第028話:旋風のトッカータ
過去・序章:メロディア島の遺産
―前回のあらすじ―
『スギライトの塔』を攻略したジェンドたちは、最上階で神獣と《虹の笛》を発見した。
《虹のオーブ》の力で風の障壁を消し、ジェンドが《虹の笛》を拾い上げた瞬間、二つの神器が共鳴した。
共鳴した二つの神器は八色の光を放った。
その光はマリヤの腰にある《漆黒の苦無》へと流れ込んだ。
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*マリヤ:
えっ……!?
なに?
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八色の光が収まると、マリヤは《漆黒の苦無》を腰から引き抜き、構えていた。
そして次の瞬間――
マリヤは床を蹴り、くるりと軽やかに宙へ旋回した。
――シュッ!
刃先から柔らかな翠の風が溢れ出し、螺旋を描く旋風となって空間を満たしていく。
マリヤは無意識のうちに身体を動かし、唇から秘技の名をこぼしていた。
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*マリヤ:
――《旋風のトッカータ》。
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それは旋風の刃が、心にある「罪悪」を切り刻み、消し去る秘技だった。
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*ジェンド:
マリヤ、すごいよ……。
=
*ダン:
おいおい、どうしちまったんだ?
武器が怖いって、言ってたお前が。
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*レイ:
何かの秘技のようにも見えましたよ。
=
*マリヤ:
ええ……身体が勝手に動いて……。
《旋風のトッカータ》って言葉が浮かんできたの。
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*ジェンド:
今の光の共鳴……《虹の笛》が君を選んでいたように見えたよ。
だから……この笛は、君が持つべきなんだと思う。
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ジェンドは《虹の笛》を、マリヤへと差し出した。
マリヤが笛に触れた瞬間――
今度は、美しい旋律とともに、澄んだ声が頭の中に響き渡った。
◇◇◇
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*???:
その旋律は、《昇華のプレリュード》です。
反発する力を共鳴させることができます。
その音色は、傷ついた身体を癒やすこともできるでしょう。
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◇◇◇
楽器など一度も触ったことのないマリヤだったが、無意識に《虹の笛》を口元へと寄せていた。
『スギライトの塔』の最上階に、美しい音色が響き渡った。
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*ダン:
マリヤ、お前が笛なんか吹いてるとこ見たことなかったけど……。
うまいな。
=
*レイ:
ええ。
それに、疲れが一瞬で吹き飛ぶようです。
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*ジェンド:
なんて完璧な旋律なんだ……。
=
塔を包んでいた柔らかな光がすっと収まり、マリヤは静かに笛を口元から離した。
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*マリヤ:
これは、《昇華のプレリュード》。
反発する力を共鳴させる旋律みたいよ。
=
*ジェンド:
反発する力……!?
焦げる……《エデンの実》……。
これだ……!
この旋律だよ。
《共鳴窯》に必要だった音の正体は……。
=
*ダン:
やったな、ジェンド。
この調子で、さっさと次の神器も手に入れちまおうぜ。
=
*レイ:
ええ、そうですね。
そろそろ、塔を下りましょう。
=
四人は階段を、一気に駆け下りた。
しかし――
一階へとたどり着いた時には、外は闇に包まれ始めていた。
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*ダン:
もう、暗くなっちまうな。
足元が悪い道を、夜歩くのは、さすがに危険だからな。
=
*レイ:
ええ。
今日はこの塔の一階で、キャンプするのはどうでしょう?
=
*マリヤ:
賛成!
街まで戻るのに、歩いて丸二日でしょう?
明日の朝に出発しても、《セブンパス》が切れるまでには、十分に間に合うしね。
=
*ジェンド:
うん、そうだね。
今夜はここで身体を休めて、夜が明けたらすぐに出発しよう。
=
ジェンドたちは『スギライトの塔』の一階で、キャンプをすることにした。
そして――
静かな夜が過ぎ、塔の隙間から朝の光が差し込み始めた。
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*ジェンド:
おはよう。
……《セブンパス》が緑色になったね。
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*レイ:
残り、3日ですね。
=
*ダン:
まあ、街までは丸二日だ。
心配することはねえよ。
=
身支度を終えた四人が、塔の外へ出ようとした瞬間――
――ズシン!
大扉の前に、出入口を完全に塞ぐほどの巨大な塊が、轟音とともに落下してきた。
=
*ダン:
な、なんだぁ、こいつは……!
出られねえじゃねえか!
=
*レイ:
これは、なんですか?
生き物?
=
*スロース:
ふぉふぉふぉふぉ。
失礼ですね。
私は、スロース。
あるお方の命で、神器を運び出す者を見張っているのですよ。
=
*ジェンド:
見張っている……!?
=
*スロース:
ふぉふぉふぉふぉ。
その《虹の笛》を置いて行きなさい。
そうすれば、通してあげます。
=
*ジェンド:
僕たちには、これが必要なんだ。
だから、そこをどいてよ。
=
*スロース:
ふぉふぉふぉふぉ。
そうですか……。
それなら、そこで朽ち果てるまで、無駄な時間を過ごせばいい……。
あなた方が、動けなくなったら、ゆっくり回収させてもらいますから。
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スロースはそう言うと、スライムのように身体を伸ばし、出入口の隙間を完全に塞いでしまった。
=
*ダン:
どかねえなら、力づくでぶっ飛ばすまでだよ!
=
ダンが《火竜の斧》を渾身の力で振り下ろした。
――ズバァーン!
=
*ダン:
よっしゃー!
真っ二つだぜ。
=
だが――
みるみるうちに、スロースの身体は元通りに戻ってしまった。
=
*ダン:
なっ……!?
切ったそばから、くっつきやがったぞ!?
=
*レイ:
それなら自分が!
=
レイが《水龍の槍》を高速で繰り出した。
――バシュシュシュシュ!
スロースの身体に無数の穴が空いたが、すぐに塞がってしまった。
=
*レイ:
ダメです……。
すぐ再生してしまいます。
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二人の背後では、ジェンドが《ゼウスの弓》を構えていた。
――シュン!
シュン、シュン!
ヌプッ。
ヌプッ、ヌプッ。
=
*ジェンド:
矢が吸収されていく……。
=
スロースは大きなあくびをひとつ漏らした。
=
*スロース:
ふわぁ……あ……。
だるい……。
痛くも痒くもないので、お好きなだけどうぞ……。
私は攻撃なんて、面倒なことしませんから……。
力尽きるまで、頑張ってください。
=
スロースは寝息を立て始めた。
それから三人は、同時に攻撃してみたり、順番に連続で攻撃したりした。
しかし――
結果は変わらず、無情にも時間だけが過ぎていく。
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*ダン:
マジか……。
こいつ、斬っても突いても何してもダメだぜ!
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*レイ:
相手が攻撃してこないのが幸いですが……。
=
*マリヤ:
……みんな、下がって!
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*ジェンド:
マリヤ……!?
=
マリヤは前へ進み出ると、震える手で、腰の《漆黒の苦無》を静かに引き抜いた。
マリヤは床を強く蹴り、宙へと身を翻した。
――シュッ!
=
*マリヤ:
――《旋風のトッカータ》!!
=
旋風の刃が、スロースの心に巣くう「罪悪」を包み込み、切り裂きながら、消し去っていく。
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*スロース:
なっ……!?
な、なんだ……この風は……!?
まさか、これが秘技……?
ぐあぁぁぁーーーっ!!!
=
スロースの巨体が緑紫色の光に包まれ、ガラスが砕けるように、光の粒子となって霧散していった。
――パリィィィン……!!
大扉を完全に塞いでいた塊が、跡形もなく消えていた。
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*ダン:
……す、げえ……。
なんなんだ、今のは……。
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*レイ:
力技じゃない……ですね。
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*ジェンド:
マリヤ……!
ありがとう。
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*マリヤ:
はぁ……よかった……。
でも、怖かった……。
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外の風が、開かれた出入口から塔の中へと吹き込んできた。
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*レイ:
扉は開きましたが……。
予定より半日遅れの出発になりましたね。
……急ぎましょう。
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*ダン:
街までは丸二日……。
のんびりは、できねえけど……。
まあ、まだ何とかなる。
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*ジェンド:
それにしても……あのスロースって……。
まさか……オベリスクの結界が効かない魔物がいるのか?
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