第016話:スウィートウィート
第一章:止まない雨の島
―前回のあらすじ―
グローブは山頂で《カリバーン》と、自分だけが身につけられる《コードリンク》を手に入れた。
聖剣を扱える者へ届ける使命を受けたグローブは、『グレーダイヤモンド島』を出ることを決めた。
グローブはチサトが目覚めるのを、そばで待っていた。
しばらくすると――
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*チサト:
うーん……。
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*グローブ:
あっ、チサト。
もう大丈夫なの?
=
*チサト:
うん。
あー、よく寝た。
んっ!?
っていうか、またずっと私の寝顔を見てたんじゃ……。
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寝顔を見られて抗議しようとしていたチサトだが、グローブの姿を見て、目を見開いた。
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*チサト:
……グローブの背中のそれって、山に突き刺さってたヤツじゃない?
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チサトは、グローブが背負う《カリバーン》を指さした。
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*チサト:
……で、大丈夫なの?
勝手に抜いて……。
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*グローブ:
うん。
それなら、「抜きなさい」って言われたから大丈夫だよ。
それより、すぐ山を下りよう。
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グローブが座り込んでいたチサトへ、優しく手を差し伸べると――
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*チサト:
あぁぁぁーー!!
ちょっ、ちょっと待って……。
そのブローチ……っ!?
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チサトの視線がグローブの左胸でピタリと止まった。
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*チサト:
……私が触って、「バチィッ!」ってなったヤツじゃない?
なんでグローブが身につけてるのよ?
……それで、なんでグローブは大丈夫なわけ?
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*グローブ:
ボクも詳しくは分からないんだ。
だけど、もう大丈夫だよ。
ボクがつけてる時は、「バチィッ!」ってならないみたいだから。
それで、『グレーダイヤモンド島』を出て、この聖剣を届けないといけなくなったんだ。
だから、早く山を下りないと。
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チサトは両手で頭を抱えた。
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*チサト:
なんで、なんで、なんで!?
なんで、グローブが聖剣を届けるの?
なんで、そんな話になるの?
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*グローブ:
ボクには、この聖剣が扱えないから……。
だから、扱える人に届けるんだよ。
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*チサト:
なんで、グローブがそんなことするの?
それで、誰に聖剣を届けるの?
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*グローブ:
……えっと……。
分かんないけど、行かなきゃいけないんだ。
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チサトはますます混乱した。
何も整理できないまま、ただ黙って、グローブの後を追った。
ちょうど岩屋の裏にあった、あの石像の前まで下りてきた時だった。
山道の静寂を切り裂くように、チサトが突如として、凄まじい悲鳴を上げた。
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*チサト:
あぁぁぁーーーっっっ!!!
ちょっと待って!!!
ストップ、ストップ、ストーーーップ!!!
=
*グローブ:
うわっ、びっくりしたぁ……。
どうしたの?
急に大声出して?
=
チサトは真剣な顔で言った。
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*チサト:
グローブ……。
私たち、とーっても大事なこと忘れてるよ!
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*グローブ:
えっと……なんだっけ?
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*チサト:
はぁーっ……。
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チサトが大きなため息をついた。
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*チサト:
《神秘のマナ》……。
《神秘のマナ》だよ!
=
*グローブ:
あっ……。
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*チサト:
ほらね、やっぱり……。
忘れてたでしょ!
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*グローブ:
《スウィートウィート》……。
聖剣を触るまで覚えてたのに……。
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*チサト:
そうだよー!
「バチィッ!」とか、いろいろあり過ぎて、完全に頭から抜けちゃったんだよー。
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*グローブ:
ごめん、チサト。
戻ろう!
=
二人は大慌てで、山頂へと引き返した。
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*グローブ:
はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。
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*チサト:
あぁ……。
つ、疲れたぁ……。
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息を切らして、再び山頂へと戻ってきた二人。
それからグローブとチサトは、若草色した小麦、《スウィートウィート》を丁寧に収穫した。
持ってきた袋が、はち切れそうになるまで詰め込むと、二人はようやく大きく息を吐いた。
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*チサト:
ふぅーっ……。
これだけ採れば、オーケイだね。
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*グローブ:
うん。
今度こそ、本当に帰ろう。
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山頂で手に入れたものをすべて確かめると、二人は再び麓を目指して、山を下り始めた。
石像の横を通り過ぎた時――
グローブは、ふと足を止めた。
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*チサト:
どうしたの?
=
*グローブ:
なぜか、懐かしい気がするんだ。
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*チサト:
……そう……。
=
チサトは何か言おうとしたが、言葉が見つからなかった。
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*グローブ:
……なんだろう?
この感じ……。
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そして、再び歩き出した。
しばらくすると――
二人は雲の中へと入っていった。
――……ぽつ……。
ぽつ……ぽつ……。
ぽつ……ぽつ……ぽつ……。
島に降り注ぐ単調な雨の音が、二人の耳に戻ってきた。
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*グローブ:
雨だ……。
=
*チサト:
レインコート、着なきゃ。
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二人はレインコートに袖を通した。
それから、急いで山を下りたが、麓まで下りてきた頃には――
辺りはすっかり暗くなっていた。
一度、《スウィートウィート》を採りに山頂へ引き返したため、予定より遅くなってしまったのだ。
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*チサト:
うわぁー、もう真っ暗だ……。
やっと、門のところだよ。
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*グローブ:
うん、もうちょっとだね。
急ごう!
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そして――
門を開けると、二人の目に『アレキサンドライトの泉』の光が、【紫】になっているのが映った。




