第033話:五つのピアス
第二章:自由の国ルビスタン
―前回のあらすじ―
『ガーネットハブポート』に到着したグローブは、物の豊かさに驚いた。
捨てられそうになった少女のオモチャを見事に修理した彼の背後から、不意に渋い声が響いた。
グローブが振り返ると、先ほどのグレーの髪の老人が、路地の壁に背を預けて立っていた。
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*グレーの髪の老人:
見ず知らずのガキのために、そこまで真剣になれるお人好しっぷりに……その手つき。
しっかり見させてもらったぜ。
さっき声をかけられた時、その胸の《虹のオーブ》と背中の聖剣を見て、すぐにピンときてたが――
お前が、マリヤの孫だな。
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*グローブ:
えっ!?
おばあちゃんの知り合い?
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*グレーの髪の老人:
ああ、実はな……。
イカリヤの野郎から「マリヤの孫が近々、こっちに来る」と連絡が入っててな。
探してたんだけどよ。
声をかけられた時、お前がどんなヤツか知りたくなって……。
黙って後ろから見させてもらったのさ。
まさか、他人の壊れたオモチャを必死に直し始めるとは思わなかったがな。
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*グローブ:
イカリヤさんから……?
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*グレーの髪の老人:
ああ。
それより、その《虹のオーブ》、見てたら――
なんか、懐かしくなっちまったな……。
よし、ちょっとついてこい。
すぐそこだから。
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*グローブ:
えっ、どこへ!?
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訳が分からないまま雑踏を抜け、連れてこられたのは、その老人の家だった。
そこは何かの工房のようだった。
そして案内された部屋には、美しい八色の輝きを放つ鏡が静かに飾られていた。
その鏡は、誰も触れていないにもかかわらず、表面に波紋のような光を浮かべていた。
グローブが一歩近づくと、その光はまるで彼を待ち受けていたかのように強く輝き始めた。
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*グレーの髪の老人:
これは、《虹の鏡》……。
いわゆる神器ってヤツだ。
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鏡の奥から、何かに呼びかけられているような、不思議な感覚がした。
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*グローブ:
な、なんだろう……。
この感じ!?
す、すみません。
足が勝手に……。
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グローブは吸い寄せられるように鏡の前へ立った。
その瞬間――
グローブの左胸の紋章、《コードリンク》の光晶が、八色の輝きを放った。
その光は一直線に伸び、《虹の鏡》へと吸い込まれていった。
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*グローブ:
えっ!
な、何これ!?
=
次の瞬間――
眩い光の中から、五つのピアスがゆっくりと姿を現した。
赤、緑、青、紫、白。
=
*グレーの髪の老人:
おいおい、どうしちまったんだ?
……なんか出てきたぞ。
=
グローブは無意識のうちに、白いピアスを手に取り、左耳につけていた。
◇◇◇
=
*???:
そのピアスを身につけている者同士なら、どんなに離れていても会話ができます。
相手に伝えたい時にピアスに触れるのです。
その他の四つのピアスを、これから出会う仲間へ渡しなさい。
=
*グローブ:
会話……?
仲間に渡す……?
=
◇◇◇
=
*グレーの髪の老人:
おい、お前……大丈夫か?
ボケっとしてるけど……。
=
*グローブ:
あっ……は、はい。
=
*グレーの髪の老人:
そういえば、名前をまだ言ってなかったな。
俺様はダンだ。
なんか、とんでもねえことが起きちまったな。
お前の名前は?
=
*グローブ:
あ……はい、グローブです。
=
*ダン:
じゃあ、グローブ。
お前の胸の紋章が光って、ピアスが出てきたけど……何が起きたんだ?
=
*グローブ:
不思議な声が、このピアスを「仲間に渡せ」って言ってました。
=
グローブは手のひらに乗せた四つのピアスをダンに見せた。
ダンは顎をさすりながら、それを見つめていた。
=
*ダン:
そうか……。
この《虹の鏡》は、俺様がずっと預かってきたんだが――
こんなことが起きたのは初めてだ。
=
それからダンは、視線をグローブの背中に移した。
=
*ダン:
お前のその聖剣……。
『オパールマウンテン』のヤツだろう?
俺様も抜けなかったんだぜ。
=
ダンは懐かしそうに《カリバーン》を見つめた。
=
*ダン:
なあ、グローブ。
俺様の孫娘が『カーネリアン富豪区』にいるんだが……。
もしかすると、お前が今言った「仲間」かもしれねえな。
会ってみろよ。
俺様も昔、お前の爺さんと婆さんと一緒に旅をした仲間だったんだぜ。
=
*グローブ:
えっ、旅?
仲間?
=
*ダン:
ああ、そうだ。
お前が持っている、その笛とこの鏡を集める旅とかな。
=
ダンは、グローブの腰に差さった《虹の笛》と《虹の鏡》を順番に指さした。
突然現れた五つのピアス。
脳裏に響いた声。
神器。
そして「仲間」という言葉。
あまりにも多くの出来事が一度に押し寄せ、グローブの頭は混乱していた。
=
*ダン:
その『カーネリアン富豪区』ってのは、この『ルビスタン連合国』の首都だ。
ブラウンの髪を持つ連中しか暮らせねえ、特別な街なんだぜ。
それ以外の髪のヤツは中に入るだけでも、「滞在許可証」がいるんだ。
=
*グローブ:
髪の色が違うだけで、街に入るのに許可が必要なの……?
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*ダン:
ああ、そうだぜ。
この街を治めている理事長のロズドンがいる『天球の灯台』って場所で、「滞在許可証」を発行してもらうんだけどよ――
滞在できる期間は、7日間だけだ。
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*グローブ:
7日過ぎたら、どうなっちゃうの?
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*ダン:
街の外に放り出されるんだよ。
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*グローブ:
街の外って……魔物がいるんでしょ?
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*ダン:
まあな……。
だからみんな、滞在期間が過ぎないように気をつけてるんだよ。
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*グローブ:
そうなると、またこの街に戻って許可証をもらうってこと?
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*ダン:
そうだな。
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*グローブ:
でも、許可証もお金がかかるんでしょ?
=
*ダン:
まあな。
それだけのメリットがあるんだろうよ。
あそこは金持ちの街だからな。
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グローブは怪訝な顔をした。
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*ダン:
だけど、今回は安心しろ……グローブ。
俺様はこの街じゃ、ちょっとした有名人でな。
「滞在許可証」くらいは簡単に手に入るよ。
理事長のロズドンのところまで、一緒に行ってやるから心配すんな。
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理事長に会えると聞いたグローブは、先ほど目にした「まだ使えるゴミ」のことを思い出した。
◇
*グローブ:
そうだ!
この街で、一番偉いロズドンさんに会えるなら――
あのゴミや食べ残しの話をしてみよう。
◇




