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十九話 これからの仲間

「ーーどうだい、うちの部隊は」

「いい人達ばっかりだね」


 副隊長なのに何故か隊長面をするフェリに気づかずに、ミタツは素直な感想を述べる。


 実際、彼らは様々な背景はあれど、皆常識ある人々に変わりはない。善か悪かは置いておく。


 フェリは輝かしい目をするミタツの横顔を見て微笑む。そして自分の手の中のコーラを口に運んだ。


「……ちなみに、タイチョウとココロは人間で、ボーはヴァンプ。ジーナは見たまんまのエルフで、パルプはドワーフと巨人族のハーフさ」

「へぇ。ぱっと見じゃわからないんだね」


 改めてボーの方を見る。目を凝らせば、確かにその口の中には光沢のある犬歯が見えた。またパルプは手の中のグラスを割ってしまっていた。


 クスッとフェリとともに笑う。居心地悪そうにパルプは首を横に振ってゴミ袋に破片を突っ込む。床に傷が付くとメアリーに怒られていた。


「ちなみに、メアリーは?」

「メアリーは人間だよ。それに、土を自由に操れる恩恵者でもある。仲良くしたらいろいろお得だと思うよ?」

「仲良くできたら、いいなあ」


 それとなく願望を込めて言うと、メアリーがこっちを見たような気がしてミタツは突き刺さる視線を無視する。これは反応したら怒られるやつだ。対照的にフェリは楽しそうに笑っているのだからタチが悪い。


 横目でフェリを見ると、「ごめんごめん」とフェリが目じりの涙を人差し指で払う。


「それと、君にもこれからここを拠点にしてもらいたい」

「ちょっ、フェリ様?! なんでこんなのが家にくるのよ!」

「助手だからねぇ」


 ご最もな意見であり、メアリーは反論の言葉を失った。そしてやっぱりミタツを睨む。ミタツは僅かに斜め下からの射抜くような目線に耐えきれず、思わず尋ねた。


「……ちなみに、メアリーはなんで僕をそんなに目の敵に」

「理由はあるけど言わない!」


 頬を膨らませ、ぷんすかしたままメアリーが乱暴にジュースを飲み干して席を立った。


「おやすみ!」

「メアリー、今度ミタツと仕事だからね」

「なっ…………はい」


 フェリに言われると、昂っていた気持ちを無理やり抑えてメアリーが返事をした。


 少し落ち着いた様子でメアリーがリビングを去る。


 耐えきれずミタツは不安な声音で訊く。


「……僕、ここにいて大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。ボクの要望だし、みんなは君のことを受け入れてる」

「そうっすよ!」


 ボーがぐっと親指を立てて犬歯を覗かせて笑う。間違いなく肩が軽くなるのを感じた。


 ミタツは自分から立ち上がる。そして、部屋中に聞こえるように、


「よろしくお願いします!」


 そう言うと、そこかしこから「よろしくね〜」「……よろろん」「うん」「いらっしゃい」という声が上がる。


 ミタツは笑顔になる。しかしその瞬間、頭の中にフェリのある言葉が思い出された。


「……ちなみに、メアリーとの仕事っていうのは」

「ほんとはボクがいくところの代役だね。被ってたからどうしよっかなって思ってたところだったんだ。ま、君を助手にしたのは思いつきだったけど」


 ミタツはメアリーの反応を想像する。


 ……どうやら二つ目の仕事は、ある意味で一筋縄にはいかなそうだ。


 ミタツは難しい顔で考える。


「……まぁ、一応」


 ーー ーー ーー ーー ーー


「……メアリー。寝てたらごめん」


 フェリに言われて、ミタツはメアリーの部屋の前に来ていた。


 複雑な心境で、ミタツは言葉を選びながらなんとか伝える。


「さっきは挨拶出来なかったから。……嫌われてるけど、言わなきゃと思って。未熟者だけど、よろしくお願いします」


 物音のしないドアの奥にいるはずのメアリーに向けて、ミタツは頭を下げる。


 きっとミタツは何か地雷を踏んでしまったのだ。その不安は拭えないが、一方的な挨拶でも、したことでミタツの心はほんの少し軽くなった。


 ミタツは頭を上げようとした。その瞬間、目の前のドアが勢いよく開いた。もろに額にダメージを受けたミタツは、額を抑えて後ずさる。


 涙目で見れば、パジャマのメアリー。


「あたしがあんたのことを嫌いなのは、ぽっと出でフェリ様の隣にいるからよ! ずるいじゃない! だったらーーその分あたしの邪魔なんてするんじゃないわよ! …………おやすみ!」


 早口で、ほぼ一息で言い切って、メアリーは開く時と同じ速さでドアを閉める。


 呆気にとられてただ額を押さえたままでいたミタツは、我に返る。


「うん。おやすみ。絶対に邪魔はしない。約束するよ」


 そう笑いかけて、フェリに自分の部屋の場所を訊きにリビングへ戻った。

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