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G【虹のシンフォニー】  作者: 左と右(SATOWU)マコト
第一章:止まない雨の島(全22話)001-022
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第018話:エデンの実


第一章:止まない雨の島


―前回のあらすじ―


夜の『アレキサンドライトの泉』で【紫】の《エデンの実》を口にしたグローブとチサトは、本能を刺激され急接近した。


無事に素材を持ち帰った二人だったが、マリヤが口にした《神秘のマナ》という言葉に、ナギとナミは息を呑んだ。



翌朝――

チサトの家ではナギとナミが深刻な顔で言葉を交わしていた。


=

*ナギ:

村長は本気で、あの《神秘のマナ》ってのを作るつもりなのか?

=

*ナミ:

《神秘のマナ》って、10年前にジェンドさんが作ろうとして失敗したんでしょう?

=

*ナギ:

もし、あの時と同じものが完成したら、今度こそ取り返しのつかないことになるぞ。

=

*ナミ:

じゃあ、絶対に止めなきゃ……。

すぐに、村長さんのところへ行きましょう!

=


二人が険しい表情で話しているところへ、眠そうに目を擦りながらチサトが起きてきた。


=

*チサト:

おはよう。

朝から、二人で何を話してるの?

=

*ナギ:

……いや、ちょっとな。

=

*ナミ:

なんでもないわ。

これから少し、村長さんのところに行くから、家で留守番をお願いね。

=

*チサト:

えっ、今から?

まだ7時だよ。

=


チサトが怪訝そうな表情を浮かべていたが、二人は一刻を争うようにグローブの家へと向かった。


――コン、コン、コン。


=

*ナギ:

おはようございます。

ナギです。

=


――ガチャ。


ナギの声に、マリヤがドアを開けた。


=

*ナミ:

おはようございます、村長さん。

朝早くから、すみません。

=

*マリヤ:

おや、どうしたんだい?

二人とも血相を変えて。

まあ、中へお入り。

=


二人は、静まり返ったリビングへと入った。


=

*ナギ:

村長……。

単刀直入に聞きます。

本当に《神秘のマナ》を作る気なんですか?

=

*マリヤ:

どうして、そんなこと聞くんだい?

=

*ナミ:

夕べ、グローブが《スウィートウィート》と《エデンの実》を渡したとき……。

「また一つ、素材が揃った」って、おっしゃいましたから……。

=

*マリヤ:

……ああ、そうだったねぇ。

確かにそう言ったねぇ。

=


マリヤはいつもの穏やかな表情で答えた。


=

*マリヤ:

……でも、出来ないんだよ。

素材を全部集めても……。

=

*ナギ:

えっ、それはどういうことですか?

=

*ナミ:

じゃあ、なんで集めてるんですか?

=

*マリヤ:

それはねぇ……。

グローブが、「おじいちゃんの手伝いをしたいんだ」って真剣な目で言ったからなんだ。

=

*ナギ:

でも、素材が集まれば、作れるんじゃないんですか?

=

*ナミ:

そうですよ。

何かの間違いで、また出来てしまったら……。

=

*マリヤ:

それは大丈夫。

間違いは絶対に起きないよ。

=


マリヤは優しく微笑んだ。


けれど、その瞳の奥には、一瞬だけ言葉にできない寂しさが浮かんだ。


=

*マリヤ:

《神秘のマナ》は《共鳴窯》を使って作るんだけど――

《虹の笛》の完璧な旋律を、窯に響かせる必要があるんだよ。

でも、あの日から……。

《虹の笛》の音が途切れ途切れになってしまってねぇ。

《神秘のマナ》を完成させるには、欠けのない旋律が必要なんだ。

=


マリヤは窓の外の降り続く雨を見つめ、小さく息をついた。


=

*マリヤ:

《神秘のマナ》が完成しない原因は、《エデンの実》にあるんだ。

《エデンの実》を使って作るには、《虹の笛》の完璧な旋律が必要なんだよ。

でも、今の《虹の笛》では、それができない。

だから、笛を吹かずに《エデンの実》を《共鳴窯》に入れると、必ず焦げてしまうんだ。

逆に、《エデンの実》を使わないレシピなら、笛を吹かなくても作れるんだよ。

例えば、《トラベリーチョコ》は――

《トラベリー》。

《スウィートウィート》。

《ハルモニアの水》だけで、作るから笛は吹かなくていいんだよ。

=

*ナミ:

それじゃあ、絶対に危険はないんですね。

=

*マリヤ:

ああ、そうだよ。

=


そう言うとマリヤは、《エデンの実》を《共鳴窯》に入れ、起動させた。


すると――

《共鳴窯》から黒い煙が立ち上った。


=

*マリヤ:

こうなるのさ。

=


マリヤは二人に、《共鳴窯》の中を見せた。


=

*ナギ:

……なるほど。

村長が、ここまで丁寧に説明してくれたんだ。

これ以上疑うわけにもいきませんね……。

だけど、俺たちは……怖かったんです。

=

*ナミ:

ええ……。

また同じことが起きるんじゃないかって……。

=


ナミがテーブルの上に置かれている素材に、視線を移した。


=

*ナミ:

……でも、集めた素材はどうするんですか?

=

*マリヤ:

グローブが旅に出る時に、パンケーキでも作って、持たせてやろうと思ってるんだよ。

=

*ナギ:

……こんな朝早くから、すみませんでした。

納得しました。

=

*ナミ:

……それじゃあ、後ほど、昨日採ってきたばかりの《トラベリー》をお持ちしますね。

=


二人は、深く一礼すると、急ぎ足で自宅へと戻っていった。


その直後、グローブが起きてきた。


=

*グローブ:

おはよう、おばあちゃん。

ちょっと、コゲ臭いけど……。

なんかあったの?

=

*マリヤ:

おはよう、グローブ。

ナギさんとナミさんが来てたんだよ。

=

*グローブ:

ええっ、こんなに朝早く。

=

*マリヤ:

ああ、少し誤解があったみたいでねぇ。

だけどもう、大丈夫だよ。

=


マリヤは少しだけ目を細め、グローブの顔を見つめた。


=

*マリヤ:

あとは《ハルモニアの水》だけだね。

=

*グローブ:

うん。

朝ごはんを食べたら、すぐ『アレキサンドライトの泉』に行ってくるよ。

=


グローブは元気よく頷くと、目の前の朝食を勢いよく頬張り始めた。


=

*マリヤ:

あっ、こらっ、グローブ!

「いただきます」は!?

=

*グローブ:

あっ、ごめん、おばあちゃん。

い、いただきまーす!

=


挿絵(By みてみん)


画像はイメージです。

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