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違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第二部 二つの塔のようなもの 第1章 チベット~ネパール・北インド編
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第26話 ねえ、整う入浴法ってどうおもう?

 召喚者特権で高級ハマムへ行くように言われ、ドキマギする白井と青山を横目でチラ見した緑川がほくそ笑んでいるのを二人は気付かない。

 やがて富裕層向けの大規模ハマムに到着すると、男女は中で仕切られているわけでもなく、そもそも建物が別だった。緑川はぷーくすくすしている。

 「じゃ、じゃあ後ほどー」と平静を装って青山は女性専用の建物に入る。

 「じゃ、じゃあ我々も行きますが…くすくす」と緑川に促され二人は男性用に。


 建物に入るとまず涼しいドーム状の天井が高い部屋に案内され、腰布を渡され服を脱ぐよう言われる。めっちゃ豪華。腰布一枚になると大理石のベンチに座るよう言われ、冷えた水を渡され、案内人が白井と緑川の足を軽く揉み始める。

 しばらく涼しい部屋にいた後、木のサンダルを履くよう渡され、別の部屋へ。


 部屋の隅にある水槽のぬるま湯をボウルで身体にかけるよう言われ、ばしゃばしゃと浴びる。すると、硫黄の匂いのする泥のようなものを案内人が持ってくる。

 案内人は「これを塗ってください」と言う。「どこに?」と尋ねると、にこにこしながら陰部の毛に塗れと言う。―――こんな縮れ毛をサラサラにしてどうすんだ?

 言われるまま白井と緑川がモジャにベトベトと塗ると、ヒリヒリし始める。


「めちゃめちゃ熱いんだけど、これ大丈夫なんですか?」


「はい。そのまましばらく座ってお待ちください」


 案内人に満面の笑顔でそう言われ、緑川と一緒に床に座る。床暖房になっているのか尻がいい感じに暖かく、そのうちにじんわりと汗をかき始めた。


 しばらくして、水槽のお湯で泥を洗い流せと言われ、ボウルでぬるま湯をかけながら手でこすり落とすとモジャは消えツルツルになった。なってしまった。

 ―――こ、これ、もしかして青山さんも…

 卑猥な妄想を発動した瞬間、腰布が浮き始めてしまう危険を察知した白井は緑川のツルツルな尻を眺めて平常心を取り戻した。

 すると案内人が液体を持ってきてツルツルに塗れという。言われるがままに二人は少しヒリヒリするツルツルのところに塗ると、スーっとした清涼感に包まれ、フル〇ン感が通常の5万倍に感じられた。僕たちはどこまでも滑らかだ!爽、快、感!そんな気分になった。


 支度が整ったところで次の部屋に案内される。「ここからが本番のはずです」と緑川はワクワクしている。白井は妙な妄想を発動しないように心を無にした。

 重そうな扉を案内人が開けると、もわっとした蒸気が噴き出してくる。高山で濃い霧に包まれた以上に視界が悪い。見上げると白い蒸気が立ち込める天井には光の柱が輝いて、とても幻想的な空間を作り出していた。


 だが不穏な音が鳴り響いている。水が跳ねる音に混じって「バシンッバシンッ」と肉を叩く音が聞こえるのだ。―――なにをされるんだ、この音… こわい…

 おずおずと歩を進めると、八角形の石の台がある。脇に立つ男が石に水を掛けるとジューッと水が蒸発する音がする。ものすごく熱そうだ。男はそこに寝ろと言う。

 拷問だろそれ…、と白井が躊躇していると緑川は、お先!と言わんばかりに石の上に仰向けになった。様子を見て火傷の心配がなくなった白井も続く。


 ただ熱い石の上に寝て待つこと10分。二人は大量の汗を流している。

 そこへ黒い袋を手に嵌めた男が現れる。そして男たちは二人の全身をそのゴワゴワした手袋のようなもので擦り上げていく。「痛い痛い」と白井は身をよじったが男に抑えつけられ拷問は続く。やがて石の上には溜まった垢がひじきのように散乱しているのを二人は見る。―――自分の身から出たものとはいえ、汚なすぎる…


 おぞましいものを見た二人は、次に大量の泡に包まれる。尋常ではない量の白い泡。

 男たちは冷たい泡に包まれた身体を滑らせるようにマッサージしていく。

 ―――あっ、この人、すごく上手だ…

 その後、男たちは二人の上に跨り、腕や足、腰などを捻ってあらゆる関節をボキボキと鳴らしていく。蒸気に包まれた幻想的な空間で、身体を解体されている気分になった。


 仕上にぬるま湯を頭から数回掛けられ、さっきの部屋に戻る。少し休んだら涼しい部屋へ。

 サウナに入っていたかのように二人の身体はすっかり熱を帯びていて、噴き出してくる汗を給仕係が綿の布を巻き付けて吸わせる。二度と汚してなるものか!垢を溜めさせてなるものか!そんな気合が伝わるほどに、身体も頭もぐるぐる巻きにされる。

 豪華なソファに座って汗がひくのを待ち、火照りが落ち着いた頃、白檀の香りのオイルを点で付けてもらう。耳の後ろとか手首とか、いわゆる香水を付けるところに。


 これで超VIP公衆浴場の入浴は終了。代金は召喚者特権で無料。過分すぎる厚意に白井も緑川も一抹の不安を抱えたが、考えても仕方ないので考えるのをやめる。


 来る前に市場で買ってきたクルタという綿の服に着替え、ハマムを出る。

 皮膚を一枚脱ぎ捨てたような爽快感と身体の軽さに、白井も緑川も自然と表情が柔らかくなる。というかニタニタしていて少し気味悪い。

 そんな不審者二名で女性専用ハマムへ青山を迎えに行く。

 ―――なんか恋人と銭湯に行って、待った?とか言うやつみたいだ。

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