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G【虹のシンフォニー】  作者: 左と右(SATOWU)マコト
第一章:止まない雨の島(全22話)001-022
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第006話:霧の中の声


第一章:止まない雨の島


―前回のあらすじ―


グローブはチサトとともに《カウカーム》のミルクを取るため、『ミルキークォーツの丘』を訪れ、牛舎でラテラと出会う。


その直後、牛舎から逃げ出した一頭の仔牛を追いかけることとなった。



=

*グローブ:

ボクが追いかけるよ!

=

*チサト:

待って、私も行く!

=


牛舎を飛び出した仔牛を捕まえようと、二人は雨の中へと駆け出した。


黄金色の巨石が立ち並ぶ『ミルキークォーツの丘』。


視界を白く染める深い霧。


二人は目を凝らし、あたりを見渡した。


=

*チサト:

あっ、あれそうじゃない?

=

*グローブ:

どれ!?

=

*チサト:

あそこの巨石の影!

=

*グローブ:

よし、分かった!

ボクにまかせて!

=


グローブが回り込むようにして、仔牛へと駆け寄った。


ゆっくりと近づいていく。


そっと……。


そして、あと一歩で手が届くという瞬間――

グローブは仔牛に飛びついた。


しかし、仔牛は軽快なフェイントをかけて、グローブをかわした。


――もぉーーーっ!


=

*グローブ:

うわっ!?

=


勢いを殺しきれず、グローブはそのまま泥の中へ盛大に転がった。


=

*チサト:

グローブ、大丈夫!?

……もう!

さっきから、ラテラさんの前だからって張り切りすぎだよ!

=

*グローブ:

えっ?

そ、そんなことないよ!

=


そんなやり取りをしている、ほんのわずかな間に、二人は仔牛の姿を見失った。


=

*グローブ:

あれ?

=

*チサト:

いない……。

=

*グローブ:

……どうしよう……。

でも……見つけたとしても――

ただ追いかけるだけじゃ、怖がってるのか、遊んでるのか分からないけど……。

逃げてばかりで、捕まえられないよ。

=

*チサト:

……そうだね。

何かいい方法ないかな……。

=

*グローブ:

……挟み撃ちにする?

……エサで釣るとか?

……口笛?

=

*チサト:

……あっ、そうだ。

そういえば、お母さんが言ってた。

子供って、お母さんの声を聞けば、どんなに遠くにいても戻ってくるって……。

=

*グローブ:

それ本当……?

=


チサトは牛舎の入り口で静かに佇んでいた母親の《カウカーム》に、恐る恐る近づいた。


=

*チサト:

お願い……。

あの子、心配してると思うの。

……呼んであげて。

=


――んもぉーぅ。


母親の低く重たい鳴き声が、雨の放牧地に響き渡った。


すると、小さな影が勢いよく、こちらに向かってきた。


――もぉっ!


しかし、雨でドロドロにぬかるんだ地面に、仔牛はバランスを崩して、転びそうになった。


=

*グローブ:

危ない!

=

*チサト:

こっち!

=


二人は息を合わせ、正面から滑り込んできた仔牛の身体を同時に優しく抱きとめた。


=

*ラテラ:

すごいね~。

捕まえてくれて、ありがと~!

=


駆け寄ってきたラテラが、泥だらけになった二人を見て、おっとりと柔らかく微笑んだ。


=

*ラテラ:

二人は、とっても仲良しなんだね~。

=


泥だらけの顔のまま、グローブとチサトは思わず顔を見合わせた。


=

*グローブ:

ち、違います!

=


グローブが慌てて否定する隣で、チサトだけは嬉しそうに頬を緩めていた。


=

*チサト:

……えへへ。

=


ラテラは近くにあったホースを二人に向けた。


=

*ラテラ:

はーい、レインコートが泥だらけだから、水かけるね~。

=


そして、勢いよく蛇口をひねった。


――プシャァァァッ!!


=

*グローブ:

うわああああっ!

=

*チサト:

きゃあっ!!

=

*ラテラ:

ふふふ。

ごめんねぇ~。

でも、すっごく、きれいになっていくよ~。

=


突然、水をかけられてビックリする二人だったが、レインコートの泥汚れは、みるみるうちに綺麗に洗い流されていった。


=

*ラテラ:

はい、タオル~。

=

*グローブ:

ありがとうございます。

=

*チサト:

びっくりしたけど、気持ちよかったです。

=


二人はラテラに渡されたタオルで顔を拭いた。


そしてラテラが仔牛を拭き終えると、ミルクの場所まで案内してくれた。


=

*ラテラ:

はい、これが《カウカーム》のミルクだよ~。

=


特大のボトルに純白のミルクが湛えられていた。


=

*グローブ:

うわぁ……。

すごく、きれいなミルク……。

ありがとうございます。

ラテラさん。

=

*チサト:

グローブ、これ持って帰るの?

すっごく重そうだけど……。

=

*グローブ:

……確かに、そうだね……。

=


グローブは少しだけ考えた。


=

*グローブ:

あっ……そうだ。

ラテラさん。

余っている紐とか、ありませんか?

=

*ラテラ:

紐~?

ロープならあるけど、何に使うの~?

=

*グローブ:

リュックにします。

=


ラテラからロープを受け取ると、グローブの指先が素早く動き出した。


迷いのない手つきで、ロープをボトルへと巻き付けていった。


あっという間に、リュックのように背負える、頑丈なホルダーを作り上げてしまった。


=

*ラテラ:

あら〜、凄いね〜!

簡単にそんなもの作れちゃうなんて~。

=

*チサト:

本当、器用よね……。

相変わらず凄すぎ。

=


そしてグローブは、リュックのように特大のボトルをしっかりと背負った。


=

*グローブ:

ぐっ、やっぱり重い……。

=


そう言うと、肩に食い込んだロープを、そっと指でなぞった。


その瞬間――

淡い光がロープを走った。


=

*ラテラ:

……グローブくんって、村長さんのところのお孫さんだよねぇ。

=

*グローブ:

はい、そうです!

=

*ラテラ:

その手つきを見てたら、ジェンドのこと、思い出しちゃった〜。

=

*チサト:

えっ!?

=

*グローブ:

ジェンド?

誰のことですか……?

=


聞き覚えのない名前に、グローブは首を傾げた。


=

*ラテラ:

ごめん、ごめん。

なんでもない、なんでもない。

今の気にしないで〜。

=


ラテラは笑顔を保ったまま、わずかに視線を泳がせた。


=

*ラテラ:

あ、そうだ!

夜になって、もっと暗くなると、《カウカーム》たちが敏感になって危ないから〜……。

二人とも早めに『ダイヤ村』へ帰ってね~!

=


それ以上の質問を拒むように、ラテラは二人を足早に牛舎の外へ送り出した。


――んもぉーぅ。


《カウカーム》の重たい鳴き声だけが、霧に包まれた丘へゆっくりと溶けていった。


グローブは、先ほどのラテラの言葉が妙に気になっていた。


――ジェンド。


それは、いったい誰の名前なのだろうか。


初めて聞く名前のはずなのに、グローブの胸の奥に小さく引っかかった。


ぽつ……ぽつ……ぽつ……。


挿絵(By みてみん)


画像はイメージです。

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