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違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第7章 イェリコ~エルサレム編
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第56話 ねえ、聖地は要塞ってどうおもう?

 門のところで皆と合流する。青山が子供たちに変顔を見せて笑っている。緑川はおじさんを手伝い荷物をラマに括りつけている。気を失っていた守備隊の彼は運ばれていったのかもう地面に寝転がってはいなかった。


「すみません、遅くなりました」と二人に声を掛けると緑川が「その様子だと牢獄行きは免れたみたいですね」と安堵した顔で赤坂の無事を喜んでいる。「ええ、彼の金で解決しました。自分で自分の尻が拭けるんだから立派ですよ」と白井は赤坂を励ました。


「緑川さん、あの、助けてくれてありがとうございます」


「いえ。私たちは君のお金が目当てで一緒にいるわけじゃないですからね。君と一緒に帰るために一緒にいるんですから。鼻血止まったみたいでよかったです」


 赤坂は緑川に抱き着きまるで子供のようにうわんうわん泣いていた。

 すると青山と一緒に二人に近付いてきた子供たちが「困るー?」「困ったー?」と言っていて、4人は全員で泣き始めてしまった。―――いや、なんだこれ…泣ける…


 貯め込んだものを吐き出してすっきりした気持ちでラバに乗り、護衛たちの先導でイェリコを後にする。街道に出るとターバンを巻いたロバに乗る旅人がちらほらいる。

 急な上り坂を登っていくと、青いターバンを巻いて杖を持ち修道服を着た人たちがノロノロと白い岩の坂に向かって歩いている。黄色い帽子を被って濃紺の外套を羽織った家族連れも同じ方向へ歩いている。とても辛そうだ。

 「あの人たち商人じゃなさそうですけどエルサレムへ向かっているんですか?」と白井が尋ね「ええ。あそこはキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の聖地なので、東や北からの巡礼者はこの道を通って坂を登るんです」と緑川の解説。


 正面の白い岩が光を反射してとてつもなく眩しい。気温もぐんぐん上昇している。予定より出発が遅れたため「本来なら休憩時刻だがもう少し行ってから休む」と護衛に言われ、灼熱の太陽の元をラバたちはがんばって登っていく。


 中腹のあたりでロングシエスタに入る指示があり、迫り出した岩の窪みに隠れるように休憩場所を確保する。砂漠の護衛たちは天幕を張ったり昼飯を作ったりと甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたがオスマンの護衛は道案内と警護だけなので、昼飯などは自分たちで用意することになる。

 赤坂の一件でそれどころじゃなかった白井は緑川に「あの、お昼どうしましょう」と尋ねると「二人を待ってる間に青山さんが」と言ったところで青山が「はいこれ」と満面の笑みで布の包みを渡してくる。―――こ、この匂い…

 包みを開くと中からゲバブのあれが出てくる。感動の再会。


「これ、どうやって手に入れたんですか?」


「バザールから煙が上っていたから見に行ったらもう屋台がやっていたんです」


 眼下の遠くに見えるイェリコの街を眺めながら4人で並んでケバブを食べる。

 そして昼寝。昨夜からいろいろありすぎてすぐに眠る。


 4人は護衛に起こされ再び登攀開始。


「じゃあ、がんばってね!|ウェンカー《w a n k e r》!」

 ―――ちょっと!どうして乗り物に酷い名前をつけるんだ?本当は嫌いなのか?


 ごつごつとした白い岩の急坂をラバは文句も言わずに登る。太陽も徐々に正面に回り込んできて眩しく感じる。見上げれば坂の上の方には幹のねじ曲がった木がいっぱい生えていて、白い葉っぱが揺れている。

 西の空がだんだんと赤みを増し始める頃、さっきの木が生えているところに差し掛かる。生えていたのはオリーブだった。足元は赤土に代わっていたがそれでも急斜面には変わりなく、空へと伸びるため根っこに近いあたりで捻じれて曲がっている。

 ―――なんだかこの生え方、親近感があるな。


 ようやく坂を制覇すると目の前には渓谷があり対岸までの幅はないが深さが異常。

 まるで深い掘りのようになっている。そこに石積みの三段アーチの橋が架かり、橋の真ん中あたりに見張りの塔、橋の向こうは門になっている。城壁は高く3階?いや4階ぐらいの高さまで聳えている。西日は完全にその高い城壁に遮られ黒い威容を放つ、それが聖地エルサレムだった。


 橋を渡り城門まで辿り着く。「あ、猫ちゃんだ。かわいいー」と青山が言う。緑川が「獅子なんですけどね」と笑いながら訂正する。確かに猫がボール遊びをしているようにも見える。そんな話をしているうちに護衛が門番に話を通してくれる。


 街の中に入ると、石畳の通りの両脇に石造りの建物が並び、急に空が狭くなる。

 あちこちに通りが繋がっているようで、迷路のように感じる。巡礼者なのか街の人なのか、とにかく人が多くてはぐれたら迷子確定。護衛の先導で宿に向かっているようだが似たような連中も多く、一行の前にいるのがイェリコの護衛なのかわからなくなる。


 護衛の後ろにいた緑川が「まずい」と漏らし、召喚者たちは護衛とはぐれたことを知る。緑川は「すみません、注意していたのですが」と謝ったが白井は「こんなの赤い縞のシャツの男を探すやつで全員赤い縞みたいなものですよ」と慰めた。


 エルサレムの路地で途方に暮れる召喚者とラバのおじさん。

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