第017話:紫の実の罠
第一章:止まない雨の島
―前回のあらすじ―
グローブは採り忘れていた《神秘のマナ》の素材、《スウィートウィート》を収穫するため、チサトと二人で山頂へ引き返した。
ようやく山を下り、夜の闇に包まれた『アレキサンドライトの泉』に着いた二人の目に、【紫】の光が映った。
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*チサト:
あっ!?
泉が【紫】になってる……。
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*グローブ:
本当だ……。
すごい……。
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闇の中に浮かび上がる【紫】の水面が、幻想的な輝きを放っていた。
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*グローブ:
……あっ、そうだ!
《エデンの実》も、色が変わってるかも……。
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*チサト:
うん、そうだね。
行ってみよう。
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二人は『ガイアの木』がある場所まで、早足に向かった。
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*チサト:
やっぱり、《エデンの実》も【紫】になってるよ!
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*グローブ:
ちゃんと《エデンの実》も、泉の色に合わせて、変わるみたいだね。
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*チサト:
うん。
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*グローブ:
よし、これも採って帰ろう!
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*チサト:
これ、採って帰るのはいいけど……。
《神秘のマナ》には、どっちの《エデンの実》を使うの……?
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*グローブ:
……【緑】で戦争が始まって、【紫】で戦争が終わったんなら……。
両方入れたら、いいんじゃない?
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*チサト:
なるほど……グローブ、頭いいじゃん!
じゃあ、急いで採って帰ろう!
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二人は【紫】の《エデンの実》をいくつか収穫した。
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*チサト:
これ……どんな味がするのかな?
【緑】の実の時と味、変わってると思う?
ねえ、1個だけ、食べてみない?
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*グローブ:
そうだね。
【緑】の実みたいに頭が「シャキーン」ってするのかな?
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*チサト:
ふふっ、どうだろうね。
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二人は【紫】の実を同時に口へと運んだ。
サクッ……モグモグ、ゴクン。
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*チサト:
うん、美味しい!
でも……味は【緑】とそんなに変わらないかも。
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*グローブ:
うん、そうだね。
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ぽつ……ぽつ……ぽつ……。
雨音さえかき消してしまいそうなほど、激しい鼓動が二人の胸の中で響き始めた。
ドクン……。
ドクン……。
ドクン……。
グローブとチサトは、互いの姿がいつもと違って見えていた。
二人の胸の奥で、普段は意識することのない感情が、急速に膨れ上がっていった。
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*チサト:
グローブ……。
=
*グローブ:
うん……?
=
二人は見つめ合い、どちらからともなく手を重ねた。
――吐息と吐息が……。
じりじりと、二人の距離が近づいていく。
視線が互いの唇へと注がれた。
チサトが瞳を閉じると、合わせるようにグローブも瞳を閉じた。
――唇と唇が……。
もう、その、あと数センチ……。
唇が触れ合う直前――
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*ナギ:
おーい!
グローブー!
チサトー!
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遠くの方からナギが呼んでいる声が聞こえた。
――ビクッ!!!
二人は弾かれたように、凄まじい勢いでそっぽを向いた。
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*グローブ:
う、うわっ!?
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*チサト:
んっ、んん!?
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二人とも激しく高鳴る鼓動を必死に落ち着かせた。
すぅーっ、はぁーっ。
すぅーっ、はぁーっ。
すぅーっ、はぁーっ。
そして、近づいてくるナギとナミの方へと向かって、ぎこちなく歩き始めた。
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*ナギ:
なかなか帰って来ないから、心配して迎えに来てやったぞ!
大丈夫だったか?
なんか、あったのか?
=
*ナミ:
ふふふっ。
なんか……泉の真ん中で、見つめ合ってたようにも見えたんだけど……。
何、やってたのかしらねぇ。
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*チサト:
ちょ、ちょっとー、お母さん!?
な、なに言ってるの?
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グローブとチサトは、ナギとナミの追及から逃れるように、マリヤの待つ家へと急いだ。
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*グローブ:
ふぅーっ……。
おばあちゃん、ただいま!
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*チサト:
はぁーっ……。
マリヤさん、戻りました。
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*マリヤ:
ああ、おかえり。
無事に帰ってきてくれて、ありがとうねぇ。
遅かったから、みんな心配していたんだよ。
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ほっと胸をなでおろしたマリヤだったが、二人の姿を見て、息を呑んだ。
グローブの背中の聖剣と、左胸の紋章。
袋いっぱいに詰め込んだ《スウィートウィート》。
そして――
両手に抱えた【紫】の《エデンの実》。
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*マリヤ:
今日は疲れただろう?
いろいろ聞きたいこともあるけど……。
今日は、ゆっくり休みなさい。
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*グローブ:
うん、ありがとう、おばあちゃん。
テーブルの上に《スウィートウィート》と【紫】の《エデンの実》は置いておくね。
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*マリヤ:
……よくやったねぇ。
これでまた一つ、《神秘のマナ》に必要な素材が揃ったねぇ。
ありがとう。
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マリヤはグローブの成長に喜び、思わず《神秘のマナ》という言葉を口にしてしまった。
その言葉を聞いたナギとナミはハッとして、互いに顔を見合わせた。
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*マリヤ:
それじゃあねぇ、今日はお疲れ様。
また明日、お話を聞かせておくれ。
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*グローブ:
はい、おやすみなさい!
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チサトたちも別れの挨拶をして、自宅へと帰っていった。
一泊二日の大冒険の余韻と、ほのかな恋のドキドキを残したまま、夜は静かに更けていった。
◇◇◇
―エデンの実―
昼の【緑】の実は、理性を研ぎ澄ます。
夜の【紫】の実は、本能を呼び覚ます。
収穫すると、その時の色を維持する。
【緑】で収穫した実は夜になっても【緑】。
【紫】で収穫した実は昼になっても【紫】。
◇ ◇ ◇




