表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
違世界ダイジェスト  作者: ながずぼん
第3章 成都~チベット編
PR
21/34

第19話 ねえ、想定外技術ってどうおもう?

 急激な高度上昇に身体が悲鳴を上げる。脈打つたびにこめかみに痛みが走り、考えることが難しい。酸素が薄いため呼吸は浅く息を吸う回数が増える。そのため肺にチクンとした痛みを感じる回数が多くなる。三人が三人ともくぐもった呻き声を上げながら、ヤクに掴まり高原の道を往く。


 小一時間ほど移動してくるとそれなりに身体が順応し始め、考えることができるようになってくる。

 が、しかしせっかく取り戻した思考を緑川はまた放り出すことになる。


「そんな…ありえない」


 こちらの山頂とあちらの山頂に吊り橋がある。長さおそよ百数十メートル。緑川が想定していたこの時代には『ありえない』技術。

 元の地球より谷の間隔が短くなっていたとしても、その長さの吊り橋を架けるだけの技術は元いた世界でも超難易度のもの。社会の精霊の加護を受け、この世界の全てを網羅していると思っていた緑川は、このとき初めて『ここは知らない世界なのだ』という考えに至った。


「渡らないんですか?」


 吊り橋の前で立ち止まったままの緑川に青山が声を掛けると、我に返り「ああ、渡りましょう」と言ってヤク太郎を前進させる。『天空の』と枕詞を付けたくなるほどの高所に架けられた吊り橋なのでヤクは急がない。ゆっくりと一歩一歩安全確認をするように歩を進める。

 複数で乗って積載荷重オーバーになるのを気にして、一人ずつ渡る。殿の白井が渡り終える頃には緑川はだいぶ冷静になっていた。

 そしてしばらく進むと先ほどの高精度スロープが現れる。今度はそれを下る。

 ここまであれだけ苦労してクソにまみれて上り下りしてきた高山越えの難所を、一日もかからずに踏破できてしまった。


 一行は日が傾く前に翌日の目的地としていたバタン(巴塘)に到着すると、垂直移動を繰り返し、肺や心臓、三半規管が悲鳴を上げていたため早々に宿に入り休息を取る。


 翌日からも難所を解消する謎技術により、移動速度は考えられない速さだった。

 最大の難所だと思われていたギェラ・ニーマ・シャー・チュ(怒江七十二弯)はスロープで安全に降りられ、ミトゥイ(米堆)やポム(波密)に至っては氷河も泥道もあの青黒く輝く石板で舗装されてしまっている。確かに便利だが自然に対する冒涜にも感じられた。

 むしろ急激なアップダウンによる身体が順応しないことの方が危険だと学び、水平には普通に移動し、垂直方向の移動には身体を慣らしながらゆっくりと移動した。


 そうして一行はベイジン(北京)の爺さん官僚の話を信じ、ずっと目指してきたチベット、ラサの街に到着したのだった。

 だが街の光景を見て「これが…ラサ?」と緑川だけが驚きの声を挙げる。

 地図上は確かにラサにいるはずだが彼の知る光景とは全く違うようで「どうしたんですか?」と不思議そうにする青山の声も届いていないようだった。

 ひとまず宿を取り主人にここがラサであることを白井が確認すると「そうだが?」と訝し気な顔で肯定された。それを緑川に伝えると「僕の認識では赤く塗られた霊廟のある宮殿と、白く塗られた政治の宮殿があるはずなんです」と言っていたが、民家と店、古い砦と瓦礫の山で街は形成されていた。宮殿と呼べるような立派な建物はない。

 高僧に会いに行くには少々時間が遅かったので、明日会いに行くことにしてこの日は早々に就寝することにした。


 翌日、緑川のナビが機能しなくなっているので、三人で話し合い、あそこだろうなという砦に向かう。

 石造りのその建物はどう見ても古い砦なのだが扉の前に番がいるわけでもなく、法衣を纏った僧侶が忙しそうに行き交うだけで、ノーチェックで中に入れた。

 コンシェルジュ的な僧侶も見当たらないので近くの僧侶に声を掛け、自分たちは召喚者なのだがドラゴンや精霊に詳しい高僧に会いたいと言うと『ゲロン』を呼ぶのでここで待てと言われ、しばらくして眼鏡の僧侶がやってきた。

 彼は「ラマがお会いになる」と言い、砦の奥へと案内してくれた。

 通路を歩きながら「元の世界でここはとうの昔に破壊された要塞だと思います」と緑川が言う。「それってどういう?」と青山が尋ねると「精霊の加護というものが僕の思っていたものと違うということでしょうね」と緑川は真剣な顔で言った。


 眼鏡に案内された部屋は、まるで魔王城の魔王の部屋みたいな薄暗い殺風景な部屋だった。ひな壇の上には赤い大きな椅子に腰掛ける偉そうなお坊さんが座っていた。

 お坊さんの前には置かれた椅子に座るよう眼鏡に言われ三人はそれに腰掛ける。


「はるばるこの地まで参られた召喚者たちよ、なぜここに来られた?」


「ドラゴンについて何かご存じないか、それから精霊について教えて頂きたくて参りました」


「ドラゴンか。ドラゴンについては古い書物にも『遥か西』としか書かれておらぬ」


「え?それだけですか?」


「左様。いまはまだドラゴンが現れるほど世は乱れておらぬ。儂からすればどうしてお主らを呼んでまでドラゴンを探させるのかマヒノルの魂胆がわからぬ」

 

 ―――なんだこの坊さん… 偉いのか知らんけど感じ悪いな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ