第26話
「ギルバート…お前の引っ越し先が出来たぞ…」
常識破壊のダメージを引きずるなか、俺はギルバートへと完成の報告をする。
「は?貴様、昨日建築の許可を出すと言ってなかったか?」
「言ったな…」
「しかも、今日から別の建物の建築が始まるから、一月はかかるのではないかと予想もしていたな」
「してたな…」
「それが、昨日の今日で出来ただと?私を馬鹿にするのも大概にしたらどうだ!」
「うん!そうだよな!そう思うよな!」
「…流石…スカイ…わかってる…」
「おっおい、貴様ら…どうしたんだ?気でも狂ったんじゃないか?」
「そうだよな!きっとそうなんだよな!」
「…やっぱり…あれは夢…幻…」
「おっおい!本当にどうした!」
その時、ガラガラっと扉が開き、生崎先生が入ってくる。
「おっはよーう!あっ黒田君!工事終了おめでとう!」
「うわぁぁぁぁぁ!やっぱり現実だったぁぁぁぁぁ!」
「…あぁっ…いやっ…」
「貴様ら!やはり私を馬鹿にしてるだろう!」
そんなこんなで、ギルバートに放課後付き合ってもらう約束を取り付けつつ、一日が始まる。
「あー…帰るか」
現在、五・六時限目ぶっ通しのトーナメント練習…のはずだったんだが、五時限目の始めに、昨日と同じ闘技場だったのが原因だろう大発狂事件が起こり…授業は中止。
その授業を担当していた教師が、今日の授業続行は不可能だと判断し、そのまま帰宅と相成った。
「それで、私の旧寮への転寮はどうなったのだ?」
「あーそれな」
一応、ホームセンターからの帰りしに学園長に電話してみたんだが…
「なんか、二つ返事で許可取れたわ」
グランド家の嫡男?いいぞ!ってな感じで決まったんだけど…
俺の覚悟は一体…
まさか、アポ取りの為の電話で許可が取れるとは思いもしなかった…
「そうか…まあ、総長からの要請であればそんなものか」
「…スカイ…総長について…詳しいの?…」
「ぐぬぅ…まだその呼ばれ方はなれんな…質問に関してだが、私は特に総長について詳しくなど無い。
精々、生徒内での最高権力者…程度の認識だ」
「…そう…わかった…」
「それよりも、横の男に聞いた方が早いのではないか?そいつは現総長なのだろう?」
「俺は、消去法でなっただけのお飾り総長だからな…知識もなにもないよ」
いや本当、半ば無理矢理にね!
「いや、そんなものでなれぬの位私にもわかるわ!」
「それが、そんなものが理由なんだなぁ…」
「…因みに…私が…副総長…」
いつも通り、むふーと言いながらどや顔をするソフィ。
いや、総長俺に押し付けたの貴女ですよね?
「いや、まさか…そんなこと…あるわけ…」
自分の世界に入り込んだギルバートを放置しながら、寮の方へと歩いていく。
「いや待て、ここから先は森だぞ」
「ん?道があるけど?」
「いや、何を言ってるんだ?」
「え?」
「…ちょっと待って…」
「どうした?ソフィ」
「…そう言えば…アリーも…ここ通る時に…戸惑ってた…」
「そんな記憶が、有るような…無いような…」
あの時はスイッチが入っていたのか、黒アリーが頻出してたからな…怖かった記憶しか無いぞ…
「もしかして、この道…隠されてる?」
「…ん…かもしれない…」
こう言う時は実験に限るな!
「よし!行けぇギルバート!森に突っ込むんだ!」
「は?貴様は一体何を言って………」
「ソフィ押し込むぞ!」
「…ん…」
俺とソフィは身体強化を施しつつ、ギルバートを森の境目であろう付近に向かって投げ飛ばす。
「せーの!」
よいしょー!
「やっやめっ………ぐわぁぁぁぁぁ………あ?」
俺の目には、道路上で投げ飛ばされたギルバートが、道路上に着地したようにしか見えないのだが…あいつの目には一体どう映って見えたのだろうか…
「よーしギルバート、こっちに来て感想を教えてくれ!」
「…スカイ…速く…教えて…」
始めは憤怒の形相を浮かべていたギルバートではあるものの、こちらに来るに連れて、段々と毒気を抜かれたような表情へと変化していく。
「貴様らは…はぁ…もういい。
感想だったか?森に入る直前に道路へと変化したな…今ではもう道路以外の何者にも見えんわ」
「なるほど、なるほど…」
「…ふむふむ…なるほど…」
つまりは…
「一回入るまで限定の結界って所かな」
「…引退した…戦闘員が…よく使ってる…」
「貴様ら…恐らくだが、私が入るより先に結論は出ていたな?」
ギクッ…
「そそそ、そんなことはないぞ?」
「…一回試しにとか…全然考えてない…」
「きーさーまーらー!」
「よっしゃ行くぞソフィ!」
「…ぎゅっ…ゴー…ゴー…」
ソフィをおぶった俺は、全力で走り出す。
「待て!一発ぐらい殴らぬと私の怒りが収まらぬわ!」
そうして俺達と、怒れるギルバートとの追いかけ合いが、始まった。




