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違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第6章 ヨルダン~死海編
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第51話 ねえ、水着が下着ってどうおもう?

 湖面を眺めながら少し浮かない顔をしている青山に白井が声を掛ける。

 

「脱いでもいいって言ってくれましたよ!」


 許可を報告するため嬉しそうに駆けていく白井の後ろ姿を眺めて、緑川は某副生徒会長の真似をして「あらあらおかわいいエロガッパだこと」と合流した赤坂少年に告げると彼は「フッ、水着回の開演ですね」と呟きながらいそいそと服を脱ぎ始める。


 青山の傍らで「よかったですね泳げて」と笑顔を向ける白井に珍しく彼女は「あ、あの、い、い、一応女の子なので、向こうを向いていてもらえますか…」と真っ赤な顔で言う。この旅で初めて見せた青山の恥じらいに白井はトゥンクどころかジジジと脳を焼き焦がしてしまう。「あっ、はい」と少年合唱団のような澄んだファルセットで返事をして、そそくさと男性陣の元へ。


「緑川さんの配慮のおかげで仲間外れにならずに済んで本当に助かりました」


「いえいえ。彼女のためでもありますが、護衛たちとの信頼関係のためですから。そしてあなたのためでも。浜辺で水かけ合ってイチャイチャしていいんですよ?」


 緑川がそう言ってからかうと「そ、そんな…」と白井は耳まで真っ赤になる。

 白井の様子を見た赤坂は「フフフ、チョロいなあ白井(呼び捨て)」と恋愛の先輩ぶって言った。―――チューしたからって先輩ぶるなよガキが!あと呼び捨てな!

 野郎どもがすっかりパンイチになり湖に向かって歩き始めると、遅れて青山も江戸ビキニとでも形容するようなマヒノル製の綿のボクサーパンツにさらしという出で立ちで後ろから追いかけてきた。


 このマヒノル製の綿のボクサーパンツはユニセックス仕様で、10枚パックが格安で売られていたので全員4,5パック買ってここまで大事に使ってきている。なにしろこのボクサーパンツ以外の下着はふんどしとか布一枚しか売っていなかったので自動的にこれをチョイスすることになる。異世界親切設計なのである。


 そんなわけで、野郎どもは青山の肢体に目を奪われる。首から上は過酷な旅で日焼けしていたが、服の下の身体は真っ白なのである。顔とのコントラストで余計に白く見え、なにか神々しさすら覚えるほどに透き通った肌に見えた。


 でもこの子はつい先日ラクダのゲロまみれになっていた。それを知っていて綺麗だなと思える野郎どもの心根は、バイアスまみれの現代人にとって非常にニュートラルで差別的ではない、人として褒められる資質である。小便の入ったコップを綺麗に洗って水を入れたものを差し出されて飲めるかという問い、この野郎どもは間違いなく口にするだろう。特殊性癖の話ではなく。飲めるわけがないと即答する輩が、自身のバイアスによっていじめの加害者になるのである。


 大気が厚く天然のUVカットが作用している死海に向かい、弾けるボディで野郎どもを追い抜く青山。揺れる大殿筋に誘われるように後を追う野郎ども。

 ばしゃばしゃと音を立てて重い水の中を歩いて進み、胸のあたりまで浸かったところで、そろりと仰向けになり水に浮いてみる。


「うおおおー!」「なんだこれー!」「浮いてるー!」「すげえー!」


 まじで浮いた。浮いたというより逆向きの水圧がかかって下から押されている感覚。足首は沈めようとしない限り浮いてしまう。首の付け根まで下から支えられているので耳も水の中に入らない。おまけに水が重いというか粘り気があるのでグラグラしない。


「見聞きするのと経験するのは大違いですねえ。これはすごい!アハハ」と緑川。

「僕なんか軽いから、ぜんぜん水に浸かれないですよ!すっげー!」と赤坂。

「命懸けで崖を降りた甲斐がありますね!不思議すぎるこの感じ」と白井。

「回り道だとしても連れてきてくれてありがとう、緑川さん」と青山。


 白井と赤坂は「え?」と思ったが「まあいいや」と気にするのをやめた。


 思い思いにどこまで変な態勢を維持できるかしばらく水に浮いたり無理に沈んでみたりして、抵抗が強くて泳げないため少し飽きてきた頃、緑川から提案がある。


「みなさん、泥パックしませんか。毛穴の汚れだけじゃなく血行促進のマッサージ効果もあるはずです。僕はそろそろやりますけど、どうです?」


 一同やるやるー!と言って岸に戻り、緑川の指示で縁に溜まる塩の塊を剥がす。

 すると濃いグレー色で硫黄の臭いのする泥が現れる。触ると少し温かい。さすがに一か所だけでは人数分に足らないのでそれぞれ分かれて塩の塊を剥がすことに。

 緑川から「ねばねばしているのはアスファルトなので塗らないように」と注意説明があり、それぞれ散ってさらっとした泥を探す。

 それぞれが見つけて泥を身体に塗り始めた頃、正面だけ顔から爪先まで濃いグレーに染まった緑川が現れ白井は心臓が止まりそうになる。「白井さんお願いします」と背中を向ける彼の背中側に白井が泥を塗りたくってミスター濃いグレイの完成。


 「じゃあ次は僕の…」と白井が言いかけたとき「白井さんお願いします」と正面が濃いグレーになった青山が現れる。「あいあいあい、は、はいぃ」と白井は挙動不審になりながらも青山の背中側を緑川の2兆倍ぐらい丁寧に泥を塗りつけた。

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