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G【虹のシンフォニー】  作者: 左と右(SATOWU)マコト
第二章:自由の国ルビスタン(全16話)030-045
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第035話:安心ほっとケーキ


第二章:自由の国ルビスタン


―前回のあらすじ―


ロズドンにゴミ問題の解決を訴えたグローブだったが、物の消費によって成り立つ街の現実を突きつけられ、自分の理想の難しさを知った。


複雑な思いを抱えながらも「滞在許可証」を手にした彼は、『天球の灯台』を後にした。



グローブはロズドンに言われた言葉が頭から離れず、うつむいたまま歩いていた。


=

*ダン:

おい、グローブ!

いつまでも落ち込んでんじゃねえよ。

お前の考えが、間違ってるってわけじゃねえから……。

だけどよ……。

=


ダンがグローブの肩を叩こうとした時――

雑踏の隙間から、小さな影が猛スピードで飛び出してきた。


――タッ!!


=

*グローブ:

あっ……!?

=


すれ違いざま、グローブの手にあった「滞在許可証」が、一瞬でひったくられた。


驚いて顔を上げると、自分よりも小さな男の子が、「滞在許可証」を握りしめて、路地の奥へと走っていくのが見えた。


その少年の髪は、ブラウンだった。


=

*グローブ:

あっ、ちょっ……!

待って!

=

*ダン:

チッ、やられたか。

=


グローブは少年の影を追いかけた。


=

*グローブ:

ブラウンの髪の子供なのに……。

なぜ?

=


路地の奥へとたどり着いたグローブの目に飛び込んできたのは――

表の華やかさとは別のものだった。


=

*グローブ:

……ここにいる人たちって、いったい……。

=


そこは、雨を避けるための粗末な庇があるだけの場所だった。


その中にグローブの「滞在許可証」を、胸に抱えている少年がいた。


=

*少年:

何だよ、お前。

何しに来たんだ!?

=

*グローブ:

それ、ボクの「滞在許可証」だよね?

=

*少年:

うるさい!

こっちに来んな!

帰れよ。

=

*グローブ:

何でこんなことするの?

=

*少年:

この「滞在許可証」を売れば、パンが買えるんだよ。

みんなのパンが!

=


少年の言葉に、グローブは改めて周囲を見渡した。


身につけている服は綺麗なものばかりだけど、みんな痩せ細っていた。


=

*少年:

服やカバンなんかは、ゴミ捨て場にいくらでもあるけど……。

だけど……。

食い物は腐った残飯しか、ねえんだよ!

=


その時、グローブはロズドンのことを思い出していた。


この街は、物を大切にしないけど――

その代わりに不幸な人がいないのだと思っていた。


しかし――

目の前にいる人たちは、お腹を空かせて、人の物を盗んだ。


物を大切にしないうえに、不幸な人もいる――

グローブは、また分からなくなっていた。


その時――

――ガタガタガタガタ。


黒い煙を上げている壊れかけの調理器具が、グローブの目に飛び込んできた。


=

*グローブ:

ねぇ、あれ壊れかけてるよ。

修理しないと……。

=

*少年:

修理……修理ってなんだよ?

そんなことできるのか?

=

*グローブ:

ちょっとだけ、借りていい?

=

*少年:

ちょっと、勝手に触んなって……。

=


少年の制止よりも早く、グローブの指先が動いた。


流れるような動きで、ウエストバッグから工具を取り出し、瞬く間に修理していく。


=

*グローブ:

ふぅ。

=


あっという間の出来事だった。


=

*少年:

な、なんなんだよ、お前……!

何したんだよ。

=


調理器具は、静かな駆動音を響かせながら動き始めた。


=

*少年:

動いてるのか?

これ?

お前……壊したんじゃないのか?

=


少年が調理器具に触れると――


=

*少年:

熱ーっ……あっちー。

触ったら、ちょっと火傷しちゃったよ。

でも、ちゃんと動いてる……。

しかも……熱くなるのも、前より早くなってるぞ。

=


周りにいた大人たちからも、信じられないものを見るような驚きのどよめきが湧き起こった。


=

*グローブ:

これが「修理」だよ。

こうやって仕組みを覚えれば、次からは自分たちで直して、ずっと使い続けられるんだ。

ちょっと見てて、コツを教えるから。

=


グローブはウエストバッグから一番シンプルなレンチを一本取り出した。


そしてそれを、少年の手に握らせた。


=

*グローブ:

ここが緩んだら、こうやって締めるんだ。

壊れたら、また直せばいいんだよ。

=

*少年:

壊れたら……また、直せばいい……?

=


買えないからと諦めて、飢えて、盗むしかなかった少年。


少年は握らされたレンチを見つめた。


その瞳には、先ほどまでなかった光が宿っていた。


グローブは優しく微笑むと、ウエストバッグの中から、マリヤが持たせてくれた《安心ほっとケーキ》を取り出した。


=

*グローブ:

これ、ボクのおばあちゃんが作ったパンケーキなんだ。

みんなで分けて食べて。

=


グローブは《安心ほっとケーキ》を少年の手にそっと乗せた。


その瞬間――

少年は大粒の涙をこぼし始めた。


=

*少年:

うぅ……う、うわぁぁぁんっ!

ありがとう……!

ご、ごめんなさい。

本当は泥棒なんて、したくないんだ。

=


少年は涙を拭いながら、胸に抱きしめていた「滞在許可証」を、グローブへと返した。


=

*ダン:

ふっ……まったく、大した小僧だ。

=


遅れてたどり着いたダンが、渋い笑みを浮かべた。


=

*グローブ:

あっ、ダンさん……。

ボク、ロズドンさんの話を聞いて――

物を大量に消費すれば、不幸な人なんていない街だと思っていました。

でも、それは違いました。

だから、ちょっといいですか……。

=


挿絵(By みてみん)


画像はイメージです。

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