第005話:黄金のツノ
第一章:止まない雨の島
―前回のあらすじ―
グローブは《ヘンブレス》の卵を持ち帰り、次の目的地『ミルキークォーツの丘』へ向かうことになった。
その夜グローブは、【緑】と【紫】に変わる泉の前で、「八色の羽根」を受け取る夢を見た。
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*グローブ:
おばあちゃん、おはよう。
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*マリヤ:
おはよう、グローブ。
今日は、食事を済ませたら、《カウカーム》のミルクを忘れずにお願いね。
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*グローブ:
うん、大丈夫だよ。
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食事を済ませたグローブは、ナギとナミに挨拶をするため、『ダイヤモンドビーチ』へ向かった。
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*ナギ:
よう、おはようさん。
『ロッククリスタルの谷』は楽しかったかい?
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*ナミ:
ふふ、なんだか昨日より、ちょっと大人になったんじゃない?
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*グローブ:
うん、なんか少しだけ、自信が持てるようになったんだ。
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*ナギ:
おお、言うねぇ!
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*ナミ:
チサトから聞いたわよ。
手を繋いで橋を渡ったんだって!?
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その言葉にグローブは、一瞬で耳たぶまで真っ赤になり、返す言葉を失って黙り込んでしまった。
夫婦は顔を見合わせ、そんなグローブの様子を微笑ましく見守っていた。
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*グローブ:
きょ、今日も『ミルキークォーツの丘』に行くから、手伝えないんだ!
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*ナギ:
そうか。
こっちは大丈夫だぜ。
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*ナミ:
気をつけてね。
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そう言うとグローブは西へと向かった。
『ミルキークォーツの丘』へ向かう途中には『ダイヤの里』があり、島の人々はそこで暮らしている。
グローブの家は、島の南西にある『ダイヤの里』と、南東にある『ダイヤの港』のちょうど中心にあった。
島民たちはこの『ダイヤの里』と『ダイヤの港』を合わせて、『ダイヤ村』と呼んでいる。
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*チサト:
おはよう、グローブ!
どこ行ってんのー!
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ちょうど家から出てきたチサトが、声をかけてきた。
ナギとナミに冷やかされた直後だったこともあり、グローブはわざと聞こえないふりをした。
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*チサト:
ちょっと、グローブ!?
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*グローブ:
おはよう……。
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グローブは気まずそうに視線をそらしたまま、挨拶を返した。
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*チサト:
ん、なんか怒ってる?
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*グローブ:
別に。
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*チサト:
ひょっとして……お父さんか、お母さんに何か言われた?
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グローブは一瞬だけチサトの顔を見て、慌てて視線をそらした。
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*チサト:
あ……分かった!
手を繋いで橋を渡った話でしょ?
もう……。
すぐ言うんだから。
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グローブはすぐ言うのはチサトだと思ったが、口にはしなかった。
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*グローブ:
違うよ……。
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*チサト:
ふーん……。
じゃあ、まあいいっか。
それで、今日はどこ行ってんの?
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*グローブ:
『ミルキークォーツの丘』だよ!
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*チサト:
ほら、やっぱ怒ってんじゃん。
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*グローブ:
怒ってないって。
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*チサト:
嬉しかったんだよ!
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*グローブ:
えっ……?
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*チサト:
……手つないだこと。
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グローブは時が止まったように固まった。
そんなグローブの反応を見て、チサトは満足そうに目を細めた。
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*チサト:
ふふっ。
私も一緒に行っちゃお。
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*グローブ:
別に……いいけど。
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――しゃん、しゃん、しゃん、しゃん……。
ガラスの鈴を振るような軽やかな音が響き、『ミルキークォーツの川』が近づいてきた。
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*グローブ:
こっちの川も、『ロッククリスタルの川』とまったく同じ音がするんだね。
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*チサト:
昨日も言ったけど……。
本当に不思議だよね。
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二人は橋の上で立ち止まり、欄干から身を乗り出すようにして川の流れを見つめた。
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*グローブ:
おばあちゃんが言ってた通り、こっちの川は蒼銀色だ……。
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*チサト:
本当、きれいだよね。
『ロッククリスタルの川』が黄金色で――
『ミルキークォーツの川』が蒼銀色だね。
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チサトがそう言いながら、ふと橋の向こうへ視線を巡らせると――
薄暗い霧の向こうで、何やら大きな影がゆらりと動いた気がした。
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*チサト:
……ねぇ。
それで、今日は橋、渡る時……。
手、つながなくてもいいの?
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グローブは何も言わず、少し照れくさそうに、そっと手を差し出した。
チサトがその手を嬉しそうにギュッと握りしめた。
――しゃん、しゃん、しゃん、しゃん……。
橋を渡ると黄金色の巨石群の中に巨大な乳牛が佇んでいた。
茶色の独特な毛並みを持ち、頭部には、立派な黄金色のツノを備えていた。
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*チサト:
うわっ、お、大きい……。
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*グローブ:
す、すごい。
これが《カウカーム》か……。
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――んもぉーぅ。
低く重たい鳴き声が、地響きのように足元に響いた。
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*チサト:
ねぇ……グローブ。
ここへ何しに来たんだっけ?
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*グローブ:
《カウカーム》のミルクを取りに来たんだよ。
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*チサト:
……これがその《カウカーム》よね?
どうやってミルクを取るのよ?
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*グローブ:
んー、どうしよう……。
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グローブが困り果てて、遠くを見渡すと、薄暗い霧の向こうに、牛舎のような建物の影が視界に入った。
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*グローブ:
あっちの方に建物が見えるよ。
行ってみない?
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*チサト:
そうだね。
あそこに行けば、誰かいるかもね。
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二人は《カウカーム》を刺激しないよう、ゆっくりとした足取りで建物へと向かった。
牛舎にたどり着いた二人は、入口から大きな声を張り上げた。
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*チサト:
こんにちは!
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*グローブ:
こんにちはー!
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*チサト:
……誰もいないのかな?
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――んもぉーぅ。
返ってきたのは《カウカーム》の鳴き声だけだった。
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*グローブ:
もう一回、呼んでみるね。
こんにちはー!!!
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――んもぉーぅ。
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*キュートな女性:
あれ~、誰か来たのかな~?
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おっとりとした可愛らしい声が響いた。
少し待っていると――
牛舎の奥から、柔らかな笑みを浮かべた、キュートな大人の女性が現れた。
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*グローブ:
こ、こんにちは!
はじめまして、グローブです!
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グローブは、勢いよく頭を下げた。
あまりに元気よく頭を下げるグローブを見て、チサトはジロリと横目を向けた。
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*チサト:
こんにちは。
チサトです。
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*キュートな女性:
は~い、こんにちは~。
何しに来たの~?
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*グローブ:
はい!
おばあちゃんにおつかいを頼まれて、《カウカーム》のミルクを取りに来たんです!
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グローブの調子の良さに、チサトはムッと頬を膨らませ、冷ややかなジト目を向けた。
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*チサト:
でもー。
《カウカーム》が大きすぎてー。
どうやって取ればいいか分からなくて困ったんだよねー。
……ねっ、グローブ?
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背筋に冷たいものが走り、グローブは引きつった笑顔のまま冷や汗を流した。
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*グローブ:
えっ、あ……う、うん!
そうなんです。
ボクたち困ってて……!
ははは……。
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*キュートな女性:
なるほど~。
そういうことね。
私は、ラテラって言うの。
よろしくね~。
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ラテラがそう言って優しく微笑んだ、その時だった。
――バターンッ!!
牛舎の奥から、激しい音が響き渡った。
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*チサト:
えっ!?
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――もぉーーーっ!!!
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*グローブ:
うわっ、なんだ!?
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一頭の小さな《カウカーム》の仔牛が、牛舎の外へ逃げ出してしまった。
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*ラテラ:
あら~、大変!
あの子、まだお外に出しちゃダメなのにぃ~。
迷子になって、風邪ひいちゃうよ~!
二人とも、お願い。
あの子を連れ戻して~!
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