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G【虹のシンフォニー】  作者: 左と右(SATOWU)マコト
過去・序章:メロディア島の遺産(全07話)023-029
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29/35

第029話:ニヒルシケーダ


過去・序章:メロディア島の遺産


―前回のあらすじ―


マリヤは《漆黒の苦無》に《旋風のトッカータ》、《虹の笛》に《昇華のプレリュード》を宿した。


そしてマリヤは、塔の出口を塞いでいたスロースを《旋風のトッカータ》で撃破した。



『スギライトの塔』を出発したジェンドたちの身体に、すぐに異変が現れた。


=

*ダン:

なんだ……?

足が、鉛みたいに重えぞ……。

=

*レイ:

全身の力が抜けていくようです……。

これは、ただの疲れじゃない……。

=

*ジェンド:

確かに……。

気づかないうちに、スロースの何か悪い魔法でもかけられたのかも……。

=

*マリヤ:

私は何ともないけど……。

=

*ジェンド:

たぶん、だけど……。

マリヤは秘技を放つまで、スロースから少し離れた場所にいたから、影響を受けなかったんじゃないかな……。

それに、もしかすると……《虹のオーブ》が、マリヤを守ってくれたのかもしれないね。

=


マリヤの《虹のオーブ》が、少し輝いたように見えた。


=

*マリヤ:

そうね……みんな、ごめんね。

ありがとう。

=

*ダン:

だけどよ。

このままじゃ、『クンツァイトの都』まで、たどり着けねえよ。

=

*レイ:

そうですよね。

《セブンパス》も確実に切れてしまいます。

=


マリヤは苦しそうにしている三人を見つめ、《虹のオーブ》を握りしめた。


その時――

塔の最上階で響いたあの神秘的な声がよみがえった。


=

*マリヤ:

そうだ……。

《昇華のプレリュード》だわ!

=


マリヤは《虹の笛》を、そっと口元へと寄せた。


それから、やさしく息を吹き込んだ。


荒野に美しい旋律が響き渡る。


やわらかな八色の光が三人を包み込み、弱った身体を癒やしていった。


=

*ダン:

おお……っ!?

身体が、すげえ軽くなったぞ!

=

*レイ:

倦怠感が完全に消え去りました……。

=

*ジェンド:

ありがとう、マリヤ。

=


その時――

――だらだら……だらだら……だらだら……。


荒野に奇妙な音が響いた。


=

*ダン:

な、なんだぁ!?

この音は!

=

*ジェンド:

あれっ!?

魔物が、こんな近くまで……。

《セブンパス》の効果がなくなってる……?

なんで?

=

*マリヤ:

たぶん……《昇華のプレリュード》のせいだわ。

あの音色は、傷ついた身体を癒やすこともできるけど――

反発する力を共鳴させるものだったでしょ。

もしかすると、結界の力と干渉してしまったのね……。

=

*ジェンド:

たしかに……そうだったね。

だから、《セブンパス》の魔物を遠ざける力が、うまく働かなくなったのか……。

=

*レイ:

あれは、ニヒルシケーダ……!

ヤツらに触れられると、精神が虚無と怠惰に引きずり込まれてしまいますよ!

人間の気力を栄養にするため、くっついてくるんです。

=


――だらだら……だらだら……だらだら……。


=

*ニヒルシケーダ:

努力なんて無駄、無駄ぁ……。

頑張ったって意味ないよぉ。

どうせ惨めになるだけなんだから、何もしないでダラダラするのが一番だって……。

=


その時――

一匹のニヒルシケーダがジェンドの背中にくっついた。


=

*ジェンド:

う……。

=


ジェンドの目から光が消え、虚ろになった。


=

*ジェンド:

ははは……。

なんだか、何もかもが、どうでもよくなってきたよ……。

ふあぁーあ、ここで寝ちゃお……。

=

*ダン:

おい、ジェンド……!?

どうした?

しっかりしろ!

=

*レイ:

いけません!

精神を「罪悪」に呑み込まれています。

=

*マリヤ:

私たちも、背中に止まられないようにしないと……。

=


三人は互いの背中を守るように、トライアングルの陣形を組んだ。


=

*ダン:

チッ、次から次に湧いてきやがって!

俺様の仲間に何さらしてくれてんだよ!

コラァッ!!

=


ダンが全身の力を込めて、怒声を轟かせた。


――ピタッ。


=

*ニヒルシケーダ:

うわっ……。

なに、この人……。

嫌いだな……。

暑苦しい……。

=


嫌悪感を露わにしたニヒルシケーダたちは、ダンの暑苦しい気迫に圧倒されたように、ヨロヨロと後退した。


ジェンドに止まっていたニヒルシケーダも、その声に圧倒され、飛び去っていった。


=

*レイ:

ダン……今の声、効いてますよ!

ヤツらは強い気迫に、暑苦しいほどの情熱、そういったものが苦手なようです!

=

*ダン:

へへっ……。

じゃあ、俺様とは正反対のヤツらってことだな。

ダラダラしてねえで、シャキッとせんかい!

オラァッ!!

=

*ニヒルシケーダ:

ムリムリムリ……。

なにアイツ、気持ちわるぅ。

あれは、絶対に説教とかしてくるタイプだよ。

絶対……。

ああいうのとは、関わらないのが一番だって……。

さよなら……。

=


群れをなしていたニヒルシケーダたちは、ダンの暑苦しい気迫にドン引きして、飛び去っていった。


=

*ダン:

へへっ……。

逃げていきやがったぜ!

=

*レイ:

ジェンド……大丈夫ですか?

=

*ジェンド:

うん、でも……。

急に何もかも嫌になってしまって……ごめん。

気合が足りないのかも……。

みんな、ごめんね。

=

*マリヤ:

ううん、無事でよかったわ。

ダンみたいに、いつも元気な人なんて、そんなにいないから……。

ジェンドは普通よ。

=

*ダン:

だけどよ。

これで、この辺の魔物は《セブンパス》がなくても、もう怖くねえな。

=

*レイ:

そんなこともないですよ、ダン。

寝てるときに、あのニヒルシケーダに襲われたら、あなたもやる気を失くしてしまいますよ。

=

*ダン:

たしかに、そうだな……。

それじゃあ、《セブンパス》が切れないうちに早く街に戻るぞ!

=

*ジェンド:

うん、急ごう!

=


四人は再び、『クンツァイトの都』へと向けて歩き出した。


しばらくすると、《セブンパス》の効果も元に戻った。


その後は魔物に襲われることなく、無事に街へと帰り着いた。


=

*ジェンド:

ふぅーっ。

往復100キロの旅は、けっこう大変だったね。

=

*レイ:

ええ、7日間で帰ってこられて、よかったです。

=

*ダン:

今日は、ちゃんとした宿に泊まろうぜ。

=

*マリヤ:

そうね。

お風呂にも入りたいし……。

=

*ジェンド:

じゃあ、今日はゆっくり休んで。

明日、次の街に出発しよう!

=


こうして、最初の神器、《虹の笛》を巡る過酷な旅は幕を閉じた。


◇◇◇


過去・序章

メロディア島の遺産

――完


◇◇◇


挿絵(By みてみん)


画像はイメージです。

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