第008話:エンジェルティア
第一章:止まない雨の島
―前回のあらすじ―
『ミルキークォーツの丘』から帰ったグローブは、ジェンドの話をマリヤから聞いた。
その夜、夢の中で《虹の笛》の存在を知らされ、『オパールマウンテン』の山頂を目指すよう、再び告げられる。
ダダダダダッ――
静かな家の中に、階段を勢いよく駆け降りる足音が響き渡った。
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*グローブ:
おばあちゃん、おばあちゃん!
おはよう。
=
*マリヤ:
おはよう、グローブ。
どうしたんだい?
そんなに慌てて。
=
*グローブ:
笛!
おばあちゃん、《虹の笛》って知ってる?
八色に輝く、不思議な笛だよ!
=
*マリヤ:
えっ……?
=
*グローブ:
ボク、夢で見たんだ。
おばあちゃんが持ってるんでしょ?
その笛。
=
*マリヤ:
あ……ああ……あの笛ねぇ。
……そういえば……。
どこに仕舞ったかねぇ。
=
マリヤは視線を泳がせ、考え込むような仕草を見せた。
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*グローブ:
それじゃあ、ご飯食べたら、一緒に探そっ!
=
*マリヤ:
あ、ああ……。
=
朝食後――
グローブの勢いに押されるように、マリヤはしぶしぶ部屋の奥へ向かった。
=
*マリヤ:
……弱ったねぇ。
=
小さくため息をつきながら、物置の奥をゴソゴソと漁り始めた。
しばらく家じゅうを探していると、グローブの目が部屋の隅に置かれた古い木箱に留まった。
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*グローブ:
なんだろう……この感じ。
とっても大事なものが入っている気がする……。
たぶん、これだ!
=
そう思ってグローブが、そっと蓋を開けると、中には一冊の古びたノートが入っていた。
その表紙には「ジェンド」という名前が書かれていた。
=
*グローブ:
あ……これ、おじいちゃんの名前だ!
=
グローブは夢中で、ページをめくっていった。
そして、ある挿絵に目が留まった。
そのページに描かれていたのは、先日のおつかいで持ち帰った《ヘンブレス》の卵と《カウカーム》のミルクだった。
さらにページをめくると、さまざまな素材の名と挿絵が、文字とともに並んでいた。
《エンジェルティア》。
《トラベリー》。
《スウィートウィート》。
《ハルモニアの水》。
そして――
《エデンの実》。
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*グローブ:
これって、昨日おばあちゃんが言ってた《神秘のマナ》の素材なんじゃ……。
=
そして次のページには、見覚えのある八色の光をまとった笛が描かれていた。
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*グローブ:
あっ、この笛!
……夢で見たのと同じだ。
=
グローブがさらにページを読み進めようとした、その時だった。
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*マリヤ:
見つかったかい?
……グローブ。
=
背後から不意に聞こえた声に、グローブは思わず肩をすくませた。
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*マリヤ:
そのノート……見てたのかい?
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*グローブ:
これ……おじいちゃんのだよね?
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*マリヤ:
ああ、そうだよ。
=
*グローブ:
ボク、手伝いたいんだ……。
ミルクも卵もここに載ってるってことは――
おばあちゃんも集めてるんでしょ?
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マリヤは息を呑んだ。
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*グローブ:
おじいちゃんが作ろうとしてた《神秘のマナ》を――
ボク、完成させたいんだ!
=
マリヤはしばらく何も言えなかった。
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*グローブ:
ここに書いてあることって本当なんでしょ?
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*マリヤ:
ああ、本当だよ。
=
*グローブ:
だったら《エンジェルティア》って、『ダイヤモンドビーチ』に埋まってるよね。
じゃあ、すぐ採ってくるよ!
=
グローブは勢いよく家を飛び出していった。
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*マリヤ:
もう……止められそうにないねぇ……。
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『ダイヤモンドビーチ』へたどり着くと、ナギとナミが、いつものように親しげに話しかけてきた。
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*ナギ:
よう、おはようさん!
今日はどうした?
慌てて。
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*ナミ:
あら、スコップなんて持ってるけど……。
今日はいったい、何をするつもりだい?
=
*グローブ:
《エンジェルティア》を採るんだ。
=
グローブの返答に、ナギとナミは顔を見合わせて苦笑いする。
=
*ナギ:
《エンジェルティア》を掘るって……お前。
自分の腰の高さくらい掘らないと出てこないぞ!
=
*ナミ:
そうだよ。
ちょっと砂を退けるくらいじゃ出てこないよ。
=
*グローブ:
えっ、そうなの?
……でも、必要なんだ。
=
グローブは二人の言葉を背に、砂浜へとスコップを突き立てた。
――シャク、シャク。
シャク、シャク。
――ザクッ、ザクッ。
グローブが何度か掘ると、音が変わり、重みが増した。
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*グローブ:
このまま、掘ってたら、疲れるし……。
何時間もかかっちゃうな。
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グローブはスコップを置くと、家へと戻って行き、工具と素材を手に戻ってきた。
スコップの前に座り、グローブが大きく息を吸い込む。
すると、手のひらが八色に輝き出した。
その瞬間――
羽根のようなものが、一瞬だけ見えた。
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*グローブ:
……今の、何だろう?
=
グローブは不思議そうに自分の手を見つめた。
手の輝きが収まると同時に、グローブはスコップを加工し始めた。
石が粘土のように柔らかくなり、木材は思い通りの形へ組み上がっていく。
=
*グローブ:
あ……前より、うまく波長を操れる……。
=
あっという間に、砂を掘るための装置を作り上げた。
そして最後に、指先で装置全体をなぞると、淡い光を帯びた。
=
*チサト:
おはよう、グローブ!
何やってんの……?
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*グローブ:
チサト、おはよう!
《エンジェルティア》を採ろうと思って……。
=
*チサト:
その変な機械で掘るの?
=
*グローブ:
そうだよ。
=
グローブが手元のレバーを回すと、装置が砂を遠くへ飛ばしていった。
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*チサト:
うわー、おもしろーい!
私にもやらせて!
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*グローブ:
いいよ。
=
*チサト:
軽い!
簡単、簡単。
=
そう言いながら、チサトはレバーを回し続けていた。
掘削装置は、どんどん砂を掻き出していく。
しばらくすると――
――カツーン!
掘削装置の先端が、砂の中で硬いものに当たった。
その音にナギとナミが振り向いた。
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*ナギ:
おいおい、マジかよ。
=
*ナミ:
まだ、お昼にもなってないわよ。
=
グローブはその硬いものの周りの砂を、手でかき分けた。
灰色の砂の中から、淡い撫子色の輝きが姿を現した。
=
*チサト:
うわー!
きれいだね。
=
*グローブ:
出てきたね……。
ありがとう、チサト。
=
*チサト:
きれいだけど……。
急にそんなもの取って、何かあるの?
=
*グローブ:
えーっと、おじいちゃんの研究の続きを手伝ってるんだ。
=
*チサト:
えっ……?
どういう意味?
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チサトが怪訝そうに眉をひそめた。
=
*グローブ:
あっ、ごめん。
……実はさ、おばあちゃんの部屋でおじいちゃんの研究ノートを見つけたんだ。
=
*チサト:
研究ノート?
=
*グローブ:
うん。
そこにこの《エンジェルティア》のことが書いてあったんだよ。
=
*チサト:
ふーん……そうなんだ。
=
*グローブ:
一緒に取りに行った、《ヘンブレス》の卵と《カウカーム》のミルクのことも書いてあったよ。
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*チサト:
それで……何ができるの?
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*グローブ:
《神秘のマナ》だよ。
……ボクもよく分かってないんだけどね。
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*チサト:
何それ?
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*グローブ:
とりあえず、一度この《エンジェルティア》をおばあちゃんのところに持って帰るよ。
=
グローブはそう言うと、《エンジェルティア》を大事そうに手に持ち、家へと駆け出した。




