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二十話 第二部隊本拠地

 第二支部本拠地。門番であるサングラスの印象が強烈な男無しではたどり着けない秘密基地は、それからしばらく新たな少年を迎え賑わっていた。


「ミタツくん。料理はできるのかな?」

「一応この世界に来てから自炊をしてるんだ。一週間毎食違うものを作れるぐらいにはレパートリーもあるよ」

「なるほど。よかったね、パルプ。料理仲間ができたいみたいだ」


 タイチョウがにっこりとパルプに笑いかけると、つぶらな瞳を細めてパルプがぐっとゴツゴツした親指を立てる。


 ミタツも紺のエプロン姿でぐっと親指を立てた。内心相当驚いているのは内緒だ。


 タイチョウとの会話を終えてミタツは昼食作りに勤しむ。今日は軽くサンドイッチだ。今日は買い出し日のようで、ちょうど食材が少なかったのだ。


 パンの耳を切り落としたものと切り落としてないものでわけながら色々と具材を挟んでいく。作りたてのサンドイッチを皿に乗せた時、手がぬっとミタツの横から伸びた。


「うん。美味しいね。味が濃くて良い」

「ただのサンドイッチだよタイチョウ……」

「いや、パルプは薄味主義でね。ほんの少し物足りなかったんだ」


 じっと遠くからミタツを見ていたパルプが、ミタツの視線に気づいてコクコクと頷く。確かにこれまでミタツが食べた料理は薄味だった。ポテトとかがわかりやすい。


 ならこれからも少し濃いめにしておこうかとミタツは頭の中にメモする。


 ひとつ丸々食べきって満足そうにタイチョウが去って行った。それと入れ違いに背の小さなココロが台所に入ってくる。


 それに気づかないミタツに、不満を覚えながらココロはミタツの服の裾を引いた。それに気がついてミタツは尋ねる。


「どうしたの?」

「……甘いのも作って」

「甘いサンドイッチ……ジャムかな。なんのジャムがいい?」

「ジャムじゃない」


 調味料の並ぶ棚に向かってジャムを探していたミタツは、ジャムではないと言われ振り向く。


 ココロは淡々と言った。


「フルーツホイップサンドイッチがいい」

「……が、頑張ってみるね」

「よろしく」


 目が隠れていて表情が読み取りづらいはずなのに、心做しかうきうきしているように見えた。


 ココロが出ていくのを見送って、ミタツは今度はホイップクリームを探す。しかしもちろんそんなものはない……と思っていた。


 ばっちり「ココロ」と名前付きのクリーム入りの容器が冷蔵庫の奥底に入っていた。


「……まあ、これしか無いし」


 ミタツはそれを手に取って、今度はフルーツを探す。しかしフルーツはどうやら切らしているようだ。


 買い出し組を待つ間、七人分のサンドイッチを作り終える。ちょうどハムを挟み終わって耳なしのパンの対角線上に包丁を入れて皿に盛り付けた時、ドアの無い台所に二人の女性。


「お姉さんが帰ったわよ〜」

「よくそんな恥ずかしい言い方できるわよね」

「何か言ったかしら?」

「さあ?」


 先程まで雰囲気も良さそうに見えるが、メアリーの一言で一瞬戦場が見えた。素直にメアリーも引き下がると、ジーナが買い物の袋をミタツに寄越す。


「フルーツとかって何かある?」

「オレンジとレモン、それからイチゴにマスカットはあるわよ」

「そっか。ありがとう。まだ作らなきゃだから、これ持って行ってもらってもいい?」

「お姉さんに任せなさい。ほら、メアリーも」

「はいはい」

「助かるよ」


 二人がお皿を運んでいってもらうのを視界の端に、ミタツはココロの分のサンドイッチもさっと作って運ぶ。


 すでにテーブルにはボー以外の全員がいた。フェリの姿もある。


「ボーは?」

「ボーは夜型だから睡眠中さ。それより、メアリー、ミタツ。作戦の方は?」

「ばっちりですわよ、フェリ様♪」


 やけに上機嫌にフェリに対して応えるが、ミタツに向けられた目は真剣そのものであった。


 ミタツもしみじみと頷く。


「大丈夫、きっとやりとげて見せるよ」

「なら、安心だね」


 そう言って、フェリはハムのサンドイッチを頬張った。それを皮切りに「いただきます」と聞こえたりして皿の上のサンドイッチが消えていく。


 ミタツとメアリーも、程よい緊張感の中、食事を楽しんだ。


 サンドイッチが全てなくなり、ココロが大事そうにミタツの作ったフルーツホイップサンドイッチをちびちびと食べるのを気にせず、二人はL字ソファの対角線上に座る。


「失敗は許されないわよ」

「わかってる」

「ま、あたしがいるから余裕だとは思うけど、万が一は見逃せないわ。……足でまといにはならないで」

「大丈夫。相手の足にまといつくことだってできる」

「面白くない冗談ね」

「……自分でもそんな気はしてるんだよね」


 苦笑のままミタツはソファに背中を預ける。前かがみになるメアリーは、ふっと笑って、


「頼むわよ。フェリ様の助手の名に恥じないよう頼むわ」

「うん」


 何度頼むのだという言葉を飲み込んで、ミタツは頷いた。

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