↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第6章 ヨルダン~死海編
PR
53/70

第49話 ねえ、地形の改変ってどうおもう?

 早朝、4人が宿の外に出るとフウェイタート部族の護衛たちは既に待っていた。

 挨拶をしてラクダに乗せてもらう。特に違和感はなし、手抜き感もなし。


「きょうもアップダウンが相当過酷になると思いますが、がんばりましょう」


 緑川がそう声を掛け、三人は「おー」とか言って気合を入れる。

 進路を北に高原の道を進む。足場は岩石と砂で日の出前のこの時間帯は足元からの放熱はない。むしろ寒いぐらい。やがて右手に太陽が昇り始め遥か地平線を朱に染める。

 徐々に気温が上がってきていい感じになってくる頃に、緑川がやたら周囲を見回している。―――あの顔見たことがある。チベットの登りのときに。

 白井の予想は大当たりで「あの、ここに渓谷があるはずなのですが、川がすぐそこを流れていて。ちょっと眩暈が…」と緑川は困惑している。

 白井は緑川の話を護衛に伝えると、驚くべき話が飛び出てくる。


「いま向かっているケラクって土地の周りに深い谷になっている川があって、昔の住民は水汲みも命懸けだったらしいんです。あるとき街の皆が総出でアッラーに罰せられるのを覚悟で大地の精霊に祈りを捧げたところ、川底が高地まで盛り上がったそうです」

 ―――大地の精霊!まじぱねえ!地形改変とかチートすぎる!


 聞いた話を緑川にすると大して驚かなかった。なにかこう呆れているような感じに一言「でしょうね」とだけ。

 青山は「すごーい。じゃあ砂漠も普通の土地にしてあげればいいのに」と言い、赤坂は自然の精霊のことを知らなかったようなので、6つあるそうだとチベットで聞いた話と見てきたものの話をした。「無っていうのが、怖いですね。闇じゃなくて無なのが」とやはり感心はそこだった。


 陽も高くなってきた頃にラクダに乗ったまま浅瀬となった川を渡渉し、夾竹桃《キョウチクトウ》が生い茂る平地でロングシエスタ。砂漠でなくとも太陽は命を奪いに来ているので、影響が小さくなるまで日陰を作って休むことに。

 岩陰がない場所なのでラクダの鞍と支柱で背の低い天幕を作り、寝て過ごす。

 昼飯抜きとかの意地悪をされるかと思ったが、水でふやかしたパンが支給される。三人は中国のレンガパンを思い出す。赤坂に聞けば食べたことがないそうだ。


「そういえば、西安だったかな。宴会のときに芸妓の女性に誘われてなかった?」


「えっ、どうしてそれ知ってるんですか…?」


「たまたま本人に会って聞いたんだよ。大旦那をお誘いしたら逃げちゃったって」


「そりゃ逃げますよ。絶対に性病とかうつされるだろうし。おばさんだったし」


「えー!ジアンちゃんがいたから逃げたんじゃないの?性病が怖かったからなの?」


「それは… 確かにジアンが好きでしたよ。僕の彼女だと思ってたし。でもあの頃から急に子供扱いするようになって。だったら大人になってやるって...」


「あらあら。浮気未遂だったのね。でも苦い思い出にならなくてよかったじゃない」


「ちなみに緑川さんも誘われていたけど、断っていたよ。理由は言えないけど」


「えっ、そうなんですか?結局誰でもいいんじゃないかあの女め…」


「はは、それが仕事ですからね。あ、ちなみに私、フル勃起可能なのでご心配なく」


「イヤーッ!聞きたくなかった!いちおうわたし女性なので配慮を求めます!」


 西安の話題を懐かしい気持ちで、まるで数年前のように語る白井たちであったが、実のところ一ケ月ぐらい前の話だった。


 ロングシエスタの終わりには冷たい川の水で顔や首を洗いさっぱりして再出発。

 ―――大地の精霊に敬礼!て感じだなあ。

 一行は緩やかな起伏に改変されたヨルダン高原をラクダの背に乗りのんびり往くだけ。護衛たちが赤坂の真珠を狙っているような不審な動きはない。緑川から怪異の伝承についてのアドバイスもなく、白井は不安がないことが不安になっていく。


 やがて路面がベージュ色の石で舗装された古い街道のようになり、ちょうど陽が西の高原の稜線に沈む頃、城塞都市ケラクに到着する。―――ケラクの民に感謝だ。


 街に入ってすぐ白井は護衛に「あの、追加の費用とかは…?」と尋ねると「充分すぎるほど頂いています。これ以上望めば神に罰せられるか悪霊に憑りつかれますよ」と彼らは笑った。過酷な道を往くものばかりと思っていたため、足元を見られると警戒しすぎていた白井は正直にそれを白状した。


「主君。正直なことはいいことですが、あまりおすすめしません。昨夜のあなたの態度こそが我々が信頼に足る人物だと思えた姿です。美しい心はそのままに、強いあなたでいてください。そんな貴方たちを守護できたことを私たちは誇りに思います」

 ―――こ、こいつ泣かしにきてるじゃねえか!泣くもんか!絶対に泣くもんか!


 宿の手配を護衛にしてもらい、翌日の護衛の引継ぎをする。

 高原の支配者で最強部族だというバニ・フサル部族の方たちとのことだったが、ぜんぜん威張ってなくて気のいいおじさんたちだった。

 いつもの激熱コーヒーを飲みながら行程の確認をして、あとは塩を腹に入れたり顔が白くなったりして、真珠を渡して契約完了。

 中庭の隅にある水場で布を湿らせて身体を拭いて早起きのために早寝する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。