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違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第6章 ヨルダン~死海編
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第43話 ねえ、連携が不全ってどうおもう?

 間抜けすぎる白井の暴挙に珍しく緑川が激高している。


「グールの命乞いは罠なんだよ!どうすんだよこれ!おい白井聞いてんのか!おまえのせいで全滅するかもしれねえんだぞ!なにが武士の情けだ、こんバカちんがっ!」


 だが白井に緑川の声は届かない。彼はいま馬鹿力のグールと至近距離で真っ向から対峙しているから。全回復したグールはめちゃめちゃ余裕がありそうだった。

 そこへ、我が主のピンチに誇り高き護衛たちが駆けつけ、白井の前で盾になる。


 残機が3になったことで少し安心した白井は「おい白井!その刀は鉄製か訊け!」という緑川の呼びかけを耳にすることができた。護衛たちに背後からそれを尋ねると彼らはグールから目を離さずこくりと頷いた。

「鉄製らしいです」と白井が言うと「おまえの腰刀も鉄製だからグールは嫌がる。二人が左右から斬りかかった隙に真ん中から斬れ!外すんじゃねえぞ!」と緑川からの作戦指示が飛ぶ。両脇から斬りかかってくれと白井が護衛たちに言うと「我が主は誇りにかけて命に代えても守る!」と彼らは承知してくれた。


 じりじりとタイミングを計るグールと護衛2名。一瞬の隙など白井に推し量れるわけもなくじれた挙句に号令をかける。


「バモス!」


 護衛たちは白井が何を言ったのかわからなかったが左右に飛んでグールに斬りかかる。グールは超腕力でもって左右から振り下ろされる刀の束の辺りに手を伸ばしそれを食い止める。だが正面がガラ空きだ。いくら素人の白井でも斬り込める。

 グールの真正面に飛び出し、腰刀を振りかぶって袈裟斬りに振り下ろそうとした瞬間、白井の頬を後方から飛んできたナニカが掠めた。そしてそれはグールの左目に刺さった。

 後方待機から邪眼を開眼した赤坂の放った閃光の一撃だった。数センチずれていたら白井は死んでいた絶望の一撃。そして別の意味でも絶望の一撃。

 赤坂の矢がグールの脳まで達する致命傷を与えた直後、白井の袈裟斬りが炸裂。

 実際には発光していないが、眩い光に包まれるようにグールは一瞬で復活する。

 護衛たちを吹き飛ばし、左目に刺さった矢を引き抜き、ころんと地面に捨てた。


「く、クソガキがあぁー―!てめえなにやってんだ!余計なことすんじゃねえぇ!」


 緑川は絶叫した。白井は意味がわからなかった。赤坂は大満足だった。

 二度目の大復活をしたグールはニタニタと余裕の笑みを浮かべた。

 だがしかしその余裕も束の間、戦女神がご降臨なされる。グールの真後ろに回り込んでいた青山の革鞭がヒュッという音と共にグールの首にぐるぐるっと巻き付く。


「いまです!白井さん!やっちゃって!そっちのマセガキはじっとしてろ!」


 青山の声に反応した白井が全力で飛び上がってグールの脳天に刃を叩きこむ。

 さすがに効いたようでグールはどさりと倒れ「トドメヲ…」と言っている。

 白井は蔑む目を向け、今度はその言葉を無視した。首に絡まった青山の革鞭を解くとき、グールに弱弱しく掴まれたが「触んな!」と弾き飛ばした。


 護衛たちの無事を確認し、緑川に槍を戻し、赤坂の脳天をグーで殴ってから、白井は吹き飛ばされたラクダの元へ駆け寄る。ラクダは以外と平気そうに口をモゴモゴしながら座っていて、白井が跨るとすっくと立ちあがった。

 グールは頭が割れたまま「オネガイダ… トドメヲ…」と言っていたが「勝手に朽ちて死ね!この腐れ外道が!」と怒りが収まらない緑川が顔に唾を吐いてから足で砂を掛けた。

 ―――あの人を怒らせちゃだめだ。絶対にだめだ…


 そこから先は皆黙ってラクダに揺られる。たまに三人でちらちらと緑川の方を気にするが彼の興奮状態が収まっているのかどうか誰にもわからない。

 辺りが薄暗くなる頃、窪地にあるこの日の目的地、ハファル・アル・バーティンに到着する。

 街は活気があり、暗くなっても人が行き交っている。その様子に白井は少し安堵しながら護衛たちに「君たちはここまでの契約だけど、引継ぎはお願いできるのかな?」と尋ねると「無論です。信頼できるものに紹介しますよ。貴方たちの武勇伝と共に」と満面の笑みで引継ぎの手続きを了承してくれた。


 宿は石造りのキャラバンサライだったが扉はなく、声なんかは丸聞こえだった。

 中庭で夕食を摂りながら引継ぎをするというので皆でそこに集まると、明日からの護衛たちがやってきた。―――正直、きょうの護衛と見分けがつかないな…


 きょうの護衛が明日の護衛に向かって「この旅人を我々の保護下から貴殿の保護下へ引き渡す」と宣言し引継ぎはあっけなく終わる。

 緑川に耳打ちされて「あなたは私の顔を白くしてくれた」ときょうの護衛に言うと「あなたの旅が明るいものでありますように」と祈ってくれた。後で聞いたら『顔を白く』というのは『名誉を守ってくれた』という意味らしい。


 そして明日の護衛たちと例の熱々コーヒーの儀式がある。回復しきっていない舌に熱々コーヒーが沁みて涙目になる。ただ、引継ぎなので1杯で勘弁してもらえた。

 儀式が済むと夕食となり、山盛りの米の上に焼いた羊肉を乗っけた大皿が一つ運ばれて来た。それを皆で手で食べることで同じ釜の飯を食う的な意味合いとなって、明日の護衛たちとの契約が完了な感じになる。

 食事が済んだらどろどろのまずいお茶を飲んで、赤坂くんが真珠を明日の護衛に渡したら解散して寝床に向かう。

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