表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜  作者: 東雲 寛則
最終章 そして、

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

527/588

527話 復讐者

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 遥斗が咆哮と共に殴りかかった。

 魔法も、スキルも、アイテムもない。

 ただの激情に任せた、素人の右ストレート。


 バシッィィ!


「……遅すぎる」


 涼介はそれを片手で軽々と受け止めた。

 微動だにしない。

 レベルの差、ステータスの差は絶望的だ。


「食らってやらんこともないが、俺はそれほどお人好しじゃないんでな」


 ドグォッ!!


 涼介が蹴り飛ばす。

 遥斗の身体がボールのように吹き飛ばされ、宙を舞う。


「がはっ……!」

「遥斗!」


 数メートルも飛ばされた遥斗を、大輔が辛うじて受け止める。

 衝撃で二人とも地面に倒れ込んでしまった。


 大輔は遥斗を羽交い絞めにして押しとどめようとする。


「放せっ!殺す……あいつを殺すんだぁ!」

「落ち着けって!気持ちは分かる!痛いほど分かるけどよぉ!」


 それでも遥斗は止まらない。

 暴れ続けた。


「今はそんな事してる暇はねーんだよ!世界がヤベェんだ!とりあえずあいつらに従って、逃げねーと死ぬって!」

「……うるさい」

「え?」


 遥斗の真っ赤な瞳が、大輔を捉えた。

 そこには、かつての友を見る温かさは微塵もなかった。


「……邪魔だ」


 遥斗の左手が、大輔の胸に触れる。


「ポップ!」


 シュウウウウ……!


「う、わぁ!?な、何すんだよ、力が……!?」


 大輔の身体から、残っていた僅かな力が根こそぎ吸い取られていく。

 勇者の加護を失い、弱体化していた『竜騎士』の力。

 それでも、職業の力そのものを、遥斗は素材として抽出した。


 大輔の手から力が抜け、遥斗の拘束が解ける。

 遥斗の手の中には、二本のポーションが握られていた。


「は、遥斗……お前、まさか……?」


 大輔が震える声で問う。

 遥斗は答えなかった。

 躊躇いなく、友の力を犠牲にして作ったポーションを一気に飲み干す。


 ドクンッ!!


 遥斗の身体が脈打つ。

 全身に竜のようなオーラが浮かび上がり、爆発的な力が漲る。

 『竜騎士』のスキルが、遥斗の肉体に追加された。


「……ッ、アァァァァァァァッ!!」


 怒りにかられた遥斗の思考回路は、もはや「戦うこと」以外を焼き切っていた。

 友を裏切ろうが、何を犠牲にしようが、関係ない。

 目の前の、あの薄ら笑いを浮かべた男を殺す。

 それだけが、今の彼を動かす全て。


「グングニールッ!!」


 遥斗が虚空に手を伸ばす。

 竜騎士の魔力が収束し、蒼き光を放つ巨大な槍が出現した。

 伝説の武器を模した、魔力の槍。


「くらえぇぇぇぇぇぇッ!!ドラゴン・ダイヴ!!」


 遥斗がドラゴンのオーラを纏って飛翔する。

 流星のごとき速度で、上空から涼介目掛けて急降下攻撃を仕掛ける。

 蒼き槍の切っ先が、涼介の心臓を狙う。


「……懲りない奴だ」


 涼介は冷ややかに龍を見上げた。

 彼の手にはもう武器はない。


 先ほどの激突で『無双ノ剣』は砕け散っている。


 丸腰だ。

 だが、涼介は慌てなかった。


(イメージしろ。……俺の、最強の剣を!)


 涼介は心の中で描く。

 勇者のみに許された、絶対的な力の象徴。

 世界を救い、悪を滅ぼす、究極の刃。


 光が集まる。

 形を成す。


 カッッッ!!!!


 涼介の右手に、眩いばかりの光の剣が実体化した。

 それは魔力で作った擬似的な剣ではない。

 勇者の魂が具現化した、聖なる武具。


「これこそが、真の勇者に使う事が許された剣……」


 涼介が剣を掲げる。


「勇者の剣『アルティマイト』!!」


 激突の瞬間。

 遥斗には、その剣の輝きなど見えていなかった。


 何も見えない。


 何も聞こえない。


 ただ、母を奪った理不尽を、正義面した絶望を、叩き潰したかった。


「ウオォォォォォォォォッ!!」


 蒼き流星と、白金の閃光。

 崩れゆく世界の中で、二つの力が交錯した。


 !!!


 蒼き稲妻と白き閃光が激突した瞬間、世界から音が消えた。


 あまりにも巨大なエネルギーの衝突は、大気を振動させる前に空間そのものを歪曲させたのだ。

 一瞬の静寂の後、天地を引っくり返すような爆音が轟き、衝撃波が白き大地を吹き飛ばした。


「ゥ、オオオオオオオオオオオオオッ!!」


 遥斗は絶叫していた。

 右手に握った魔力の槍『グングニール』に、ありったけの憎悪と殺意を注ぎこんで。


 『竜騎士』のスキルと風魔法による加速の乗算。

   普通なら、城ひとつを消し飛ばして余りある威力だ。


 だが。


「……どうした、遥斗。そんなものか?」


 涼介は笑っていた。

 遥斗の必殺の一撃を、光の剣『アルティマイト』一本で受け止めている。

 その腕は微動だにしない。


 涼しい顔で、まるで戯れのように拮抗させている。


「貫け!貫け!貫けぇぇぇぇぇぇッ!!」


 遥斗はさらに魔力を込める。

 血管が切れ、全身から血が噴き出すのも構わず、命を削って槍を押し込む。


「ククッ、いいぞ!その目だ!その憎しみだ!俺を恨め!世界を恨め!そして正義を感じろ!」


 涼介の瞳が、恍惚と輝く。

 彼はこの状況を望んでいた、楽しんでいた。

 親友が自分を殺そうとするほどの感情を向けてくれている事実、そして自らの力で導いていく優越感。


「その先にしか本当の正義はないんだ」

 涼介が、スッと瞳を細めた。

「お前の憎しみは、正しい……正しく、そして間違っている。まだ俺の『正義』には程遠い!断罪するには己が誰より正しくあらねばならない。私怨で戦うお前には裁く権利はない!気付け!遥斗!」


 遥斗の世界が染まっていく。


 赤く、紅く、朱く……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ