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違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第4章 チベット~ネパール・北インド編
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第30話 ねえ、共有を強要ってどうおもう?

 「街まで一緒に行きませんか」という白井の提案を「決心が揺らぐから」と言ってジアンは断った。彼女とチョウ・ハン兄弟は赤坂と最後のハグをして、ビジャイガルフ要塞の丘を一足先に降りていった。


 彼女たちの姿が見えなくなるまで見送った赤坂が振り向いて「お礼なんか言いませんからね!」と白井たちに食ってかかると「君のためではないから恨んでいいよ。でも結果的に君のためになるといいと思ってる」と緑川は返した。

 まだあどけなさの残る赤坂に対して大人たちは容赦ない世界の理をぶつける。まじで優しくない。けれど三人はそれが仲間に対する誠実さだと思っていた。この期に及んで顔色を疑っている場合ではない。この先も死地を乗り越え一緒に生還するためにも。おまえのものはみんなのもの、みんなのものはおれのもの、なのである。


「で、幾ら持ってるの?」と緑川。

「僕のお金は僕のものです!一緒にいるからって混同しないでください」と赤坂。

「じゃあ、君は誰かが野宿したりご飯食べられなくても平気なの?」と白井。

「別に、赤坂くんの財産をちょうだいなんて言わないよ?知りたいだけ」と青山。


 赤坂はジアンたちと別れたことを心底後悔しているようだった。


 バヤーナの高級宿に泊まれるのではという下心を抱いていた三人が赤坂が定宿にしていたサライに行ってみると、昨晩泊まった場所と大差ないクラスの宿だった。

 赤坂が言うには、大金を払ってもお風呂があるわけじゃないから意味がない、とのことで「意外としっかりしてんだね」と白井は赤坂を見直した。


 夕食後、次の目的地を選定する際に緑川から「陸路でパキスタンやイランの山岳地帯を抜けるのは現実的じゃない」と説明があり、ラハリ・バンダル(カラチ)から船を乗り継いでペルシャ湾を北上してグライン(クウェート)から再上陸するプランが提示される。

 チベットで山岳地帯の大変さを痛感していた白井、青山はそれに同意した。

 赤坂は「どうせ船賃出せって言うんでしょ」と先回りしてみたが「その前に砂漠を横断する時に護衛を雇わないと全滅もありうる」と緑川に脅され絶句した。


 翌朝、白井が赤坂とタンデムするよう緑川にお願いすると「積載超過だ」と言う。

 そんなわけで出発前に赤坂のポニーを調達。

 「名前、付けてあげないの?」と青山が赤坂に尋ねると「明日にはお別れですから」と緑川が少し寂しそうに口を挟む。「え?早く言ってくださいよ!もうドンキーとお別れなんだ…」と青山はショックを受けていた。

 赤坂は二人のやり取りが理解できなかった。たかがポニーじゃないかと。そして彼は自分のポニーの名前など『スレイプニル』一択だとつぶやいていた。

 かくして一行はバヤーナの街を出発し、インディゴ・ロードと呼ばれる街道をラハリ・バンダルへ向かう。到着は3日後の予定。


 赤坂が馬に乗り慣れないので常歩程度の速度で進んでいたが、日差しが強くなってポニーがバテ気味になるのを心配して緑川は少し速度を上げる。

 隊列のポニーたちは勝手に追走し始め「わっわっ」と赤坂の声がリズムを刻む。


 昼を回って暑さが酷くなってきた頃、昼休憩のためチャトスという街に入る。

 人もバテ気味なので簡単な昼食を摂り、ポニーにも水を飲ませ木陰で休ませる。

 しっかり休んだら出発。「ぐずぐずしていると日が暮れる」と緑川教官のスパルタ乗馬教室が開講。新人の赤坂くんはヒイヒイ悲鳴を上げてポニーの背で跳ねている。

 日が暮れる頃、この日の目的地であるアジメールへ到着。

 関所があったが白井がなんとかしたというか、いつも通りのやつ。


 宿を確保したら護衛の契約に向かう。ダラールという仲介人を通すそうで、宿の近くに事務所というかギルドのような建物がありそこに入る。

 山賊では?という風体の深い皺の男が仲介人らしく、緑川の言うことを白井がその男に告げる。交渉はスムーズで、ラクダに乗り換える話や護衛の食費など明朗会計に近い感じで話が進み、費用の半分はいま前払いで、ラハリ・バンダル到着時に残りの半分を払うことに。

 皺の男は「最強の戦士をつけるから安心しな」と言って笑っている。


 「君の商売を手伝うってことで、ここは立て替えておいてくれないかな」と緑川。

 「同行した時点でわかっていました。僕は財布じゃないんですからね!」と赤坂。

 むくれる彼に緑川が何か耳打ちをすると、白井の方をちらっと見て「そういうことなら」と赤坂はなにやら納得していた様子だった。―――え?なに?怖いんだけど…


 明日の支度も整ったので4人で夕食を食べに行く。甘いサフランライスに豆のスープをかけて食べるカレーっぽいものを食べながら「赤坂くんは好き嫌いないの?」と青山が尋ねると「こっちの世界に来てからそんなこと言ってられなくなって何でも食べるようになりました」と赤坂は答えた。「成長したんだね!」と彼女が褒めると「生きるためですから」と彼は謙遜したが少し嬉しそうだった。


 大金持ちだからって忘れていたけれど、彼まだ15歳なんだよなと白井は大人すぎる接し方を少し反省した。それは緑川とて同じだった。

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