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違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第二部 二つの塔のようなもの 第1章 チベット~ネパール・北インド編
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閑話4 漆黒のジゴロ探偵ヘブン (赤坂康平)

ファイルナンバー02/02 院長の浮気調査【解決編】


 前回のあらすじ


 祖父が遺した探偵事務所を継ぐ(予定の)中学生二年生、武者小路 経文(むしゃのこうじ・へぶん)は、祖父の助手でガルエージェンシーを首席で卒業した女探偵、蓮花日琉 美李愛(はすかびる・みりあ)を表向きの所長として立て、初依頼を受ける。

 依頼内容は、とある整形外科院長の浮気調査。依頼主は彼の妻。

 彼女の元へ「彼の子を孕んでいるから中絶費用と慰謝料合わせて5億払え、さもなくば産んで認知させて財産を全て奪う」という脅迫状が届いた。

 ヘブンとミリアは院長を張り込み、尾行し、交友関係を徹底的に洗い出した。

 学校?そんなものはIQ123を誇るヘヴンには退屈で仕方ない牢獄だ。


 □□□□□


 浮気相手として4人の女性が脅迫状の差出人として浮かび、都内の高級ホテルのラウンジに院長が呼んでいると言って全員を呼び出した。困惑する4人。院長の脂汗がすごい。この中にきっと犯人がいる。


 1人目は病院の受付嬢。高橋明日香29歳。院長と高級レストランで食事をしているところを押さえた。タクシーでマンションへ帰った彼女を見届けた後でレストランに戻ったが院長は忽然と姿を消していた。時間差で再会したかも。あり得る。


 2人目は彼の患者。本田恵40歳。院長と同じフィットネスジムに通っている美魔女。地下駐車場で張り込んでいると、談笑しながら二人が出てきた。駐車場の精算に手間取りどちらも追えず仕舞いだった。しかし40歳だって出産できる。あり得る。


 3人目は銀座のホステス、エリカ。年齢不詳。院長が製薬会社の接待を受けてよく行くグラブに勤めている。店に入ろうとしたら「子供はだめだ」と言われて入店拒否。ミリアも「女性お一人では入店できません」と断られた。お手上げだけど、あり得る。


 4人目はミリア。張り込みとか飽きたから直接話を聞いて来るように頼んだ。彼女が「浮気していますよね」と問い詰めたら「君が相手してくれるなら全員と別れる」と言っていたらしい。それ以上の情報はないという彼女もまた怪しい。あり得る。


 「さて、お集まりの皆さん。きょうお呼び立てしたのはこれを誰が書いたのかはっきりさせるためです。一番遠い人でも片道45分、さほどの距離でもないですが」


 そう言ってヘヴンは院長の妻から預かった脅迫状をコピーしたものを全員に配る。

 高橋は「え?」という顔をしている。本田は困惑している。エリカは感心がなさそうに縦ロールの髪をくるくるしている。ミリアの表情は窺い知れない。彼女はいつでもポーカーフェイスだから。一流の探偵は動揺を他人に悟らせない。

 当の院長は脅迫文の紙を持ってカタカタと小さく震えている。身に覚えがある証拠。


「この場でこれが誰のものなのかはっきりさせる、簡単で唯一の方法があります。99%これでわかります。サイトにそう書いてありましたからね」


 ヘヴンは黒のロングコートのポケットから4本の妊娠検査の棒を取り出し、シャッと扇状に開く。そして1本ずつ女性に渡す。


「身の潔白を証明する気があるなら、トイレへどうぞ。50歩もかかりませんよ」


 恭しくトイレの方へ右手を差し出して女性陣に小便を棒にかけてくるよう促す。

 女性陣が去った後、院長にヘヴンが問う。


「院長、この脅迫状の差出人は誰なんです?本当はわかっているのでしょう?精子の着床率はおよそ30%ですから」


「い、いや、知らん。確かに私は女性にだらしないところがあるが、避妊には細心の注意を払っているし、アフターピルだって…」


 しばらくして女性陣が棒を持ち帰り、ヘヴンに渡す。

 そして彼は驚愕する。

 全員のものが判定部分に線が出ていないのだ。


「そ、そんなはずは…… 1%未満の誤差が4人で重なる確率は……」


 彼は咄嗟に棒の匂いを嗅ぎ始めると「やめて!」「なにやってんの!」「バカなの!」と女性たちからなじられた。ヘヴンとしては本当に尿をかけたのか確かめるためだったが、仕組み的に行為が変態すぎた。もしも止められていなかったとしたら、彼は検査部部分の白いところを舐めて塩味で確認していたかもしれない。


 項垂れる彼にミリアが声を掛ける。


「三代目、おっぱいを揉んでみますか?先代も行き詰ったときにそうしていました。隔世遺伝の確率は少ないかもしれませんが」


 ヘヴンはミリアが何を言っているのかわからなかった。

 だが目の前に差し出された丸い膨らみを見て、なんて丸いのだろうと思った。

 π(パイ)。これはまさにπだ!ここに宇宙の真理がある!πには逆らえない!

 ヘヴンがミリアの胸に両手で触れると、彼の脳内に特別な化学物質が駆け巡り、眠っていたIQを爆発的に高める効果が現れる。

 覚醒した彼のIQは456にまで跳ね上がる。後にジゴロ探偵と呼ばれる能力。

 IQを爆上げする特別な化学物質のことをIQ(インモラル・クォンタム)と後の科学者たちは呼んだ。


 覚醒した彼は全てを把握し、ミリアを除いて集めた女性と院長を解放した。

 そして院長の自宅に赴き、依頼人である院長の妻のパソコンを調べると、wordで書いた脅迫状の原稿ファイルを見つける。厳密にはゴミ箱フォルダの中から発掘した。


 これが後に、日本中を震撼させる名探偵ヘヴン伝説の幕開けであった。

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