでも良いだろ、そんな事。元々お前が間違って、俺に本名名乗ったのがいけないんだよ」

「どっちでも良くないし!! 間違ったのは本当だけど、そこはスルーしといてよ!!」

「はいはい、それでなんだよ? ヤスハルト?」

「くっつけてもダメだし!! ……まぁ、良いや。それより前に話した件だけど、考えてくれた?」

「ああ、お前の創ったギルドに入ってくれって件か……」

「そうそう、それ。で、どう? 入ってくれる?」

「それなぁ……、俺はパスさせてもらうわ」


 ベクターの言葉を聞いて落ち込むローゼンハルト。


「なんでぇ? 一緒にクエストした方が楽しいよ」

「別にそれはギルドに入らなくても出来るだろ」

「そうだけどさぁ……」

「悪いな。なんか俺、組織とかそういうの苦手でよ」

「そんな事は分かってるよ。分かった上で頼んでるんじゃん」

「良いだろ、別に俺がいなくても。聞いた話じゃ、ウィルヘルムとロビンはお前のギルドに入ったんだろ?」

「そうだけど。キャラもろ被りじゃん、あの二人!!」

「そんな事言ったって、お前が声掛けたんだろ。それに他の連中も、お前のギルドに入ったって話だし」

「そうだけどさぁ……」


 そして再度、落ち込むローゼンハルト。

 ローゼンハルトとベクターはお互いに〈バックウォーター〉に来て、初めて出会ったテスト・ユーザー同士であった。そんな二人は、当初この世界に来た事に関して色々と調べていたが。何一つ手掛かりとなるような物が見付からず、今はこのゲーム〈ワンダー・クロニクル〉を楽しむ事にしていた。



「まあ、そう落ち込むなって。また一緒にクエストしてやるから」

「分かったよ」

「それよか。ここに来て、だいぶ経つけど。全っ然、運営から連絡ねぇよな」

「その事だけど。最近、それについて色々と噂があるの知ってる?」

「噂?」

「この事に運営がどうこうしようと対策したけど、それが駄目で俺達ユーザーが放置されてるって話や。逆にこれも運営の思惑通りで、もう少ししたら正式にサービス開始されるって話とか。後はこのゲームにおける荷物に関して、運営が改善を図ってるって話とか」

「そんな話が出てるのか。どうせ、どれも根拠のない話なんだろ?」

「そうだね。でも……」


 思わせ振るような言い方をして、自分の鞄をベクターに見せるローゼンハルト。


「でもって、何だよ? その鞄と何か関係あるのか?」

「お荷物問題に関しての噂は本当だったみたいなんだよね。」

「それって……」


 驚くベクターに、ローゼンハルトが手柄を取ったように答えた。


「そうなんだよ。今まで大した量しか入れられなかった鞄が改善されるって話は、本当だったんだよ!!」

「本当なのか!? どうせデマか何かなんだろ? だって、おかしいだろ? それなら運営の連中は、俺達の状況を知ってるって事になるだろうが?」

「詳しくは知らないんだけど。ほら」


 そう言って、ベクターにクエストが書かれた紙を見せるローゼンハルト。そして、その紙に書かれたクエスト名を目にするベクター。


「古の鞄『ディメンジョン・バッグ』?」

「そ。かなりの量が入れれる鞄を作るクエストなんだよ」

「本当なのかよ」

「それで今から一緒に、このクエストしに行こうよ。ってか。もう、ベクターの分もクエスト申請してあるから」

「してんのかよっ!! 俺に決定権無しかよ!!」

「って事だから。いざ!! ディメンジョン・バッグ!!」

「はいはい」



 〈バックウォーター〉を出発するベクターとローゼンハルトは、以前道具屋で購入した〈馬呼びの笛〉で馬を呼び。一路南西の方角に向かって、馬を走らせていた。


「馬主になったのに、その費用が要らないってのは良いよね」


 馬を走らせながら、ベクターに話しかけるローゼンハルト。


「馬主ってな、おい……」

「だって一応、馬主でしょ? これ?」

「だけどよ……」


(ヤスハラって、変なところあるけど。こんなんでギルド・マスターなんか務まるのかぁ?)



「それで、そのクエストは何処まで行けば良いんだ?」


 ベクターの言葉に、クエストが書かれた紙を鞄から取り出して見るローゼンハルト。


「清風の洞窟だって」

「清風の洞窟? あんな所に、そんな鞄を作る素材なんかあるのか?」


 〈清風の洞窟〉とは、ベクター達がこの世界に来た当初にこなしたクエストで行った所であり。ベクターやローゼンハルト、それ以外のテスト・ユーザーの間ではゲーム初期に行く洞窟として認識されていた場所であった。


「その辺は改善されて、洞窟の内部が少し変わってるとかなんじゃないの?」

「世界が簡単に変わるって。考えたら、恐ろしいな……」

「そこはゲームだしね、仕方ないんじゃないの」

「相変わらず能天気だな、お前は。この世界で死んだらどうなるか、まだ分かっちゃいないんだぞ」

「大丈夫だって。俺達だいぶレベルも上がったんだし」


 そう言って、思いっ切り馬を走らせ。ベクターのだいぶ先を進むローゼンハルト。


「おい、待てって!!」


 先を行くローゼンハルトを追いかけるベクター。

 そんな二人は、この先に起こる事態を全く予想出来ていなかった。

 それは二人が、この世界に来て初めて体験する事であった。






アイテム説明


【馬呼びの笛】

道具屋で購入する事が出来るアイテム。何時でも、自分専用の馬が呼び出せる笛である。呼び出せる馬は購入の際色々と選べ、それによって笛の模様や色なども変わってくる。ダンジョン内や建物内では馬を呼び出す事が出来ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。