第023話:ジェンドの誕生
過去・序章:メロディア島の遺産
―前回のあらすじ―
グローブが連絡船に乗り、『ジュエリオ島』へと旅立った。
そこから時は遡り、これは約50年前の物語です。
ここ『グレーダイヤモンド島』に住むトレブルは、幼少期から「モノづくりの天才」と謳われていた。
彼はまた、島の外にいるという「魔物」にも興味を持っていた。
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*トレブル:
この島以外には、魔物がいて、人を襲うって聞くけど……。
なんでだろう?
それに、オベリスクも……見てみたいな。
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彼は「世界の仕組みを知る」ため、北の『メロディア島』にある『叡智の書蔵』を目指し、旅立つ決意をした。
『メロディア島』に行くためには、『ジュエリオ島』を経由しなければならない。
『ジュエリオ島』には七つ、『メロディア島』には一つのオベリスクがあった。
オベリスクには、魔物を近づけさせない結界が張られていた。
それぞれのオベリスクは、約50キロの距離を隔てていた。
人々は、このオベリスクを中心に街を築いていた。
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*トレブル:
すみません。
これで馬車に乗せてもらえませんか?
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トレブルは《ハルモニアの水》を差し出した。
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*御者:
それ……《ハルモニアの水》か?
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*トレブル:
はい、そうです。
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*御者:
なら、いいぜ!
《ハルモニアの水》をくれるなら大歓迎だよ。
荷台に乗りな!
俺たちは、これがなきゃ仕事にならねえからな。
=
『グレーダイヤモンド島』の《ハルモニアの水》は、オベリスクと同じ魔物を寄せ付けない結界を一時的に張ることができた。
その効果は、一口飲めば24時間、飲んだ者の周囲10メートルに及んだ。
トレブルは《ハルモニアの水》を運賃代わりに、馬車を乗り継ぎながら『ジュエリオ島』を駆け抜けた。
七つの街を越え、島と島を繋ぐ大橋、『オブシディアン架橋』を渡り、『メロディア島』へと足を踏み入れたのだった。
そしてついにトレブルは、『叡智の書蔵』がある『クンツァイトの都』にたどり着いた。
それからトレブルは、この街で「世界の仕組み」について学び続けていた。
そんなある日――
一冊の本に出会う。
その本の作者の名はギルテンド。
「罪悪(Guilt)」を終わらせる者(End)。
ギルテンドは、人の苦しみは満たされぬ心から生まれ、その執着は「罪悪」を生むと説いていた。
その本に魅了されたトレブルは、ギルテンドの思想に深く感銘を受けた。
これまで彼は、世界の仕組みを知るために、数え切れないほどの知識を積み重ねてきた。
けれど、知識を得るたびに、新たな疑問が生まれていた。
ギルテンドの言葉は、そんな彼の疑問に、一つの答えを示していた。
人の心を満たし、執着から解き放つこと。
それこそが、世界を調和へと導く道なのかもしれない。
トレブルは、ページをめくる手を止められなかった。
いつしか彼は、自らをジェンド(G-end)と名乗るようになった。
ギルテンドの「G」と、終わりの「End」を組み合わせたものだった。
ジェンドは、来る日も来る日もギルテンドの研究記録を読み漁った。
そしてついに――
この世界にある調和の素材の存在に辿り着く。
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*ジェンド:
あれっ……!?
ここに書いてあるのって、『グレーダイヤモンド島』のことだよね。
七つの素材?
=
その正体を確かめるように、ジェンドは手記の続きを読み進めた。
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*ジェンド:
人が人を思いやる。
その優しさが人から人へと繋がり、大きな輪になる。
そしてその輪は、また誰かへと受け継がれていく。
それが世界を調和へと導く《神秘のマナ》……?
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ジェンドは、しばらく考え込んだ。
人の心を満たすことができれば、執着は薄れ、欲望も少しずつ消えていくのではないだろうか。
そうすれば、人々の心を縛る「罪悪」を終わらせられるのかもしれない。
そして、小さく頷いた。
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*ジェンド:
これだ……これだよ……。
これを完成させれば、きっと「罪悪」が消えてなくなるよ……。
「罪悪」を終わらせられる……。
=
ギルテンドの手記には、《神秘のマナ》を完成させるために必要な窯のことも書かれていた。
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*ジェンド:
この窯を作ればいいのか……。
……なるほど……。
これなら、作れそうだ。
=
その手記の末尾には、こう書き遺されていた。
◇◇◇
――理論は全て揃った。
だが、私にはもう作る気力も時間がない。
もし後世で、この手記に辿り着き、私の意志を解する者がいるならば――
この窯を、どうか形にしてほしい。
頼む。
◇◇◇
=
*ジェンド:
大賢者ギルテンド。
あなたの意志は、僕が引き継がせてもらうよ。
《神秘のマナ》は、必ず完成させる。
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ジェンドは静かに手記を閉じた。
その瞳には、これまでにない決意が宿っていた。
さらにジェンドは「世界の仕組み」を学ぶ中で、オベリスクと《ハルモニアの水》が持つ魔物を寄せつけない結界についても調べていた。
ある時――
オベリスクに触れたジェンドは、自分の身体に結界の力が宿るのを感じた。
しかし、その力は一時的なものだった。
もし、この力を何かに保存することができれば――
《ハルモニアの水》に頼らずとも、魔物から身を守る方法を生み出せるかもしれない。
そう考えたジェンドは、オベリスクの力を別の器に宿す研究を始めた。
素材を変え、構造を見直し、何度も試作を重ねる。
そして、ついに――
オベリスクの力を宿すことのできる「指輪」を完成させた。
指輪を身につけたままオベリスクに触れると、その力が指輪に蓄えられた。
こうして力を宿した指輪は、装着者の周囲10メートルに、《ハルモニアの水》と同じ結界を7日間張ることができた。
ジェンドは、その指輪を《セブンパス》と名付けた。
そして自らの指に身につけた。
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*ジェンド:
久しぶりに『グレーダイヤモンド島』へ帰るけど、みんな元気にしてるかな。
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ジェンドは、指にはめた《セブンパス》を見つめた。
故郷を離れてから、長い時間が過ぎていた。
懐かしい人々の顔を思い浮かべ、ジェンドは静かに歩き出した。
こうして――
「罪悪」を終わらせる旅が、静かに幕を開けた。
◇◇◇
―セブンパス―
Seven Pass
オベリスクに触れることでエネルギーがチャージされ、結界を7日間宿すことができる。
周囲10メートルに効果あり。
指輪の光晶で残日数が分かる。
残り7日(白)
残り6日(紫)
残り5日(青)
残り4日(蒼銀)
残り3日(緑)
残り2日(黄金)
残り1日(赤)
残り0日(灰色)
◇◇◇




