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違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第二部 二つの塔のようなもの 第1章 チベット~ネパール・北インド編
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第27話 ねえ、体毛の処理ってどうおもう?

 女性用ハマムの入口に股間をスースーさせた白井と緑川が着く頃には、ヴェールを被った青山がツヤツヤの髪を靡かせて既に待っていた。


「すみません、待ちましたか?」


「いえ。さっき来たところです。すっごい気持ちよかった!全身つるつるですよ!」


 嬉しそうに腕を撫でる青山を見て、白井はつるつる?とスースーする自分の股座を思うと素直に言葉を受け取れなかった。彼の好奇心は大噴火していた。


「あの、つるつるって、もしかして、大事なところに泥を塗りました?」


「え?泥?泥… あー、ムダ毛処理のアレですか。わたしVIOも脱毛してたんで、薄く塗りましたけど… って白井さん、なにを想像してるんですか?」


 青山は頬を赤らめ、白井がそれを知っていて尋ねたことをからかってみた。

 しかし話はエロくならず、白井と緑川たちは「パイ〇ンすげえ」「まじスースー」と連呼しており青山は心底どうでもいいという顔をしていた。


 三人が股間をスースーさせて街でアカサカさんについて聞き込みをしていると、一人の坊さんが近づいてきた。ボロボロの布を巻いて杖を持った托鉢僧だった。


「召喚者の皆さまとお見受けするが、間違いはないか」


 声を掛けられた白井が坊さんを見ると、身なりとかけ離れた鋭い目をしている。

 よく見れば身体は筋肉質で、杖も武器として持っているように見える。


「そうですが、あなたは?」


「皇帝からの勅命です。すぐに居城まで来られるよう」


 言葉をそのまま緑川に伝えると「襲われたわけではないので、なにか話があるのでしょう」と言う。坊さんに承知した旨を告げ、三人はアーグラ城塞に向かう。


 中庭の謁見の間に通され皇帝を待っていると、金ぴかの着物を着たジャン・レノみたいなおじさんが来た。どうやら彼が第四代皇帝のようだ。表情は柔らかい。


「おうおう、よく来た召喚者たちよ。ハマムはどうであったかな?」


「え、あ、はい。とても気持ち良かったです。生き返ったようです」


「そうかそうか。して、『ジン』は退治してくれたのか?」


 ジン…、なんのことだ?退治? 白井はジンがどうのと言っていると緑川に尋ねると、彼は少し嫌な顔をしてジンについて教えてくれた。

 曰く、伝承に残る煙から生まれた精霊で、人の目には見えないものらしく、誘う声についていくと正気を失ってしまうらしい。そしてハマムが溜まり場なのだそうだ。


 「残念ながら、妖しく誘う声は聞こえませんでしたので」と白井は話を合わせる。


「なに?それでは退治をしていないと?とすれば代金を払ってもらわねば」


 VIP待遇が無料だったのは召喚者チートではなく、妖怪の退治料との相殺だった。

 白井がおずおずと代金を尋ねると皇帝の側近から法外な金額が言い渡される。それは三人の所持金を合わせても一人分にもならないほど高額だった。


「召喚者がVIP待遇じゃないことはわかりましたが、とても払える額じゃないです」

「消費者センターに苦情を入れる案件ですよね。ボッタクリとか許せない」

「しかし、この場をどう切り抜けましょうか。実は退治してたってことに…」


 三人で話し合ってみたが結論は出なかった。困り果てていると皇帝が口を開く。


「そこの女。儂のハーレムに入らぬか。聞けば不世出の歌姫だとか」


 助け船と思われた皇帝の言葉は全然助けになっていなかった。が、何かに気付いた緑川が青山に耳打ちをする。そして青山の話を同時通訳するよう白井に指示がある。


「皇帝陛下、おそらくジンは女性用ハマムにいました。わたしの精霊の加護を帯びた歌声がジンを追い払ったのだと思います。ハララの湯気も淀みなくなりましたから」


 青山の言葉を同時通訳で白井が皇帝に伝えると、彼はぐっと目を見開いた。


「おっ、おお、そうであったか。それなら憂いなく余もハマムに入れるものだ。しかし、そうなると余計にお主が欲しくなったのう。どうだ?ハーレムに来ぬか?」


 代金は払わずに済みそうな旨を伝え、青山には「なんか気に入られたみたいでまたハーレムにって言ってます」と伝えると、彼女はとても悲しそうな顔をした。


「白井さんは、わたしがここに残ればいいと思っているんですか?」

 ―――あ、これ、結果的に僕が告白する質問のやつだ…


「青山さん、僕はあなたと旅を続けたい。でも、あなたを危険に巻き込むかもしれないし、元の世界に戻れるのかも保証できない。贅沢はさせられないし、またうんこまみれになるかもしれない。でも、あなたがいなくなるのは寂しいよ」


 白井の本心を聞いて青山は勝ち誇った顔で立ち上がり皇帝に告げる。


「皇帝陛下、きっとハマムの侍女からわたしの歌についてお聞きになったのでしょう。それはきっと加護の力です。ですがそれは籠に閉じ込められたら力は失われます。加護だけに。高級エステごちそうさまでした。ではごきげんよう」


 青山は言うだけ言って立ち去ってしまう。呆気にとられる皇帝を残して。

 残された白井は青山の言葉を皇帝に伝えるにしても、ダジャレとかそのまま言って伝わるのか?と不安になりながら、とりあえず通訳してみた。

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