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違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第3章 成都~チベット編
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第21話 ねえ、自然の精霊ってどうおもう?

 先代ラマであるテンジンは白井たちの加護は人工的なものだと言った。


「その知識が僕らに乗り移って使えるようになるってことですか?言語や社会はわかりますが、彼女の精神っていうのは知識?なんですか?」


「そうだのう…、精霊とはつまり『情報』と言えば理解できるかの」


「情報!」


「おお、理解できたようだの。そちらの二人に教えてやるがよい。それぞれが自覚すればもっと馴染むだろうて」


 そこで話を一区切りにして、先代は白井が二人に話を共有するのを待った。


 「わたしが人類の精神の情報を与えられているの?」と青山。

 「ものすごく高等な心理学を学んだ、みたいな感じかな?」と白井。

 「そう考えると、他人の精神にも干渉できそうな気がしますね」と緑川。

 「そしたら青山さんモテ放題じゃないですか」と白井。

 「いらないですそういうの。わたしは一人から愛されれば… あれ?なんか違う」

 そう言って青山は急に考え込んでしまう。


「あ、すみません。二人も把握できたようです。それで本来の精霊というのは?」


「古来より自然界に存在する6つの精霊のことよ。火、水、風、大地、光、そして無」

 ―――え?ここでいきなりファンタジー?つか無ってなに?怖い…


「もしかしてその精霊がこの世界を作っているとかそういう話ですか?」


「そうではない。人々が生きるために強く願うと精霊が力を貸す、そういうものよ」


「えっと、神頼み的な感じですか?祭壇作ってお供え物したりとか?」


「まあ、これは話をするより見せたほうが早いだろう。皆、付いて参られよ」


 そう言って先代は立上り、エントランスに出てもう一方の部屋へ入る。

 そこがこの建物のメインの空間で、広い部屋の奥に炉がある。その手前には水槽。鍛冶場のようだ。

 窓のない方の壁には様々な道具、ツルハシやノコギリ、手斧やノミ、クワやスコップなどが飾られている。そのどれも金属部分が、あの青黒い石のようなもので出来ている。


「昔、ここは鍛冶場だった。このような険しい場所で生きるために人の手に余る固い岩盤や金属を加工できるようにと腕利きの職人たちが道具を拵えていた場所だ」


 先代がそう言ったときに緑川が「この道具はなんだって?」と尋ねてきたので、先代の話をすると「だからか!」と合点がいったようだった。


「えっと、その職人さんと道具と精霊がどう…あっ、火の精霊ですか?」


「ほほほ。職人たちは願った、御仏にではなく炉に。岩を砕き道を作る道具を作るための炎が欲しいと。その時、火の精霊が炉に宿った。そして固い岩盤を掘るための最初の道具が生まれた。そして掘ったときに見つけたのだ、あの青黒く光る鉱石を」

 ―――あれ石じゃなくて鉱物だったんだ。


「それで青黒い鉱石を錬成して、どんどん道具を作ったってことですか」


「そうだ。それを用いて他の街と行き来できるよう橋を架け山を削った。だがな、半分ほどまで整備できたところでこの鍛冶場に愚か者が現れた」


 この街の支配権を巡って戦争が起きたときに武器を作ろうとしたらしい。すると火の精霊は消え失せてあの炉では二度と火が熾せなくなっているそうだ。

 その話を二人と共有すると「オーバーテクノロジーの正体があれだったのですね」と緑川が言い「争いごとには加担しないって、火の精霊っていい人ですね」と青山。


「それで他の精霊は?」


「わからぬ。人が純粋に求めるところに現れるのだろうがの」


 そこまで話を聞いたところで先代はコチュに新しい茶を淹れるよう言って、もう一杯付き合えと最初の部屋に戻るよう言われる。


「ここへ来る前、たいそう気分を悪くしたそうだの」


「あー。精霊の話を聞こうとしたら金寄越せって言われたものですから」


「そうか。それはすまなかったの。あれはあれで必死なのだ。この瓦礫の山を片付けて政治が行える宮殿を建て、歴代ラマの霊廟を建てる壮大な計画があっての。嫌らしい話だがどうやっても金が要るのだ」

 ―――それって緑川さんが言ってたやつじゃん!これから作るんだ。


「それにしたって言い方とかあるじゃないですか」


「ほほほ。そうだの。儂からよく言っておくから勘弁してやってくれ」


「まあ、先代さんからお話聞けたんで、どうでもいいですけ…あああ!大事な話を忘れてた!3人の精霊の居場所、まだ聞けてないです」


 白井がそう言うと先代は柔らかく微笑んで目を閉じて集中し始めた。


「算術の精霊は…インドにおる。デリーの南、アグラの西、バヤーナの街におる」


 白井は即座に緑川に伝えようとしたが、地名は聞き取れたようで笑みを浮かべて大きく頷いていた。青山も笑顔でサムアップをしている。

 ―――インドか。西へ移動してるみたいだけど留まってくれていると助かるなあ。


「科学の精霊は…むうぅ… 地中海の辺り… 塔が見える…」

 ―――え?わかんねえの?そんなざっくり…


「肉体の精霊は… … … … …すまぬ。森の中としか…」

 ―――ちょっと!おじいさん!森って!いくらなんでも森て!


 とりあえず明日からインドに向かうことが決まった。行き方知らんけど。


第一部『旅のうんこ仲間』 了

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