第020話:神秘のマナ
第一章:止まない雨の島
―前回のあらすじ―
『アレキサンドライトの泉』で、グローブとチサトは初めて唇を重ねた。
無事に《ハルモニアの水》も手に入り、《神秘のマナ》の素材がすべて揃った。
グローブはテーブルに並べられた素材を、丁寧に混ぜ合わせていった。
《ヘンブレス》の卵。
《カウカーム》のミルク。
《エンジェルティア》。
《トラベリー》。
《スウィートウィート》。
《ハルモニアの水》。
【緑】と【紫】の《エデンの実》。
そして――
ついに一つの生地が練り上がった。
=
*グローブ:
よし、出来たよ。
おばあちゃん!
=
*マリヤ:
ありがとう、グローブ。
それを《共鳴窯》に入れてちょうだい。
=
グローブは生地を《共鳴窯》へと入れた。
=
*マリヤ:
それじゃあ、グローブ。
私が合図したら《昇華のプレリュード》の旋律を奏でるんだよ。
=
グローブは静かに頷いた。
マリヤが合図をして、《共鳴窯》を起動すると同時に、グローブの演奏が始まった。
途切れ途切れの旋律が、リビングに響く。
次の瞬間――
《共鳴窯》の隙間から黒い煙が立ち上った。
ナギとナミは小さく頷く。
グローブはがっくりと肩を落とし、途中で演奏をやめてしまった。
《共鳴窯》の中からは、黒く焦げついた苦い匂いが漂っていた。
=
*マリヤ:
グローブ、ごめんねぇ。
原因は、その《虹の笛》なんだ。
お前のせいじゃないんだよ。
=
*グローブ:
……音が途切れちゃうから?
=
*マリヤ:
ああ、そうだよ。
=
その時――
グローブの目に【緑】と【紫】の《エデンの実》が映った。
=
*グローブ:
……おばあちゃん。
聞きたいことがあるんだ……。
=
*マリヤ:
なんだい?
=
*グローブ:
ノートに書いてあったことなんだけど……。
【緑】の《エデンの実》で戦争が始まって――
【紫】の《エデンの実》で戦争が終わったって、どういうこと?
=
*マリヤ:
そのことだね……。
……分かったよ。
【緑】と【紫】の《エデンの実》で出来上がったマナのことを、ちゃんと話すよ。
=
マリヤはグローブを優しく見つめた。
=
*マリヤ:
ジェンドはまず――
【緑】の《エデンの実》を使って、《神秘のマナ》を作ったんだ。
ジェンドに勧められて、私もそれを食べた。
すると、驚くほど「やる気」が上がったんだよ。
私たちは喜んだ。
ついに完成したんだって。
それで、この諸島にある八つの都市のリーダーに配って回ったんだ。
ところが、それから数ヶ月後――
八つの都市を巻き込む戦争が始まってしまった。
=
グローブたちは固唾を飲んで、その話を聞いた。
=
*マリヤ:
私たちは考えた。
もしかしたら、戦争の原因が《神秘のマナ》だったんじゃないかって。
それで次に――
【紫】の《エデンの実》を使って、《神秘のマナ》を作ったんだ。
まず、ジェンドが食べたんだけど、あの人の「やる気」は、みるみる下がっていったよ。
私は戦争を止める方法は、これしかないと思って、再び八つの都市のリーダーたちに、それを配って回った。
すると――
戦争は、少しずつ終息へ向かっていった。
=
グローブはテーブルに残っていた二つの《エデンの実》を手に取った。
=
*グローブ:
それだと【緑】の実も【紫】の実も危険だよね。
=
*マリヤ:
確かに、そう思うよねぇ。
でも、そんなに単純じゃないんだよ。
お前たちも《エデンの実》を食べて、頭が冴え渡ったり、感情が高まったりしたことがあるだろう?
《共鳴窯》で出来上がる《神秘のマナ》は、それとはまったく違う作用を持っているんだよ。
=
*グローブ:
そうなんだ……。
=
*マリヤ:
ああ。
《神秘のマナ》は本来――
「人が人を思いやるもの」でなければならない。
だから、どちらも私たちが本当に目指していた《神秘のマナ》ではなかったんだ。
=
*グローブ:
じゃあ……本物の《神秘のマナ》なんて、おとぎ話なの?
=
*マリヤ:
そうかも……しれないねぇ。
だけど、私もジェンドもずっと信じていたんだ。
いつか、本物が必ず出来るってね。
=
マリヤはグローブの目を真剣に見つめた。
=
*マリヤ:
グローブ……今度は私から質問するよ。
『オパールマウンテン』で何があったか教えてくれるかい?
=
グローブは静かに頷くと、『オパールマウンテン』で手に入れた《カリバーン》を取りに二階へと駆け上がっていった。




