↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
G【虹のシンフォニー】  作者: 左と右(SATOWU)マコト
第一章:止まない雨の島(全22話)001-022
PR
4/36

第004話:八色の羽根


第一章:止まない雨の島


―前回のあらすじ―


グローブとチサトは、『ロッククリスタルの谷』で《ヘンブレス》の群れと、ルアンに出会った。


そして卵を手に入れるため、グローブは壊れた巣を修復した。



『ロッククリスタルの谷』の帰り道――

《ヘンブレス》の卵を手に入れた二人の足取りは軽かった。


ようやく周囲が明るくなった頃、チサトは、まだグローブと手を繋いだままだったことに気づき、慌てて手を離した。


=

*チサト:

べ、別に怖かったわけじゃないからね!

=


チサトは照れ隠しのように、そう言い放った後、唇を少し尖らせて不満そうに呟いた。


=

*チサト:

そういえばルアンさん……。

さっき絶対、誤魔化したよね……。

大人って、みんな――

昔の話になると、はぐらかして、ちゃんと話してくれないよね。

=

*グローブ:

うん……。

昔の話、してくれないね。

=

*チサト:

……私は覚えてるんだよ。

まだ、雨が降り始める前のこと。

――青空に、白い雲、そして真っ赤な太陽。

でも、それだけ……。

=


そこで言葉を区切ると、チサトは小さく微笑んだ。


=

*チサト:

年下の子たちは、ずっと雨が降っていることが普通だと思ってるけど……。

それって、本当は普通じゃない。

=

*グローブ:

そう……だね。

でもボクも、ずっと、これが普通だと思ってた……。

=


グローブの言葉に、チサトはハッとして口元を押さえた。


記憶のない彼の心を、知らず知らずのうちに、傷つけたかもしれない、と。


=

*チサト:

あっ、なんか、ごめん。

ルアンさんの「あれ以来」が気になっちゃって。

……無神経だったかな?

=


チサトはグローブの顔を気まずそうに覗き込んだ。


グローブは小さく首を横に振り、安心させるように微笑んだ。


――しゃん、しゃん、しゃん、しゃん……。


ガラスの鈴を振るような軽やかな音が、次第に大きくなってきた。


=

*チサト:

あっ、もう『ロッククリスタルの川』だ。

帰り道って早いよね。

行く時は、あんなに遠く感じたのに……。

=

*グローブ:

うん、本当だね。

=


二人は橋の下に降りて、川の流れを見つめた。


=

*グローブ:

近くで見ると黄金色だ。

=

*チサト:

そうなの。

でもね、水をすくうと……。

ほら!

こんなに透明なんだよ。

=

*グローブ:

すごい……。

本当にきれいな水だね。

=

*チサト:

……ところでグローブは、この川の上流って、何があるか知ってる?

=

*グローブ:

えっ、そんなの簡単じゃん。

『オパールマウンテン』でしょ?

=

*チサト:

ふふっ。

半分アタリで、半分ハズレ!

あの山の麓に『アレキサンドライトの泉』って泉があるんだよ。

そこから、川が始まってるんだ。

=

*グローブ:

へぇー、そうだったんだ。

=


感心するグローブに、チサトはさらに少し声を潜めて、秘密を打ち明けるように言った。


=

*チサト:

その泉って、すごいんだよ。

水の色が変わるんだって――

昼は【緑】で、夜は【紫】に……。

=

*グローブ:

へぇ、詳しいんだね。

でも、それならなんで、この川の水は【緑】じゃないんだろう?

=

*チサト:

うーん……。

なんでだろう?

分かんない。

=


不思議そうに顔を見合わせた二人の間に、自然と笑みがこぼれた。


雨粒が川面を叩く音も、少しだけ楽しく聞こえた。


――しゃん、しゃん、しゃん、しゃん……。


それから二人は『ロッククリスタルの川』をあとにした。


=

*チサト:

あー、なんか今日はドキドキしちゃった。

二人だけで『ロッククリスタルの谷』に行ったんだもんね。

=

*グローブ:

うん。

でも、ルアンさんって不思議な人だったなぁ。

=


グローブがしみじみと言うと、チサトは少しジト目を向けてきた。


=

*チサト:

ふーん。

グローブは、ああいう、ちょっとクールで、ミステリアスな人が好きなんだ?

=

*グローブ:

い、いや、別にそんなんじゃないよ!

=


そんな他愛もない話をして、二人はそれぞれの家へと帰った。


=

*グローブ:

ただいまー。

=

*マリヤ:

おかえり。

どうだったかい?

=


グローブは少し言い訳っぽく、はにかみながら話した。


=

*グローブ:

本当は、一人で行くつもりだったんだけど……。

途中でチサトに会っちゃって……。

……だから、二人で一緒に行ったんだ。

=

*マリヤ:

そうかい、そうかい。

それじゃあ、安心だったね。

=


マリヤの優しい言葉に、グローブはホッとしたように笑顔を見せた。


=

*グローブ:

えっと、これ、《ヘンブレス》の卵。

ここに置いていい?

=

*マリヤ:

まあ、こんなにたくさん。

重かったでしょう。

=

*グローブ:

うん、でも大丈夫。

=


荷物を置いたグローブは、チサトから聞いた泉の話を思い出し、マリヤに尋ねてみた。


=

*グローブ:

ところで、おばあちゃん。

チサトが言ってたんだけど……。

『アレキサンドライトの泉』って昼と夜で色が変わるの?

=

*マリヤ:

ああ、そうだよ。

昼は【緑】で、夜は【紫】に、ね。

=

*グローブ:

じゃあ、なんで、『ロッククリスタルの川』の水は【緑】とか【紫】じゃなくて、黄金色なの?

=

*マリヤ:

まず、『アレキサンドライトの泉』だけど……。

あの泉の底は「グレーダイヤモンド」という特別な鉱石なのさ。

言い伝えでは、その鉱石が昼は光、夜は闇のエネルギーを感じとって、色を変えるんだよ。

=

*グローブ:

へぇ……泉の底の色だったんだね。

じゃあ、川は?

=

*マリヤ:

『ロッククリスタルの川』も同じで、鉱石の色が黄金色に見えるのさ。

ちなみに、西側にある『ミルキークォーツの川』は蒼銀色だよ。

=

*グローブ:

えっ、蒼銀色?

それって、『ロッククリスタルの谷』の竹の色と同じだよね?

=

*マリヤ:

ああ、そうだよ。

《ヘンブレス》のトサカの色も同じだっただろう?

=

*グローブ:

うん。

=

*マリヤ:

それなら、明日は『ミルキークォーツの丘』の方に行ってごらんよ。

『ロッククリスタルの川』が黄金色に見えるのと同じように――

《カウカーム》のツノも、あそこにある巨石も、黄金色なんだよ。

=

*グローブ:

へー。

行ってみようかな。

=

*マリヤ:

行っておいで。

……ついでに、《カウカーム》のミルクを取ってきておくれよ。

=

*グローブ:

うん、分かった。

行ってくるよ。

=

*マリヤ:

ちょうどミルクを切らしていてね。

明日、ナギさんに頼もうと思ってたところなんだ。

……卵もミルクも、これからはお前に任せられそうだね。

=


今日の遠出で少し自信がついたのか、グローブは軽く返事をした。


そしてその日の夜、グローブは夢を見た。


◇◇◇


――しゃん、しゃん、しゃん、しゃん……。


聞き覚えのある音が、どこか遠くで反響している。


気がつくとグローブは、行ったこともないはずの『アレキサンドライトの泉』のほとりに立っていた。


【緑】と【紫】に妖しく入れ替わる不思議な水面を、ただじっと見つめている。


すると水面がパッと白く光った。


眩い光の向こうに、大きな翼の影が浮かび上がる。


それが本当に見えたものなのか、それとも幻だったのか――

グローブには分からなかった。


上空を見上げると、目の前で何かが煌めく。


ヒラヒラと舞い落ちてきたのは、八色に輝く一枚の美しい羽根だった。


グローブはそっと両手を出して、それを受け止めた。


次の瞬間――


◇◇◇


ドサッ!


=

*グローブ:

いててて……。

=


あまりの衝撃に目が覚めると、グローブはベッドから床へと落ちていた。


=

*グローブ:

夢かぁ……。

何だったんだろう……今の夢?

=


少しだけ明るくなり始めた窓の外を、グローブは静かに見つめていた。


ぽつ……ぽつ……ぽつ……。


挿絵(By みてみん)


画像はイメージです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。