第21話
「地震が怖い?」
「…うん…そう…」
暖かな陽射しが照らす教室は、俺達が入った瞬間にどよめきたったが、今の一言で収まり始める。
「…アリーは…怖くないの?…」
「私はほら…父親が爆発狂だから…」
「「「あぁ…」」」
クラス中から響く納得の声と、目のハイライトが消えるアリー。
これ以上話を続けると、暗黒面が出てきそうだと戦慄していると、ガラガラという音と共に生崎先生が入ってきた。
「ハーイ!おっはよーう!」
なんかやけにハイテンションだな…
「…今日は…二日酔い…してないね…」
「そうだな…」
前回のパーティーの時は大分グロッキーだったからな…
「先生、昨日の決闘の事なんですが!」
げっ金髪貴族君がこう言うって事は、何かしら作戦が開始したのか?
「あっそれなんだけどね、立会人が非常勤講師だったから…成立してないよ?」
「「………はい?」」
そんなことある?
「後、グランド家からの声明があったから読み上げるね?」
そう言えば、魔法強化の先生が抗議文送るって言ってたっけ…
「学園内にいる限り、ギルバート・グランドが我が家と一切の関係が無いことをここに表明する。
今後、名を明かす時はギルバート・スカイを名乗る事とし、ただの平民として生きよ。
以上をもって声明とする。
だって」
「なっ…なっ…」
ウワーオ、マジかよ…金髪貴族君の親父さんも思い切った事するなぁ…
「スカイ君には手紙も送られたそうだから、後で寮のポスト見といてねー」
金髪貴族君、絶句してるじゃん…
「それじゃあ!楽しい楽しいお知らせタイムだよー!」
すげぇなこの人!この地獄みたいな空気の中、よくこんなハイテンションで喋れるな!
「毎年恒例の、新入生トーナメントが開催されることが決定しましたー!」
ああ、昨日言ってたやつね?パラパラと頷いてる人もいるから、知ってる人は知ってる程度の情報だったんだな。
「それに伴って、トーナメント決勝の後に行われるエキシビションマッチが、変更されました!」
あれ?そんなことしてたのか?じゃあもう新旧戦無くてもよくない?
「その名も…新旧戦!」
え?エキシビションマッチをそれに変えるの?グレードダウン以外の何者でもなくない?
「新寮…つまりは今このクラスの大多数が住んでる寮と、旧寮…つまりは昔ながらの寮の戦いだね!」
ぼかされてるけど、居住者二名だからね?戦いにすらならないからね?
「ただ、旧寮は今年から復活したこともあって、一年生しか住んでないからね…」
当たり前だよ!学園長が嫌がらせのために復活させたんだから!
この前酒に酔ったときに『新入生はどうせ来ないんだから、二人専用にカスタマイズして良いんだぞ?遠慮せずにな!』って言いながら、ワインセラーを設置させようと画策してきたことからも、二人以上増やしてなるものかという強い意思を感じたね!
「そこで、ハンディキャップが用意されたんだよ!」
…ヒッ…なにか今背筋に冷たいものが…
「旧寮側にだけ、技師学生のバックアップが付くことになったんだよ!」
俺達だけ?………あぁぁぁぁぁ!やりやがった!
「勿論、新寮側は一切手伝わないってルールでね!」
あっ、あいつら…新旧戦を代理戦争にしやがった…
「…進…もしかして…私達…利用された?…」
「みたいだな…」
ニマーと笑いながら此方に顔を向ける生崎先生…が、その顔は一瞬にして驚愕に変わる。
「えぇぇぇぇぇ!ソフィアちゃんが抱きついてるぅぅぅぅぅ!」
「「「今更!?」」」
「なるほど…地震が怖い訳ね?確かに、今日はちょくちょく揺れてるから、そうなるのもわからないでもないわ」
うんうんと頷く生崎先生。
その頭にはたんこぶが出来ており、ついさっきまで煽り散らかしてきた人と同一人物とは思えない。
「…次…煽ってきたら…これじゃあ…済ませない…」
そのたんこぶを作った元凶…ソフィが、プンスコ怒りながら睨みを利かせる。
まあ、俺に抱きつきながらなので、全然怖そうでは無いのだが。
『キーンコーンカーンコーン!』
「あっ、トーナメントのクラス対抗ペア戦は、黒田君とスカイ君のペアで出しといたからね!これでホームルームを終わります!」
「きり………」
「「「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!」」」
「はい?どうしたの?もう1時限目始まるんだけど!」
「そうじゃないでしょ!なんでよりにもよって、この化け物と化け物に喧嘩売ってる二人を合わせるんですか!」
「「「そうそう!」」」
化け物かあ…無能から一気に駆け上がったなぁ…駆け上がりすぎて畏怖の対象にまでランクアップしちゃったけど…
「えー?くじ引いたらそうなったんだもん!別に良いじゃん!」
「「「あんたのくじ運どうなってんだ!」」」
「フフフ…去年は大凶だったけど、今年は大吉だぜぇ!」
振れ幅すごいなぁ…
「あっ、1時限目の先生来たから行くね!」
「「「変えてからにしてぇぇぇぇぇ!」」」
その間に落ち着かないかなぁ…
「…進…そろそろ…戻って…」
「…はっ!意識が飛びかけてた!」
ちょっとだけ変わった日常が、また始まる。




