第030話:満月の約束
第二章:自由の国ルビスタン
―前回のあらすじ―
ここからは、グローブの物語に戻ります。
グローブが『ジュエリオ島』へ向かう連絡船の中でお弁当を開くと、昨夜のチサトとの記憶が鮮やかによみがえった。
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*グローブ:
ちゃんと「いただきます」って言ってから食べないと怒られちゃうからな〜。
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グローブはお弁当に手を合わせた。
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*グローブ:
……いただきます。
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◇ ◇ ◇
出発前夜――
グローブは静まり返った自分の部屋で、天井を見つめていた。
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*グローブ:
はぁーっ。
いろいろ考えてたら、眠れなくなっちゃったよ……。
ちょっとだけ、散歩しようかな。
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気分転換にグローブは、家をそっと抜け出した。
その足は引き寄せられるように、『アレキサンドライトの泉』へと向かっていた。
真っ暗な『カオスの森』を抜けると、【紫】になった泉に人影が見えた。
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*グローブ:
……あれ?
チサト……?
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*チサト:
あっ……グローブ?
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*グローブ:
なんで……もう遅いのに……。
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*チサト:
そっちこそ。
私は、明日のこととか考えてたら、眠れなくて……。
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チサトは少し照れくさそうに笑った。
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*チサト:
ねえ、グローブ。
『オパールマウンテン』で一緒に見た星空、覚えてる?
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*グローブ:
うん、もちろんだよ。
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*チサト:
実はさっき……。
『オパールマウンテン』の登山口まで行ったの。
もう一度、あの満天の星空が見たくて……。
でも、やっぱり鍵がかかってた。
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ぽつり、ぽつりと紡がれるチサトの言葉。
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*チサト:
開いてたとしても、今から登れるはずないのにね。
だから、私……また見たいんだなって思った。
あの星空を……。
だけど、グローブにも行ってほしくない。
本当は行ってほしくないのに――
でも……あの星空も見たい。
もう自分でも、何が何だか、どうしていいのか分かんないよ。
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*グローブ:
絶対に……。
絶対に雨を止めてみせるよ。
山頂で聞こえた声は、雨を止められるかもしれないって言っただけだけど……。
その方法を見つけてみせる。
だから絶対――
この場所で、一緒に星空を見よう。
夜明けまでずっと……。
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チサトは軽く頷いたあと、少し笑った。
そして、グローブの左胸にある紋章、《コードリンク》を見つめた。
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*チサト:
そういえば……山に登る前、私と約束してくれたよね。
何かあったら、責任取ってくれるって。
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*グローブ:
うん……。
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*チサト:
その紋章で私、「バチィッ!」ってなって、気絶しちゃったよね?
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*グローブ:
そうだったね……。
ごめん。
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*チサト:
その時の責任、まだ取ってもらってなかったんですけど?
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そのいたずらっぽい笑顔は、いつものチサト、そのものだった。
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*チサト:
じゃあ、その責任取ってもらおうかな。
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*グローブ:
えっ、今?
どうやって?
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そう言うとチサトは、グローブの目の前まで近づいた。
それから、そっと瞳を閉じて、小さく口を尖らせた。
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*チサト:
ほーら、早くしないと泣いちゃうぞ。
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からかうような言葉とは裏腹に、こらえきれなかった一粒の涙が、チサトの頬を伝って落ちていく。
グローブはゆっくりと顔を近づけた。
互いの吐息が触れそうになった時――
チサトはふっと目を開けた。
――ちゅっ。
グローブの頬に、軽く唇をあてたチサトは、サッと身を引いた。
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*チサト:
……あぁー、なんかスッキリした。
ありがと、グローブ。
じゃあ、約束、守ってね。
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不意を突かれたグローブは、呆然と立ち尽くしていた。
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*チサト:
なーに、その顔。
まさか、もう忘れたんじゃないでしょうね。
ここで「夜明けまで星空を見る」って、約束よ。
あなた、さっき言ったでしょ!?
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*グローブ:
ちゃんと覚えてるよ。
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*チサト:
ふーん……。
それじゃあ、『オパールマウンテン』で見た月のことも、ちゃんと覚えてる?
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*グローブ:
うん、覚えてるよ。
三日月だよね。
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*チサト:
そう!
だから、今度は満月!
満月の星空だよ。
絶対だよ……。
絶対に約束だからね!
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ぽつ……ぽつ……ぽつ……。
いつものように島には、静かな雨が降っていた。
二人を優しく見守るように。
◇ ◇ ◇
――ふと我に返ると、チサトのお弁当も残りわずかとなっていた。
気がつけば、頭が冴えわたっていた。
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*グローブ:
チサト……また《エデンの実》、お弁当に入れてたんだ……。
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グローブは最後の一口を食べ終えると――
からっぽになったお弁当箱の底を見つめた。
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*グローブ:
ごちそうさまでした。
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グローブは手を合わせたあと、お弁当の蓋を閉じると、少しだけ寂しくなった。
気分を切り替えるため、デッキへと向かった。
――キラリ……。
頬を打つ潮風。
輝く青空。
そして――
真っ赤な太陽。
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*グローブ:
島の外は、『オパールマウンテン』の山頂と同じで、本当に晴れてるんだ……。
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それからグローブは、遠ざかっていく『グレーダイヤモンド島』を見つめた。
雨雲に包まれた島が、しだいに小さくなっていく。
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*グローブ:
――絶対に、約束を守るからね。
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