第24話
「帰るか」
「…ん…」
激動の一日を終え、帰路に就く俺達。
なにも無い放課後なんて、学園に入って初めてじゃないか?
「…おっかいっものー♪…おっかいっものー♪…」
そして…やっと…ソフィとの約束が果たせる日でもある!
思えば…クラス分けの日から続いた激動の日々…やっと…やっと普通の生活が帰ってきたんだ!
「今日行くのって、ホームセンターだったよな?」
今回行く場所は、寮のポストにチラシが入っていたホームセンターである。
『学園最大級』と銘打たれたそのホームセンターは学園の教員・生徒専用として運営されており、土日にある一般開放日を除けばガラガラとの噂である。
「…ん…洗濯籠とか…買わないと…」
「そうだよなぁ…毎回1時間くらい部屋から出られなくなるのはキツいもんな…」
洗濯籠がない現在…手で持ち運ぶのも相まって、洗濯物を落とす事件が多発。
お互いに、『洗濯物とは言え下着等を見るのは如何なものか』という倫理観の元、何往復かしてチェックするのだが…無茶苦茶時間がかかる!
「…洗濯籠があれば…ポロリが減る!…」
フンスと気合いを入れるソフィ。
そんなに気合いを入れなくても…と思うが、過去二回程落ちた下着が発見されているので、本人としては大事なのだろう。
「おぉ…」
「…おっきい…」
流石は学園最大級と言ったところだろうか…超巨大なその施設は、これだけで全ての物が揃うのでは…という安心感を与えてくる。
「入るか」
「…うん…」
未だに呆然としているソフィの手を牽きながら、施設の中へと入っていく。
「ここかな?」
「…ん…多分そう…」
洗濯コーナーと銘打たれたそのコーナーには、洗濯機から物干し竿まで、ありとあらゆる洗濯関連のグッズが置いてあり、そのどれもがお手頃価格となっている。
「洗濯機とかは、予算が出てないんだっけ?」
今現在…我が寮でお世話になっている洗濯機は、製造年が30年前を越えており…流石に買い替えたい代物なのだが…
「…ん…技師学科の…試作品を…使って欲しいって…」
そんな理由で、予算が出なかったのだ。
「はぁ…せめて洗濯機位は、市販のが良かったんだけどな…」
同じ理由で、ほぼ全ての家電製品に対して予算が降りておらず…なんとも不満な結果となっている。
「おっこれか?」
洗濯籠が沢山置いてあるコーナーに到着した。
「なになに…オススメはこの自動籠製造機です…毎回新たな籠を作るので清潔だし、使い終えた籠を材料にするのでランニングコストがかかりません…か」
「…むうぅ…でも高い…」
「まあ、機械だからなぁ…」
結構な大きさもあるし、他の籠と比べると10倍近くの値が張るからなぁ…
「こういうので良いんじゃないか?」
俺が指差したのは、折り畳める洗濯籠。
これなら、縦にも重ねられるし横向けで差し込むことも出きる。
「…そうだね…安いし…」
そして値段もリーズナブル。
欠点は少し重い所だが、身体強化の前には誤差範囲である。
次に来たのは洗濯干しのコーナー。
間にあった物干し竿のコーナーでは、ちょうど良い長さの物が一発で見付かったため、割愛である。
「…二つのコーナーが…合体してる?…」
その声に、コーナー名が書かれている吊り下げ式の板を見ると…
「洗濯干し兼室内干しコーナー?」
何故この二つを合わせたのかは、今一良くわからないが…まあ良い。
後で見に行く予定だったので、短縮できて良かったと思っておこう。
「ああ、なるほど」
ざっと見てみてわかったが…ここは恐らく、纏め売りが基本のコーナーなのだろう。
「…メーカー毎に…なってる?…」
室内干し用の器具が、メーカー毎の洗濯干しとしっかり連結されており、同時に使う前提の物だというのが良くわかる。
「どれを買うかな?」
洗濯干しに大きな違いは無いので、室内干し用の器具で判断することになる。
「…おっきいのか…小さいのか…」
その差は分かりやすく、コンパクトで嵩を取らない代わりに、干せる量も少ない物か、大きく嵩は取るが、大量に干せるもの…
値段は後者の方が高く、悩みどころである…
「予算はどう?」
今回の財布を握っているのはソフィなので、その予算を聞いてみる。
「…予算は…この後を…考えると…あんまり無い…」
「んじゃ、安い方にするか」
洗濯物を溜め込まなければ、十分に干しきれる大きさだしな。
「…ん…そうだね…」
ソフィがセットの値札の下にあるカードを取り、洗濯籠の上に置く。
後は、赤上先生オススメの洗剤を買うだけだな。
「全部送れて良かったな」
「…ん…楽できる…」
買い物を終え、帰路に就く俺達。
「しかし、旧寮までの道が一本しか無いのは何でなんだろうな?」
正確には舗装された道が…ということではあるが。
「…学園長は…当時予算が…無かったからって…言ってた…」
まあ、そんな感じが妥当なんだろうな…
「無いよりは良いか…」
「…学園まで…最短距離だしね…」
「お陰で、道の大半が森の中だけどな…」
正直…ちょっと不気味だなと思っている。
「…進…なんか…見えない?…」
「ソフィ奇遇だな…俺にもなんか見える…」
先程から気にはなっていたのだ。
木の上にガッツリと見える建造物が…
「あれ…今朝家出た時は無かったよな?」
「…無かった…はず?…」
あんな建造物があればすぐわかるはずだもんな…
「なあソフィ…俺、あの建造物が何か心当たりがあるんだけど…」
「…奇遇…私も…」
そう言いながら森を抜けると、その全貌が見えてくる。
「なあソフィ…あんなデカイの作れる予算取られてたの?」
「…おかしい…私が確認した…限りでは…そんな…予算………あっ…原材料だけなら…なんとか…集まるかも…」
そこに見えていたのは、家の寮所か学園最大級のホームセンターすら霞むレベルの…超巨大全天候ドームだった。
「あの人たち…頭おかしいんじゃね?」
「…全面的に…同意する…」
そうして、夕暮れの中全天候ドームへと向かっていく俺達だった。




