第031話:五つの色
第二章:自由の国ルビスタン
―前回のあらすじ―
グローブは『ジュエリオ島』へ向かう船の中で、出発前夜に交わしたチサトとの約束を思い出した。
デッキに出た彼の目の前には、『オパールマウンテン』でしか見ることができなかった青空が広がっていた。
ヴォォォォォーー。
船から響き渡る汽笛の音。
ぼんやり地平線を眺めていたグローブに、不意に誰かが声をかけてきた。
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*男性:
オイッスー!
もういっちょ、オイッスー!
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*グローブ:
うわっ……!?
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その声にグローブは、驚いて振り返った。
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*男性:
グローブ、どうした?
そんなにおっかない顔して……。
船酔いでもしたのか?
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*グローブ:
あっ、イカリヤさん。
いえ……大丈夫です。
ただ、島の外に出るのが、生まれて初めてなので……。
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声をかけてきたのは、船長のイカリヤだった。
イカリヤは、グローブの背中の聖剣に目を留めた。
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*イカリヤ:
おい、グローブ。
マリヤの婆さんから、大陸に旅立つとは聞いてたが……。
お前さんが背負ってるその聖剣、どうしたんだ?
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*グローブ:
あっ、これは……預かりものなんです。
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*イカリヤ:
ほお……預かりものねえ。
だけどよ……そりゃあエルヴィスが持ってたもんだぜ。
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*グローブ:
えっ!?
エルヴィス……さん?
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イカリヤは一瞬、気まずそうに視線をそらした。
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*イカリヤ:
あ……いや、何でもねえ。
悪りぃ、悪りぃ。
勘違いだ。
忘れてくれ。
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それからイカリヤは、慌てて話題を変えた。
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*イカリヤ:
それより『ジュエリオ島』に着いたら、ビックリするぜぇ。
なんたって、あっちの奴らは髪の色が違うからな。
まだお前さんは、このグレーの髪しか見たことないだろう?
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イカリヤが自分の髪を触りながら言うと、グローブはコクリと小さく頷いた。
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*イカリヤ:
髪の色は母親から受け継がれるものなんだ。
だから俺のかーちゃんも、お前さんのかーちゃんも、髪の色はグレーってことさ。
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グローブは興味津々といった様子で、続きを待った。
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*イカリヤ:
さらに言うと、瞳の色は父親から受け継がれるんだ。
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*グローブ:
ボクの瞳はグリーンで、おばあちゃんの瞳はパープルだ。
でも、チサトたちは三人ともグレーの瞳だったよ。
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イカリヤは頷き、話を続けた。
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*イカリヤ:
髪と瞳の色は、それぞれ五種類あるんだぜ。
今は、いろんな色が混ざり合ってるけど、それぞれの色には、もともとの起源があるのさ。
ブラウンが東。
ネイビーが西。
グリーンが南。
パープルが北。
そして俺たちグレーが、中央ってわけだ。
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*グローブ:
……ということは、ボクのお父さんは南の国の出身ってこと?
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*イカリヤ:
まあ、そういうことになるな。
お前さんの、とーちゃんのとーちゃんが、他の国へ移ってなけりゃな。
色が違うからって、特に違いはねえけど……。
今みたいに、ルーツが分かるんだよ。
ただし、グレーの髪だけは特別な波長を持ってるんだぜ。
まあ、俺は使えねえけど……。
お前さんのじいさん、ジェンドは得意だったみたいだけどな。
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*グローブ:
おじいちゃんに、お父さん、お母さんか……。
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グローブは自分の手のひらを見つめ、少し考えてから頷いた。
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*グローブ:
そうなんですね。
すごく勉強になりました。
ありがとうございます。
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*イカリヤ:
ちなみに、大陸にはグレーの髪は滅多にいないから、めちゃくちゃ目立つぞ。
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*グローブ:
えっ……。
目立つなんて、嫌だなぁ……。
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イカリヤの言葉に、グローブは思わず自分の前髪に手をやった。
グローブは「目立つ」という言葉が気になって、イカリヤが話しかけても、もう聞こえなくなっていた。
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*イカリヤ:
ダメだこりゃ……。
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イカリヤが苦笑いして、グローブの肩を軽く叩いた。
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*イカリヤ:
じゃあな、俺は仕事に戻るぜ。
いい旅にしなよ!
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そう言うとイカリヤは、足早に去っていった。
グローブは自分の前髪をくしゃくしゃと掻き回しながら、大きなため息をついた。
快晴の空を見上げると、聖剣の柄が頭に当たった。
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*グローブ:
そういえば……。
エルヴィスさんって、いったい誰なんだろう……?
この聖剣を持ってたって言ってたけど……。
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水平線の彼方に『ジュエリオ島』の姿が――
うっすらと見えた。
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*グローブ:
あれが……『ジュエリオ島』か……。
そして――
あそこには、いろんな髪の色の人たちがいるんだ……。
どんな人たちに出会えるんだろう。
楽しみだな……。
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ヴォォォォォーー。




