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G【虹のシンフォニー】  作者: 左と右(SATOWU)マコト
第二章:自由の国ルビスタン(全16話)030-045
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第036話:はじまりの旗


第二章:自由の国ルビスタン


―前回のあらすじ―


盗まれた「滞在許可証」を追い、路地裏で飢える人々を目にしたグローブ。


壊れた調理器具を直し、少年に一本のレンチとパンケーキを手渡した。



グローブとダンは、路地を出たところにいた。


=

*グローブ:

ダンさん……ボク、いいこと思いついたんです。

=

*ダン:

……いいこと?

=

*グローブ:

うん。

ここにいる人たちに、二つのことを始めてもらいたいと思っています。

=

*ダン:

二つのことだと?

=

*グローブ:

はい……。

一つは「リサイクルショップ」。

表通りに「壊れたものは捨てずに売れます!」って書いた大きな旗を立てるんだ。

みんなが捨てる前に、ここに持ってきてくれれば、街のゴミも減らせるはずだよ。

=

*ダン:

ほう。

捨てる前のヤツを呼び込んで、その場で買い取るサービスか。

……それで、もう一つは?

=

*グローブ:

もう一つは、《モーレツパスタ》の屋台をやろうと思うんだ。

さっき直した調理器具を使えば、美味しいパスタをたくさん作れるから……。

=

*ダン:

うーん、なるほどな……。

気持ちは分かるがな、グローブ。

買い取る金や、パスタの麺や材料を買う金はどこから出すんだ?

ここにいる連中は、一銭も持ってねえぞ。

=

*グローブ:

それなら、大丈夫。

島を出る時におばあちゃんから《トラベリーチョコ》を持たせてもらったから……。

これ、お金になるんでしょ?

=


グローブがウエストバッグから《トラベリーチョコ》を取り出した。


=

*ダン:

おいおい、マジかよ。

お前……懐かしいもん、持ってんじゃねえか……。

でもお前、これの価値、知ってんのか?

=

*グローブ:

えっと……実はあまり分かってないんだ。

=


ダンは苦笑いした。


=

*ダン:

まあ……これだけありゃあ、買取費用も材料代も十分すぎるくらいだ。

だが、そいつは今じゃなかなか手に入らないもんだぜ。

本当にいいのか?

=

*グローブ:

うん。

=


グローブは即答した。


=

*ダン:

そうか……分かったよ。

それなら、デカい旗に使う布と工具も、ぜんぶ揃えてきてやるよ。

=


ダンは頼もしく笑うと、大通りへと向かった。


グローブは路地裏へ戻り、少年や大人たちを集めた。


=

*グローブ:

みんな……ちょっといい!

これから「リサイクルショップ」と「パスタ屋さん」を始めます。

=

*少年:

えーっ……!?

俺たちにそんなことできるの?

=


突然のグローブの言葉に、周りにいた大人たちも、不安そうに顔を見合わせた。


=

*大人の男性:

……修理は確かに凄かった。

でも商売なんて、俺たちにできるのか?

もし誰も来なかったら……。

=

*大人の女性:

また失敗して、嫌な気持ちになるだけじゃないの……?

=

*グローブ:

最初からうまくいくかは、ボクにも分かりません。

でも壊れたものと同じで、失敗しても直せばいいと思うんです。

諦めて何もしなければ、明日も今日と同じです。

盗みを続けるしかない毎日になってしまいます。

だからボクは、泥棒なんてしなくても、自分たちの力でパンを食べられる仕組みを作りたいんです。

=


少年は手の中のレンチを強く握りしめた。


=

*少年:

……俺、やりたい!

自分たちの力でパンを食べられるようになりたい……。

=


少年の叫びを聞いた大人たちも、静かに頷いた。


=

*大人の男性:

……アイツの言う通りだな。

俺は失敗することばかり考えるようになってたのかもな。

……やってみるか。

=

*大人の女性:

そうよね。

失敗しても、またやり直せばいいのよね……。

私は失敗することが恥だと思って、何も始められなかったのかもしれない。

弱気じゃダメよね。

……私も変わらなきゃ……。

=


――ガラガラガラガラ……。


=

*ダン:

よう!

みんなもやるって、言ってくれたか?

どうだ、グローブ?

=


ダンが台車に大量の小麦粉やミルク、卵、そして真っ白な大布を二枚積んで戻ってきた。


=

*グローブ:

ダンさん、ありがとう!

みんなもダンさんの帰りを待ってたんだよ。

さっそく準備をしよう!

=


それを合図に、人々は一斉に動き始めた。


グローブが少年の手を取って屋台を組み立て、大人たちは真っ白な大布に、大きく文字を書き込んだ。


それぞれが今、自分にできることを一生懸命にやっていた。


――壊れたものは捨てずに売れます!


――絶品!モーレツパスタ!


スラムの人々の願いを乗せた旗が、ついに完成した。


=

*グローブ:

よし、できた!

明日からお客さんを迎えるんだから、みんなで身だしなみを整えよう。

まずはみんな、お風呂に入りに行くよ!

=


そして翌朝――

みんなの手で作り上げた大きな旗が、スラムの入口に誇らしげに掲げられていた。


《モーレツパスタ》の香ばしい匂いが、周辺に広がり始めた。


しかし――

開店してしばらく経っても、客は一人も来なかった。


少年は不安そうに通りを見つめていた。


=

*少年:

……やっぱり、誰も来ないのかな。

=

*グローブ:

よし……呼び込み、しよう。

暗い店には、誰も来ないよ。

=


グローブと少年は、慣れないながらも、大きな声でお店の紹介をした。


やがて――

グローブたちの想いを込めた声と、パスタの香ばしい匂いに誘われた客が、一人近づいてきた。


=

*客:

いい匂いね……。

=

*大人の男性:

い、いらっしゃい!

=

*客:

……モーレツ……パスタ?

面白い名前ね。

一つ頂ける?

=

*大人の女性:

も、もちろんです!

ありがとうございます!

=


パスタを注文した客が、リサイクルの旗に視線を移した。


=

*客:

んっ……壊れたものは捨てずに売れます……?

壊れた物を買ってくれるの?

=

*少年:

は、はい……!

=

*客:

今度、持ってこようかしら……。

=


客はそう言うと、モーレツパスタを手に、その場を後にした。


=

*少年:

今の人……。

本当に来てくれるかな……。

=

*グローブ:

うん。

大丈夫、必ず来るよ。

捨てるより、売る方がいいからね。

=

*少年:

俺……。

本当に、ちゃんと直せるかな……。

=

*グローブ:

うん。

大丈夫、ボクが教えるから。

自信をもって!

=

*少年:

うん!

=

*グローブ:

でも、よかった……。

お客さん、来てくれて。

=


グローブは、スラムの入口に掲げられた二つの旗を見上げた。


=

*グローブ:

よし……。

ここからだね。

=


二つの旗が、青空の下で大きく揺れていた。


挿絵(By みてみん)


画像はイメージです。

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