第011話:緑の実の謎
第一章:止まない雨の島
―前回のあらすじ―
《ヘルプリン》によって、火の精霊ラテラと水の精霊ルアンを呼び出せることが分かった。
チサトもグローブとの旅を決意し、二人は『オパールマウンテン』へ向けて準備を始めた。
翌朝――
グローブ、チサト、ナギ、ナミの四人は、自宅の前でマリヤに見送られていた。
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*マリヤ:
グローブ、チサト。
気をつけて行くんだよ。
ナギさんとナミさんは、登山口の門のところまでお願いしますね。
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マリヤはそう言うと、「山門の鍵」をナギに手渡した。
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*ナギ:
よし……じゃあ、そろそろ行くか!
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『オパールマウンテン』は、自宅の裏に広がる『カオスの森』を通り抜け、『アレキサンドライトの泉』を越えた先にある。
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*グローブ:
この『カオスの森』って、なんか出てきそうだよね。
……ボクの家のすぐ裏だけど、おばあちゃんに「入るな」って言われてたから……。
森に入るのは今日が初めてなんだよね。
……ちょっと怖いかも。
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*チサト:
大丈夫だよ。
何にも出ないよ。
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*ナギ:
だが、この一本道を真っ直ぐ行けば、危険はないけど……。
道から外れると、どこを歩いているのか分からなくなるからな。
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*ナミ:
でも、道を外れさえしなければ、危険はないわ。
……迷ったら抜け出せないって意味で『カオスの森』っていうのよ。
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*チサト:
私は何度も、お父さんとお母さんと三人で、『アレキサンドライトの泉』まで行ったことあるから――
今は一人でも、泉まで行けるんだよ。
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胸を張るチサトの頼もしい言葉に、グローブの引きつった顔にも、ようやく笑みが戻った。
そうしているうちに、目の前に広がる光景に、グローブは思わず息を呑んだ。
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*グローブ:
す、すごい。
ここがチサトが前に教えてくれたところだよね。
昼は【緑】で――
夜は【紫】って。
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*チサト:
うん、そうだよ。
でも、私も夜に来たことないから、【紫】になった泉は見たことないんだけどね。
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*グローブ:
……そういえば……ここ……。
ボクが夢で見た場所と、まったく同じだ。
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ぽつ……ぽつ……ぽつ……。
グローブは周囲に耳を澄ませると、どこか不思議そうに小首を傾げた。
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*グローブ:
あれ……夢の中では、川と同じ「しゃん、しゃん、しゃん」って音がしてたんだ。
この泉の水が、川に流れているんだよね?
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*チサト:
そうだよ。
だけど……グローブが言うように、川と同じなら、ここも「しゃん、しゃん」って音がしてもいいはずだよね。
何度か来たことあるけど、気づかなかったよ。
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景色の完璧な一致と、音の不一致。
グローブは胸の奥に小さな違和感を覚えたが――
それよりも前方にたたずむ神秘的な大樹の存在が気になっていた。
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*グローブ:
泉の真ん中に、ものすごく大きな木が立っているよ。
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*チサト:
あれは『ガイアの木』だよ。
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*グローブ:
じゃあ、あの木に《エデンの実》が実ってるの?
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*チサト:
そうだよ。
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そんな会話を交わしながら、四人は『ガイアの木』の根元へとたどり着いた。
見上げれば、【緑】の《エデンの実》が、無数に実っていた。
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*グローブ:
……確か……。
【緑】の《エデンの実》は危険だから、採らない方がいいんだよね?
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*チサト:
えっ、なんで!?
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*グローブ:
おじいちゃんの研究ノートに書いてあったんだ。
「【緑】の《エデンの実》で戦争が始まって」……。
「【紫】の《エデンの実》で戦争が終わった」って。
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*チサト:
えっ、ウソ!?
【紫】の実もあるの?
……知らなかった。
でも、【緑】の《エデンの実》は危険じゃないよ!
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*グローブ:
なんで、危険じゃないって、言い切れるの?
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*チサト:
それは、食べたことがあるからだよ!
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*グローブ:
えっ!?
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*ナギ:
なるほど……。
ジェンドさんのノートに、そんなこと書いてたのか。
じゃあ、昔、何かあったのかもしれないな。
だけどな、グローブ。
この【緑】の《エデンの実》は、本当に危険じゃないぞ。
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そう言うとナギは、【緑】の《エデンの実》を一つもぎ取って、かぶりついた。
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*ナギ:
うん、美味い!
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*グローブ:
本当に大丈夫……?
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*ナギ:
ああ、何ともねえぜ。
なんなら、目が覚めるみたいに、頭が冴えわたってきてるぜ。
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*チサト:
それにグローブも、もう食べてるんだよ。
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*グローブ:
えっ、どういうこと?
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*チサト:
グローブの誕生日のお弁当に使った隠し味って――
この【緑】の《エデンの実》だもん。
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*グローブ:
えーーーっ!!
そうだったの?
あの頭が「シャキーン」ってなる隠し味って、これだったの?
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*チサト:
そうだよ。
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*グローブ:
それじゃあ、おじいちゃんは、なんでノートにあんなことを書き残したんだろう……?
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*ナミ:
グローブ……。
アンタ、ジェンドさんのノート、何か読み飛ばしたんじゃない?
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*グローブ:
うーん……そうなのかな……。
でも、そうかも。
急いで読んでいたから、何か大切な部分を読み飛ばしちゃったのかも……。
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グローブは、お弁当の美味しさの秘密に納得しつつも、祖父が残した不穏な言葉が頭から離れなかった。
あの「戦争」という二文字。
なぜ、【緑】の《エデンの実》で戦争が始まったのか?
なぜ、【紫】の《エデンの実》で戦争が終わったのか?
《神秘のマナ》の素材をすべて集めれば、その理由が分かるのだろうか?
そして――
『オパールマウンテン』には何があるのか?
グローブは目の前にそびえる巨大な山を見上げていた。




