第034話:天球の灯台
第二章:自由の国ルビスタン
―前回のあらすじ―
《虹の鏡》から不思議なピアスを得たグローブは、ダンの孫娘がいる『ルビスタン連合国』の首都『カーネリアン富豪区』へ向かうことになった。
ブラウンの髪だけしか住めない街の「滞在許可証」を求め、『ガーネットハブポート』の理事長に会うことにした。
翌日――
グローブとダンはロズドンに会うため、『天球の灯台』と呼ばれる高層ビルへと向かっていた。
ダンの後ろをついて行き、最上階へと案内されたグローブは、その豪華絢爛な内装に圧倒された。
高級感あふれるソファーに深く腰掛け、不敵な笑みを浮かべている男が――
この街の理事長、ロズドンだ。
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*ロズドン:
おや……これは驚いた。
まさか「火竜の豪傑」と呼ばれた伝説の英雄ダン殿が、わざわざ足を運んでくださるとは。
急用でも?
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*ダン:
堅苦しい挨拶は抜きだ、ロズドン。
コイツは俺様の連れのグローブだ。
それで「滞在許可証」を、一枚だけもらいにきたんだけどよ。
いいか?
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ロズドンは、ダンの言葉に目を細めると、値踏みするような視線をグローブへと向けた。
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*ロズドン:
ふむ……。
許可証一枚、出すのは簡単ですが、基本的な質問だけはさせてください。
グローブくんと言いましたね。
君は『カーネリアン富豪区』へ何をしに行くんですか?
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グローブは少し考えた。
『オパールマウンテン』で聞こえた声を含めて、すべての話をするべきか。
祖母からの依頼だけをするべきか。
それとも、チサトとの約束を話すべきか。
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*グローブ:
はい、ボクは……。
ボクの故郷、『グレーダイヤモンド島』の雨を止めるための旅をしています。
今は『メロディア島』を目指してます。
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*ロズドン:
……なるほど。
『カーネリアン富豪区』へは、旅の経由地として立ち寄るためですね。
分かりました。
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ロズドンが「滞在許可証」を発行しようとした、その時だった。
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*グローブ:
あの……ロズドンさん。
ちょっといいですか?
この街のことで、どうしても提案したいことがあるんです!
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*ダン:
ん?
どうしたグローブ?
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ダンが怪訝そうに眉をひそめるのも構わず、グローブは真っ直ぐな瞳でロズドンを見つめた。
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*グローブ:
昨日……街のゴミ捨て場を見たら、まだ使える衣類やおもちゃが、たくさん捨てられていました。
ボクならあれを全部、きれいに直せます!
だから、壊れたものを修理して、みんなで大切に再利用する仕組みを作ってください!
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グローブの必死の訴えを聞いたロズドンは、一瞬の静寂の後、頷きながら笑い出した。
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*ロズドン:
ははは!
面白い提案だ、グローブくん。
だが、そんな貧乏くさい真似。
この貿易都市で、誰が喜ぶと言うんだ?
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*グローブ:
えっ……?
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感謝されると信じていた提案を一蹴され、逆に「誰が喜ぶのか」と聞き返されたグローブ。
だが、その問いに答える言葉を、グローブは持っていなかった。
ロズドンはソファーから立ち上がると、窓の外に広がる街並みを見下ろした。
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*ロズドン:
物が壊れたら新しい物を買う。
だからこそ、世界中から新しい物が、次から次へと輸入される。
そしてそれを、港の作業員が運び、商人たちが店で売る。
多くの人が壊れたものを修理して使うようになれば、港で働く大勢の労働者はどうなる?
物を運ぶ作業員や、商人たちはどうやって生活するんだ?
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グローブは初めて知った。
この豊かな街は、物を消費する人々だけでなく、それを運び、売り、生計を立てる大勢の人々によって支えられているのだと。
自分の提案なら、この街をもっと良くできると思っていた。
だが、それによって仕事を失う人がいるかもしれない。
そう考えた途端、グローブはただ拳を握りしめることしかできなかった。
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*ロズドン:
この国は自由だ。
だから、グローブくん。
余計なことをするなとは言わない。
だが、私も君を手伝うことはない。
分かりますね?
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ロズドンは勝ち誇ったように笑った。
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*ダン:
おい、ロズドン。
……俺様をあまり待たせるなよ?
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それまで黙ってやり取りを見ていたダンが、低く、地響きのような声で割り込んだ。
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*ロズドン:
おっと……失礼いたしました。
……ダン殿、そんな怖い顔をしないでください。
私はただ、この街の現実を彼に少しでも分かってもらえればと思い、お話しただけですよ。
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ロズドンは小さく息を吐くと、一瞬だけ浮かんだ冷や汗を拭った。
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*ロズドン:
はい、どうぞ。
これが首都『カーネリアン富豪区』への「滞在許可証」です。
本来ならお金を頂くところですが……。
伝説の英雄ダン殿から取るわけにはいきませんので。
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ロズドンは「滞在許可証」をダンへと手渡した。
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*ダン:
話が早くて助かる。
行くぞ、グローブ。
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ダンは未だにショックから立ち直れずにいるグローブの肩を叩き、「滞在許可証」を手渡すと、そのまま部屋を後にした。
グローブは何も言えなかった。
自分の提案なら、この街をもっと良くできると思っていた。
ゴミを直せば、必ず喜ばれる――
そう信じていた。
だけど、それによって仕事を失う人がいるかもしれない。
働いている人のことまでは考えていなかった。
だからといって、あのゴミの山が正しいとも思えなかった。
物を大切にすることと、人々の暮らしを守ること。
その両方をかなえる道は、本当に存在しないのだろうか――
グローブの頭と心の中は、ざわついたままだった。




