第八話 後戻りできない決意
「おーい。起きなよ」
誰かに揺さぶられ目を覚ます。どうやらあのまま寝てしまったようだ。
時計を見ると、17時を回っている。
「うっそ!こんなに気絶してたの?」
「まったく。よく寝るなあ、と思ってたら気絶してたの?」
起こしてくれた人の方を見ると、アウラの妹の、ネウルスだった。
「あれ?帰って来てたの?」
「ついさっきよ。姉にお世話を頼まれて帰って来てみれば、なんで姉の部屋で作業しているの?」
「だって、ここにいると落ち着くから」
「まあ、分からなくはないけど」
姉の部屋を眺めながら、懐かしそうにしていた。
「それで、姉は?」
びくっと体を震わせる。
「え?何も聞いていないの?」
ネウルスが不思議そうに首を傾げている。
まさか、伝えていないのだろうか。
自分から言うのはとても心苦しい。だけど、言わなくてはならない。
「その、アウラ姉さんは、スキエンティア王国との戦争に…」
ネウルスは何も言わない。
その沈黙が私にとって、とても恐ろしかった。
「ふーん。そうなんだね」
ネウルスはいきなり、アウラ姉さんの机を漁り始めた。
「な、なにを」
「やっぱり、そうなのね」
ネウルスは机の中から一通の手紙を出して、少し眺めた後、私に渡してきた。
「見てみな」
言われるがままに、手紙の中を見てみる。
「え?そ、ん、な。うそ、でしょ?」
そこには、私にとっては信じがたいことが書いてあった。
「ここに書いてあることが本当なら、私のせいで、アウラ姉さんは戦争に?」
「多分、ね」
私は膝から崩れ落ちた。泣いてはいけない、分かっていても、涙が溢れる。
ネウルスがそっと抱きしめてくれる。
「お前は悪くない。姉さんが、あんたが大事だから、代わりに行ってくれたんだよ」
「でも、そのせいでアウラ姉さんは死ぬかもしれない!」
責任感と罪悪感で胸がいっぱいになる。
私のせいだ、私がアウラ姉さんよりも先にこの手紙を読んでいれば。
だけどどうしようもない。もうアウラ姉さんは戦場に行ってしまった。
だったら、私が責任を取るしかない。
「私が、この戦争を終わらせる」
いきなりの宣言に、ネウルスは驚きを隠せていない。
「なにを言っているの!姉さんから聞いてる。あなたは銃はからっきしなんでしょ?」
「私にはこれがある」
魔法で、炎を出して見せた。
「魔法には、銃と違って無限の可能性がある」
「インキュラムサイトの前には無力よ!」
また、その名前か。本当に嫌になるね。でも
「もうすでに、インキュラムサイトは対策してあります」
「どうやって?どうするつもりなの?」
ずっと、自分で考えてきたことを話すことにした。
「インキュラムサイトは、魔法を吸収する。ならば魔法を吸収できないように、魔法に保護をかければいい」
「一体何を言っているの?」
ネウルスは私の話が理解できていないようである。
「つまり、魔法を吸収されない保護魔法を創ればいい」
「その意味 分かって言ってるの?」
「そうですよ?簡単じゃないですか。魔法を創るなんて」
ネウルスはもう空を仰いでいる。
呆れているのだろうか
「もうなにも言わないわ。あなたの好きにしなさい」
その一言に私は力強く答えた。
「言われなくとも!」
その後、私は夜ご飯を食べ、戦場に行くための準備をした。
「私の夢は、魔法で世界を駆け抜けること。銃に頼り、魔法のすばらしさを忘れた愚か者たちに目にもの見せてやる」
夜 眠れない私はベランダから月を眺めることにした。
地上はこんなにも醜い争いをしているというのに、空はとても綺麗である。
「空を駆け抜ける鳥のように。ド派手に魔法を使い、アウラ姉さんたちを救って見せる」
「ふむ。応援しておるぞ」
どこからか声が聞こえてくる
「ふふ、久しぶりだね。あなたから話しかけてくるなんて」
「ただの気まぐれよ」
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