第22話
「今日から、魔法・武術強化の授業を統合して、トーナメントに向けた練習を行うことになる!
クラス代表戦に出る者は、俺のところに来るように!以上解散!」
現在三時間目、朝から猛烈に避けられている俺は、同じく避けられている金髪貴族君と先生の前へと向かった。
「お前らが、一組の代表だな」
「そうですね」
「………」
やはり、避けてはいても気になるようで、探るような視線とヒソヒソ声が聞こえてくる。
「もう片方は…生気が無いようだが…大丈夫なのか?」
「あぁ…こいつは朝勘当宣言みたいのを受けたばっかりで…まあ、今日一日はこんな感じじゃないですかね?」
いや、本当に不気味なくらい静かなんで…なんか怖いです。
「ほう…この生気が無い方とは仲が良いのか?」
「無能って噂を流したり、出会い頭に魔法ぶっぱなしてくる奴と仲良くなれる人がいたら、そいつはもう最強の人間だと思います」
「ほう…ではこいつが…」とか言いながら頷いてますけど…本当にわかってます?
得意なこと的に俺が前衛にならざるを得ないと思うけど、三対一になる未来しか見えませんよ?
というかこいつ、本当に怖いんですけど…横からずっとブツブツ聞こえてくるの、むっちゃ恐怖を煽るんですけど!
「なあ…貴様に一つ質問をして良いか?」
唐突に聞こえる質問の声。
「うおっ!ビックリしたぁ…なんだよ?」
身体強化を施しつつ、質問を返す。
「父様は…グランド家は、私を見限ったのだろうか?」
「あん?」
少し考えてみる。
熊先生から貰った情報と、今朝の声明。
「お前…兄弟はいるか?」
「私一人だが…」
で…一人っ子だと…
「うん!わかった!」
「おぉ…では…」
「未練タラタラだな………昔のお前に」
「そう…か」
ここは多分、こいつのターニングポイントなんじゃなかろうか?
「今の…私では…」
そんでもって…それを動かす権利を俺が握っていると…そんなの…そんなの―――
「だからよ?いっちょ派手にやらかしてみねぇか?」
―――燃えるじゃねぇか!
「………は?」
「ククク…良いねぇ!燃えてきた!」
「お前…なに言って…」
「そう言えば…家の近くに仮眠用の家作れとかバカな要望があったな…」
「おい!本当に何を言ってる!」
「よし!金髪貴族…もとい、ギルバート・スカイ!お前旧寮に入れ!」
「は?一体お前になんの権限があって………」
「旧寮総長権限だ!こんだけ無茶苦茶やられてんだ!生徒の一人ぐらい捩じ込んでやる!」
勝手に旧寮住まいにさせるわ…総長にまでなるわ…知らない間に資金使われてるわ…
フッフッフ…これぐらい押し込めるカードは持ってるんですよ…
「は?なに?貴族が…総長?」
「そうだ!ひねくれただけの神童が!ちょくちょく片鱗見せんじゃねぇよ!」
本当に苛つくが、こいつ攻撃のタイミング間違えたこと無いんだよな…
「は?…え?…は?」
「ほらチャッチャとハイって言え!今なら仮眠室管理者の権限もやる!」
「いや…その…」
「早く言え!お前に残された道はハイかYESだ!」
「わっ…わかった…」
「はい!一名様ごあんなーい!」
「…犠牲者…増える…」
「あっアイスバーグ!貴様、一体何時から!」
「…始めから…いた…」
俺も今の今まで忘れてたけど、ずっと背中に引っ付いてたんだよな…忘れてたけど…
「ククククク…ハハハハハ!」
やべっ!先生の存在も忘れてた!
「良いもん見せてくれるじゃねぇか!気に入った!旧寮への転寮願いは俺も口添えしてやる!」
「おぉ…先生…」
よし、これでカードが一枚増えた!
ん?前に歩いてきた?俺達も通りすぎて………うわっ!クラスメイトがむっちゃこっち見てる!
「お前ら、安心しろ!こいつは無能でも化け物でもなく、ただ痛いこと言うだけの中二病患者だ!」
「おいぃぃぃぃぃ!なんちゅうこと言ってくれてるんですか!」
「そんでもって、てめぇらのクラスの代表でもある!」
シン…と静まり返る。
「そして、てめぇらが越えなきゃいけねぇ壁でもある!」
ざわざわと、どよめきが広がっていく。
「観念しろ!てめぇらが今からなろうとしている職業ってのはそう言うもんだ」
ズシンと、その言葉が重くのし掛かる。
「化け物なんざ、これから何度でも当たるんだ!この中二病患者で耐性つけれる奴は幸運だと思え!」
「あのぉ…出来れば中二病連呼は止めて頂ければうれしいなーっと…」
「てめぇらが撃った魔法なんざ、豆鉄砲みてぇなもんだ!こいつも気にしてねぇんだからちゃっちゃと振り切れろガキどもが!」
「そんなこと一言も………」
「俺…目が覚めました!黒田君スマン!これからは心を入れ換えて頑張るから!どうか…許して下さい!」
そうして、次々に沸き上がる謝罪と改心の声。
うおぉ…これでノーとは言えねぇ…
でもなぁ…ソフィの泣き顔見ちまったからなぁ…
「…進…」
「どうした?」
「…もしかして…私の事で…悩んでる?…」
「そうだな…一番苦しかったのはソフィだろうしなぁ…」
俺はまあ、三日間寝てただけだったからな…
生崎先生曰く、ソフィは当時相当憔悴してたみたいだし…
「…なら…これ…私が貰っても…良い?…」
「よし、任せとけ!」
「…ん…」
俺が悩んでいる姿を見てシンとしていたクラスメイトも、俺が顔を上げると同時に此方に注目する。
「はっきり言おう!お前達が謝るべきは俺じゃない!」
その一言に、ざわめき出すクラスメイト。
「俺が寝てる中、お前達の罵倒にも負けず、看病を続けてくれた人がいる」
視点が、俺の後ろへとはっきりずれた…今だな。
「後は任せた」
「…ん…任された…」
俺はそのまま横へと逸れていく。
ここでお役御免だな…
「…私は…あなた達が…やった事を許さない…」
ざわめいていた声が完全に消える。
「…進を…私にキラキラをくれた人を…殺そうとしたことは…絶対に許さない…」
無意識に魔法が発動しているみたいだ…辺りの温度が急激に下がっていく。
「…だから…私が納得できるだけの…成果を出しなさい…」
バチッバチッと放電しながらの一言は、誰もが平伏する程の…重い…重い一言だった。
「…さもなくば…」
ズガァン!
「…私が…我慢できなくなる…」
落雷を背景にしたその姿は、見るもの全てに恐怖を与える。
あるものは恐怖で体を震わせ、あるものは失禁し…あるものは気絶していた。
『キーンコーンカーンコーン!』
「…励みなさい?…」
テクテクと歩いていくソフィを、止められるものなどだれもいなかった。




