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G【虹のシンフォニー】  作者: 左と右(SATOWU)マコト
第一章:止まない雨の島(全22話)001-022
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第003話:蒼銀のトサカ


第一章:止まない雨の島


―前回のあらすじ―


グローブは、祖母のマリヤから『ロッククリスタルの谷』へ行き、《ヘンブレス》の卵を取ってくるように言われた。


幼なじみのチサトとともに『ロッククリスタルの川』を渡り、初めて川の向こう側へと足を踏み入れた。



グローブとチサトが橋を渡った頃――

自宅ではマリヤが一人、物置の奥を必死に探していた。


=

*マリヤ:

たしか、この辺りに仕舞い込んでいたはずだけど……。

=


やがてマリヤは、古びた一冊のノートを見つけ出した。


その表紙には、一人の男の名が記されていた。


――ジェンド。


その名前を目にした瞬間、マリヤは少し寂しげな表情を浮かべた。


それは、ある研究のノートだった。


この世界の「罪悪」を消し去り、世界に調和をもたらす《神秘のマナ》を生み出す方法。


そしてそのマナを紡ぎ出すために必要な――

『グレーダイヤモンド島』に眠る七つの素材が記されていた。


一、《ヘンブレス》の卵――

『ロッククリスタルの谷』。


二、《カウカーム》のミルク――

『ミルキークォーツの丘』。


三、《エンジェルティア》(岩塩)――

『ダイヤモンドビーチ』。


四、《トラベリー》(海藻)――

『ジェット湾』。


五、《スウィートウィート》(小麦)――

『オパールマウンテン』山頂。


六、《ハルモニアの水》――

『アレキサンドライトの泉』。


七、《エデンの実》――

『ガイアの木』。


マリヤは、並んだ文字を一つずつ指でなぞるように読み上げていく。


一通り素材を確認すると、マリヤは部屋の隅に据えられた、不思議な窯を見つめた。


=

*マリヤ:

人が人を思いやる。

その優しさが人から人へと繋がり、大きな輪になる。

そしてその輪は、また誰かへと受け継がれていく。

それが世界を調和へと導く《神秘のマナ》……か。

=


マリヤはそっとノートを閉じ、目を閉じた。


◇ ◇ ◇


――しゃん、しゃん、しゃん、しゃん……。


橋を渡った先にある『ロッククリスタルの谷』は、昼間だというのにまるで夜のように薄暗い。


その谷一帯には、空を突き刺すように無数の蒼銀色の竹が立ち並び、深い竹林を形作っていた。


=

*チサト:

ねぇ、グローブ……。

本当にこっちで合ってる?

なんだか、どんどん暗くなってるけど?

=


チサトはグローブの手を握りしめたまま、周囲をキョロキョロと見回している。


強がってはいるものの、その声は完全に震えていた。


=

*グローブ:

う、うん……。

おばあちゃんが「東の果て」って言ったから、方向は合ってると思うんだけど……。

=


化け物はいないと、ナギは言っていたが……。


――カサカサッ!


突然、近くの草むらから乾いた音が響いた。


=

*チサト:

きゃっ!?

=

*グローブ:

うわっ!?

=


二人は飛び上がるように驚いた。


チサトをかばうように前に出たグローブは、低く身構え、鋭く視線を走らせた。


=

*グローブ:

んっ……あれ?

ニワトリ……?

=


その羽毛は神秘的な紺色に染まり、蒼銀色のトサカはランタンのように淡い光を宿していた。


=

*チサト:

わぁ……きれい……。

ねぇ、グローブ。

この子、頭が光ってるよ?

=


チサトは恐怖も忘れ、目を輝かせながら、不思議な雌鶏を見つめた。


グローブはハッと目を見開く。


=

*グローブ:

チサト……。

たぶんこれが《ヘンブレス》だよ。

=


《ヘンブレス》は二人を警戒する様子もなく、「クック、クック」と小さく鳴いた。


まるで「ようこそ、ここへ」と言うように、くるりと向きを変えて歩き出した。


=

*グローブ:

チサト、あの子、呼んでるみたいだ。

ついて行こう。

=

*チサト:

うん、見失わないようにしなきゃね!

=


淡い光を放ちながら進む《ヘンブレス》。


そのあとを、二人は追いかけた。


やがて――

前方がだんだん明るくなってきた。


=

*チサト:

うわぁ……見て、グローブ!

あっちにも、こっちにもいるよ!

=


次から次へと、《ヘンブレス》たちが姿を現した。


数十の蒼銀色のトサカが、闇の中で一斉にまたたき、まるで地上の星空のように、広場を照らし出した。


=

*グローブ:

す、すごい数だ……。

こんな場所が、島にあったなんて……。

=


圧倒される二人の視線が、霧の向こうにぽつんと佇む、一軒の小屋を捉えた。


=

*チサト:

ねぇ、あそこに小屋があるよ!

=

*グローブ:

もしかすると、おばあちゃんが言ってたルアンさんの家かも。

=


クック、クック。


クック、クック。


クック、クック。


無数の鳴き声が響き渡った、その時――

――ガチャリ。


小屋のドアが開いた。


=

*クールな女性:

誰……?

誰か来たの?

=


涼やかで落ち着いた大人の女性の声がした。


待っていたかのように《ヘンブレス》たちが、一斉にドアの方へと寄って行く。


蒼銀色の光の中から現れたのは――

長い髪のクールな女性だった。


=

*チサト:

あっ、こんにちは!

チサトと言います。

=


チサトが元気よく挨拶をした。


=

*グローブ:

こ、こんにちは。

グローブです。

=


チサトに続けて、グローブも少し緊張しながら頭を下げた。


=

*クールな女性:

こんな場所に、何の用?

=

*グローブ:

えっと……。

おばあちゃんのおつかいで、来たんです。

ルアンさんですか?

=

*クールな女性:

ええ、そうよ。

私がルアン。

ここで、この《ヘンブレス》たちの世話をしているの。

=

*グローブ:

あの……ルアンさん。

ボクたち《ヘンブレス》の卵をもらいに来たんです。

=


ルアンはグローブをじっと見つめると、感情の読み取れない瞳のまま、首を横に振った。


=

*ルアン:

……ダメよ。

=

*グローブ:

えっ……?

=


ルアンの冷たい一言に、二人は顔を見合わせた。


=

*チサト:

グローブの頼み方が、まずかったんじゃない?

=

*グローブ:

……頼み方……?

=


そんな二人の様子を見て、ルアンの口元が、ほんの少しだけ緩んだ。


=

*ルアン:

ふふっ……ウソ。

冗談よ。

=


その表情は、先ほどまでの冷たい印象とは打って変わって、どこか温かみに満ちていた。


=

*チサト:

えっ!?

ウソ?

冗談って、卵を分けてくれるんですか?

=

*ルアン:

ええ。

ただし、私の頼みを聞いてくれたら、ね。

=


ルアンはそう言うと、小屋の脇に積まれた、使い古されたツタの巣を指さした。


=

*ルアン:

あそこにある壊れた巣を、きれいに編み直してくれたら、ご褒美に卵をあげるわ。

=

*チサト:

ええーっ!?

いくらグローブが器用でも、あんなにボロボロなのは、絶対に無理だよ……!

=

*グローブ:

大丈夫だよ、チサト。

ボクに任せて。

=


グローブは壊れたツタの巣の前にしゃがみ込み、そっと手に取った。


壊れた巣をじっと見つめる。


次の瞬間――

グローブの表情が変わった。


瞳の奥に、完成した巣の姿が浮かび上がる。


一本、また一本とツタを編み込んでいく。


崩れていた巣は、少しずつ本来の姿を取り戻していった。


=

*ルアン:

ふーん。

なかなかやるわね。

=


グローブが最後のツタを結び合わせた。


そして――

不思議な波長を巣に記憶させた。


=

*グローブ:

ふぅ……。

できた。

ルアンさん、これでどうですか?

=


ルアンは完成した巣を見て、満足そうに微笑んだ。


=

*ルアン:

ええ、素晴らしいわ。

まさかこれほど見事に直してしまうなんて……。

本当に驚いたわ。

……約束の卵はこっちよ。

=


そう言うとルアンは、小屋の奥の部屋を案内してくれた。


そこには純白の《ヘンブレス》の卵が綺麗に並べられていた。


=

*チサト:

うわー、すごい!

=

*グローブ:

でも……この卵……。

家でも見たことあるような気がするけど……。

=

*ルアン:

まあ、そうでしょうね。

この島の人たちは、ここまでこの卵を取りに来てるのよ。

本当はタダであげてるの。

=

*グローブ:

えっ!?

=

*ルアン:

ふふっ、あなたが器用そうだったから。

巣を直してもらおうと思って……。

ごめんなさいね。

だから今日は、好きなだけ、持っていっていいわよ。

=


二人が慎重に卵をカゴに詰めていると――

ルアンがぽつりと呟いた。


=

*ルアン:

……あれ以来、ずっと雨が止まないから……。

もともと薄暗いこの場所が、本当に暗くなったのよね。

=


その言葉に、チサトが敏感に反応して、顔を上げた。


=

*チサト:

あれ以来?

=

*ルアン:

ああ……なんでもないわ。

ただの独り言。

……それより、日が落ちると本当に何も見えなくなるのよ。

だから暗くなる前に、早く帰った方がいいわ。

=


どこか話を打ち切るような調子で、ルアンは帰り道を指さした。


卵を詰め終えた二人は、ルアンに感謝を伝えて、小屋を後にした。


やがて二人の姿は深い霧の向こうへと消えていった。


=

*ルアン:

……あの器用さは……。

やっぱり。

=


一羽の《ヘンブレス》がルアンの肩へ飛んできた。


=

*ルアン:

マリヤ……。

あの子なら、大丈夫。

あれだけ優しい手を持つ子なら……。

きっと。

=


クック、クック。


挿絵(By みてみん)


画像はイメージです。

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