第013話:三日月
第一章:止まない雨の島
―前回のあらすじ―
『オパールマウンテン』を登るグローブとチサトは、ついに雨雲を抜けた。
そこで二人が目にしたのは、藍色と茜色が混ざり合う、美しい夕空だった。
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*チサト:
昔、見た空と同じだ……。
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*グローブ:
うん、そうだね。
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*チサト:
えっ?
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*グローブ:
この空、見た瞬間に――
なんか「見たことある」って感じがしたんだ。
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チサトは、驚いたように目を見開いたあと、どこか安心したように微笑んだ。
それから、下から吹き上げる風を感じて視線を落とした。
すると、灰色の雨雲が島を包み込むように広がっているのが見えた。
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*チサト:
グローブ……下……。
下を見て。
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*グローブ:
本当に島全体が、雲に包まれてるんだ。
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*チサト:
少し……怖いかも……。
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*グローブ:
ボクは全然怖くないよ。
……なんだか、雲が守ってくれてるみたいだから。
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*チサト:
……そう……?
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日が沈むにつれて、あたりは急速に暗くなっていった。
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*グローブ:
急がなきゃ……。
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*チサト:
あっ、あそこじゃない?
お母さんが言ってた岩屋って。
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*グローブ:
たぶん、そうだよ。
走ろう。
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二人が岩屋にたどり着いた時には、すっかり日も落ちていた。
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*グローブ:
はあ、はあ、はあ。
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*チサト:
あー、疲れたー。
……とりあえず、火、点けるね。
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*グローブ:
うん、お願い。
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チサトは小さなランプに火を灯した。
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*チサト:
なんかさぁ……。
すごい、静かだよね。
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*グローブ:
うん……。
雨の音に慣れてるから、静かすぎて、怖いよ。
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*チサト:
ふふっ、グローブって面白いね。
あの島を包む灰色の雲は、怖くないのに――
静かなのは、怖いんだ?
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そして――
食事を終えた二人は、気分転換に岩屋の外へ出てみることにした。
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*チサト:
す、すごーい……!
キラキラしてる。
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*グローブ:
本当だ……。
ひとつだけ、大きいのがあるけど……。
あれが「月」だよね。
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*チサト:
うん。
あれはたぶん、三日月だね。
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*グローブ:
三日月?
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*チサト:
月は毎日、形を変えるんだよ。
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*グローブ:
えっ、そうなの?
ボクが見たことある本では、あの形しか載ってなかったよ。
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*チサト:
えっと……満月って聞いたことない?
まんまるの月のことなんだけど。
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*グローブ:
あっ、ある……。
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二人は初めて並んで見上げる夜空に、夢中になっていた。
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*グローブ:
夜って、こんなに綺麗だったんだね。
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*チサト:
うん。
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二人は眠くなるまで夜空を眺め、やがて岩屋に戻り、眠りについた。
◇◇◇
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*???:
よくぞ、来てくれました。
グローブ。
=
グローブはハッとして、身体を起こした。
導かれるように岩屋の外に出ると――
そこには、淡い八色に揺らめく神聖な光が漂っていた。
それは鳥のようでもあり、獣のようでもある。
形があるようで、形がない。
近くにいるのか遠くにいるのかさえ、分からない。
不思議な感覚だったが、恐怖はなかった。
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*???:
私があなたを呼んだのは――
この諸島にある「罪悪」を感じてほしいからです。
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*グローブ:
「罪悪」……?
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*???:
この諸島には、『グレーダイヤモンド島』のほかに、二つの島があります。
『ジュエリオ島』と『メロディア島』です。
そこには、あなたの知らない「罪悪」があります。
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*グローブ:
『ジュエリオ島』と『メロディア島』……。
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グローブは、目の前に揺らめく八色の光を見つめた。
その光は、まるで何かを訴えかけるように、静かに明滅していた。
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*???:
その二つの島には、八つの都市があります。
一つ一つの街を訪れ、そこで暮らす人々を見てきなさい。
そして感じなさい。
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*グローブ:
どうして、ボクが……?
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*???:
そうすれば、この島の雨を止めることができるかもしれません。
明日、山頂の祠に向かいなさい。
そこには《カリバーン》という聖剣があります。
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その言葉が消えると同時に、八色の気配は、強烈な光を放ち始めた。
あまりのまぶしさに、グローブは思わず目を閉じた。
◇◇◇
グローブはいつの間にか、岩屋の中で横になっていた。
そして、あの不思議な気配は、完全に消えていた。
岩屋の外は、ぼんやりと白み始めていた。
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*グローブ:
聖剣、《カリバーン》……。
なんで、ボクに剣なんだろう?
戦わなきゃダメなの?
ボクには、絶対に無理だよ……。
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グローブは胸の鼓動を抑えながら、チサトが目覚めるのを待っていた。




