第25話
「「「タイマーストップ!」」」
「記録!12時間35分12秒56!」
「「「シャアァァァァァ!記録更新!」」」
「完走した感想は!」
「やっぱり…あそこの鉄板を………」
俺達は、寮から暫く進んだ先にあった、全天候ドームを見上げていた。
「…本当に大きい物って…目の感覚が…狂うって…父様が言ってたけど…」
「この大きさを12時間?なに言ってんだあの人達?」
呆然と見上げる俺達と、無茶苦茶盛り上がる先生達。
「一番時間をかけたところは?」
「安全対策の補強部分ですね!超巨大地震だろうが、隕石だろうが、ビクともしない出来に仕上がったと思います!」
「逆に一番楽だったところは?」
「大きさじゃないですかね?ある程度の広さを作ったら、後は拡張魔方陣設置して終わりでしたから」
あれである程度の大きさ?
「…やっぱり…頭おかしかった…」
そのような感じで、盛り上がる先生達を呆然と見続けるのだった。
「ドームの完成と、新記録達成を祝して………カンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」
現在我が寮では、最早恒例となりつつあるパーティーが開かれていた。
押し掛けてくると同時に、拡張魔方陣が設置された我が家のリビングでは、現在50人を超える先生・生徒が詰めかけており、酔った勢いでの、無許可の改造があちこちで行われている。
「…もう…地獄絵図…」
「そうだな…」
俺達二人は、遠い目をしながら、晩のおかず予定だったお肉屋さんのコロッケを食べている。
サクサクの衣に、肉汁が染みたジャガイモ。
ああ、このコロッケ無茶苦茶美味しいやつだぁ…という感想を抱きながら、次々と改造されていく部屋を眺める。
「…窓の横に…武器庫の扉…作ってるね…」
「庭側にはガーデニング用の扉だってさ…」
わーい今まで手が付けられなかった庭に、手が出せるようになるぞー。
「…とうとう…機械の実験まで…始めたね…」
「ああ、庭が一瞬で綺麗になったな…」
わーい小ジャングルと化していた庭が、一瞬で庭園レベルに生まれ変わったぞー。
「…余った資材で…体育館が出来たね…」
「記録更新できなかったって、嘆いてるな…」
もう、こっちが寮付きの訓練場で良いんじゃないかな…
「…皆…体育館に…移動していったね…」
「あっちでも色々やるんだろうなぁ…」
「…これ…どうする?…」
ソフィが指差すのは改造されたリビング。
「もう…そのままで良いんじゃない?」
なんか、謎の研究室とか…工房とか出来上がってるけど…
「…戦闘学部に…締め付けられてたって…言ってたから…」
「爆発しちゃったかぁ…」
出来れば…この寮内じゃ無かったら嬉しかったんだけどなぁ…
「…旧校舎…どうなっちゃうんだろう…」
「許可…出しちゃったもんなぁ…」
これが、押さえ付けられた反動から来る暴走ってだけなら…良いんだけど…
「…あっ…体育館が…」
「へ?なに?」
うわぁ…倍くらいの大きさになってるぅ…
「…これ…寮に当たる太陽…遮るんじゃない?…」
「洗濯物が乾きにくくなるな…」
せっかく干す器具買ったのにな…
「流石に文句言…い…に…」
「…体育館…動いたね…」
「そうだな…」
なんだろう…この人達…
「…進…」
「どうした?」
「…なんか…常識が…壊れていく音が…する…」
「奇遇だな…俺もおんなじ音がしてるわ…」
その後…片付けが終わっても、風呂に入り終えても、次の日になっても、彼等・彼女等の宴は終わらなかった。
「朝御飯…美味しいな…」
「…お肉屋さんで…教えてもらったパン…美味しいね…」
「所でソフィ?」
「…なに?…」
「俺今、幻覚見てるのかな?」
「…どんなの?…」
「家の窓から、巨大研究施設らしき物が見えてるんだけど…」
「…それなら幻覚…私にも…同じのが見えてるから…」
「そうか、それなら良かった」
朝御飯…美味しいなぁ…
「そう言えば昨日、いろんな話をしてたよな?」
「…ん…地下鉱脈が…どうとか…建材には…困らないとか…」
そっかぁ…困らないかぁ…
「そう言えば昨日、仮眠室の建築を許可したんだよ…」
「…私も…見てた…スカイが…管理するやつ…」
朝御飯…美味しいなぁ…
「…パンのお代わり…食べる?…」
「うん、もらえる?」
「…ん…一緒に…焼いてくる…」
そう言えば、昨日片付けの時に庭に出した技師学科集団の荷物がないな。
「ソフィ、あれ…見に行く?」
「…まだ…現実逃避…してたい…」
ピンポーン!
「ソフィ…行こうか…」
「…あっ…あぁ…現実…逃避が…」
覗き窓から…あぁ、赤上先生ですね…
ガチャっと扉を開けて、挨拶をする。
「おはようございます、赤上先生」
「おっはよう!黒田君!まあ、こっちはオールナイトなんだけどね!」
ソフィ、耳を塞ぐんじゃないよ…俺だけに現実を見せに来るんじゃないよ…
「…進?…なに…するの?…」
「ソフィ…俺達は、いつも一緒だろう?」
「…いやっ!…現実を見る時まで…一緒じゃなくて良い!…」
「フフフ…死なば諸ともだよ…ソフィ!」
「…うぅ…進の…いじわる!…」
ソフィの手を外しながら、赤上先生に話の続きをお願いする。
「もう良いの?じゃあ、言うね!訓練場と仮眠室の建設が完了しました!引き渡しは放課後にするから楽しみにしといてね!」
その言葉に崩れ落ちる二人。
「あぁ…俺が今まで培ってきた常識が!」
「…あぁっ…常識が…常識がぁ!…」
「アハハハハ!その反応久しぶりに見たよ!流石はラフィアと聡一郎の子供だね!」
あんた前にもこんなことしてたのかよ!
「それじゃあ、私は今から寝に戻るから!じゃあね!」
そうして赤上先生が帰った後も、暫くうちひしがれていた二人であった。




