第3話 ねえ、精霊の加護ってどうおもう?
ギーナウ到着後、日が暮れる前に目的地に辿り着けそうだと言う緑川について北へ向かうとちょうど日が暮れる頃に牧場に到着した。―――乗り物ってこれか。
白井が牧場主に頼み込んで食事を恵んでもらい、その晩は納屋に泊めてもらった。
藁にシーツを掛けたベッドはチクチクして現代人の三人は上手く眠れなかった。
翌朝、馬の購入代金を支払い三頭の小型馬で再び移動を開始する。
当初、青山は白井の後ろに乗たがったが積載超過であるため別々の馬を用意した。
緑川は乗馬経験があるが、白井と青山は観光地での引馬しか経験したことがなかった。とはいえ小型の在来種、大きさも速さもすぐに慣れた。
常歩とはいえ三人が歩くより倍のスピードが出ていたため、キンジョーまであっという間に戻り、その日のうちにワニナに到着した。大阪である。
ワニナは最初の街であるムシサと同じぐらい栄えた街でとても活気がある。
川沿いに様々な店が立ち並ぶ光景を見て緑川が驚いている。
「ここ道頓堀だよな…、安井道頓まだ開発してないはず…、あ、マヒノルだから?」
ひとりごちる緑川を尻目に白井と青山は遅い夕食を摂る店を物色し一つに入る。
食事処のご主人に「あんたら召喚者やないか?」と尋ねられ理由を聞けば、しばらく前に言葉の通じない若者が街にやってきて、物々交換から始めて旅立つ前には相当な金を稼いでいったという。その彼にどことなく容姿が似ているそうだ。
―――金策の精霊でもいるのだろうか。
「そんで、あんたら帝にはもう会うたんか?」
「え?帝に?まだお会いしていませんが」
「はあ?ドラゴン倒しに行くんやろ?それ帝の勅命やで。会うてなんぞ助けてもろたほうがええで」
ご主人が言うには北東のラクョッウという街に帝の居城があるらしい。
宿屋で簡単な朝食を済ませたら帝に会うため北東に向かうとすぐに到着した。
街に足を踏み入れれば巨大な城が街の中心に見える。日本の城そのままの形だ。
門番に帝への謁見を願い出ると快く通してくれた。―――召喚者すげえな。
謁見の間は日本の城そのままの姿で、一段高くなった畳の上に帝はおわした。
「よくぞ参られた異世界の者たちよ。畏まらずとも良い。面を上げよ」
緑川に倣って土下座ムーブだった三人は面を上げて帝の顔を見た。
―――ガチの麿だ。でもおじゃるって言わないんだな。
帝は三人の顔をまじまじと見て「朕は精霊が見えるのだ」と微笑んだ。
そして青山は精神、緑川は社会の精霊の加護があると白井に告げた。言葉の通じないポカンとした二人にそれを通訳する。
―――青山さんの超ポジティブと緑川さんの土地勘は精霊の加護だったのか。
残る3つの精霊は、算術、科学、肉体だそうで、討伐の助けになるだろうからできることなら探し出して一緒にドラゴンの元へ向かったほうが良いと帝は言った。
―――なんか精霊って国語算数理科社会みたになってるんですけど…
「ドラゴンについて陛下はどのくらいご存じなのですか?」
「朕が知っておることなぞ、平民と同じよ。古文書も様々で描かれておって、どれが本物か判別がつかぬのが正直なところじゃ」
「そうなんですね。お聞かせくださりありがとうございます」
―――正体不明の化け物相手に国語と社会じゃ相手になんねえよ。肉体必須だな…
その後、簡素なもてなしを受けつつこの国のあらましを長々と聞く羽目に。
どこかで聞いたような話と全く知らない話がごちゃ混ぜになった歴史だった。
それを緑川に伝えると「まあ、地球のハトコみたいなものでは?」と言っていた。
さっさと西へ向かうつもりが城で足止めされて一晩ラクョッウに滞在することになったのだが、さずが帝の住まいなだけあって風呂に入ることができた。
寝室はそれぞれ8畳間程度の部屋があてがわれたが、襖であった為ロックができず青山の襲撃に戦々恐々とする白井であったが、青山は大奥の連中と酒を飲んでベロベロに酔いつぶれていた。
翌朝、城を後にして西へ進む。神戸、姫路、倉敷と本来なら立ち寄りたい街がいくつかあったが、渡航費もかかるだろうし路銀は無駄にできず先を急いだ。
―――大阪で稼いでいた召喚者がいれば金の心配は済むのだけどな…
休憩を少な目にしたおかげで日暮れ前にアーキの街まで辿り着く。広島だ。
夕食を摂るために入った食事処で牡蠣を勧められるも三人とも衛生観念に不安があり、やんわりお断りをした。
宿屋で白井は緑川と相部屋にして路銀を節約した。青山の襲撃対策でもある。
だかしかし、緑川の歯ぎしりと寝屁の臭さに二度と相部屋にはすまいと彼は誓う。
翌日は本州西端まで移動し、大き目の渡し船で九州に渡る。
関門海峡はとても穏やかで「デートみたいですね」と青山は上機嫌だった。
北九州に上陸すると西へ向かい、日没前に遂にキヨウ港に到着する。
明日、いよいよここから大陸へ渡ることになる。
俺たちの戦いはこれからだ!つうかまだ一度も戦ってもいない。




