第20話
「「いただきます」」
手を合わせて挨拶をし、朝食を食べ始める。
「…はむっ…はむっ…そう言えば…」
「モグモグ…どうした?」
「…ゴックン…昨日…学園長が…朝晩走っとかないと…体力が持たないって…言ってたの…」
「ゴックン…ふんふんそれで?」
「…学校生活の…話だと…思ってたんだけど…これを…見越してたのかも…」
「あぁ…首謀者あの人だしなぁ…あり得そう」
そう言えば昨日も、シャワー浴びてから来たって言ってたっけ。
「…だから…私達も…やった方が…良いかなって…」
「そうだなぁ…やった方が………あっ!」
「…?…どうしたの?…」
「そう言えば、改修予定の修練場…今日から着工だわ」
ソフィがチラッとカレンダーを見つつ、頷いて答える。
「…赤上先生は…組み立てるだけだから…直ぐって…言ってた…」
「桐生さんも、明日には出来るって言ってたなぁ…」
なんでも、土魔法やら火魔法やらの合わせ技で、竣工RTAをするのだとか…
「…昨日…お酒…一切飲んでないのが…不気味…」
そうなのだ…あの酒好きの面々の中で、一切酒を飲まない一角があったときは…正直ゾッとした。
「朝の六時から施工開始って言ってたっけ…」
「…ん…この辺りに…住んでるの…私達だけだし…」
「どうせ起きてるからって許可したんだっけ?」
「…ん…どうせなら…早く終わった方が…良いって…………」
ズゥン…ガゴン!
うおっ…なんだ?地震か!?
「…ひゃっ…進…」
「あいあい」
ソフィの地元では、地震が全くと言って良いほど起きないらしく、小さな揺れでも怖くて動けなくなってしまう。
「…ふぅ…怖かった…」
「さいですか」
まあ、誰かの腕に捕まっていれば大丈夫だそうなので、そこまで大事かと言われると、そうでもないのだが…
ズゥン…ガゴン!
「…ひゃっ…進…」
「ありゃ?地震じゃないのか?」
腕に捕まりながらガクガクと震えるソフィを宥めつつ、考えを巡らせ………あっ!
「ソフィ…時計を見てみな?」
「…時計?…」
そうして震えながら見た時計が指し示す時間は6時。
ズゥン…ガゴン!
「…ひゃっ…うぅ…」
「この揺れは工事だな…なんでこんなに揺れるかはわからないが…」
「…そっ…そんな…」
ソフィの瞳に絶望が浮かぶ。
「…一日中…これ?…いやっ…」
こらこらソフィさん…腕を抱えたまま体を振るんじゃありませんよ?腕の持ち主がブルンブルン震えてしまいます。
「ソフィ!そっろそろっストップププ」
「…いやっ…いやっ…」
ヤバイ、目が回ってきた。
「そっ、ソフィ!近くにいるから!俺ずっと近くにいるから!」
これ以上は…吐く…
「…本当?…」
「うん…ほんと…うえっぷ…本当だから…」
「…進!…ありがとう!…」
うおっ…すんごい目がキラキ…それどころじゃない…うえっぷ…
そうして、過酷な一日が幕を開けた。
「よし、やるか!」
吐き気からの脱却を果たした俺がやってきたのは執務室。
「…うん…がんばる…」
登校まであと30分…いつもは忘れ物の確認をしたり、テレビを見たりしてゆっくりと流れるこの時間だが…今日はお仕事の時間となる。
「………あのぅ…ソフィさん?」
「…?…なに?…」
「右腕をガッチリホールドなされますと…字が書けないんですが…」
「…う…そ…」
いやソフィさん…そんな雷が走ったかのような反応しなくても…
「…じゃっじゃあ…左腕…に…」
「そうすると書類が取れなくなるんですけど…」
「…う…そ…」
いやソフィさん…二度も同じ反応しなくても…
「まあ、怖くなった時にでもひだりう………」
「…ぎゅっ…」
「あの…ソフィさん?」
「…むふー…体に抱きついておけば…大丈夫!…」
そんなどや顔されましても…
ズゥン…ガゴン!
「…ひゃっ…」
「グエッ!」
腹が…締め付けられる…これは…まずい!
「そっ、ソフィさん?…出来れば…場所を………」
ズゥン…ガゴン!
「…ひぅ…」
「グエッ!」
第二次リバースの危機!
「あっ危なかった…」
その後、左腕に抱きついたソフィが書類を取るという手法で、危機を乗り越えた俺は、現在通学をしていた。
「それにしても、仕事が思ったより進んだな」
見て却下するだけの、簡単なお仕事だった。
「誰だよ!火急の所にお菓子コーナー設置の希望書出した奴!」
「…でも…それは…火急!…」
うわぁめっちゃ目がキラキラしてるぅ…
「家の予算で空間拡張する事になってもか?」
一気に目が死んだな…
「…そいつは…バカ…その費用で…小屋作った方が…よっぽど有意義…」
「だよなぁ…」
「…あっ…アリーだ…」
ソフィが指差した場所を見ると、長髪の赤髪が見える。
「そうだな、呼んでみるか?」
「…うん!…」
ソフィがキラキラした目で頷くので、手を振りながら呼び掛ける。
「おーい!アリー!」
その声に反応したアリーは、振り向き、そして気のせいかと前に向きなお…あっこっち見た。
こちらを凝視するアリーを気にせず、声をかける。
「おはよう」
「…アリー…おはよう…」
「えっええ…おはよう…」
「「…??…」」
猛烈に戸惑っているが、どうしたのだろう。
「その…私…邪魔じゃない?」
「なんでだ?」
「…そんなこと無い…よ?…」
一体何を言っているのだろうか?
「だって…熱々カップルの登校を邪魔したくないっていうか…馬に蹴られそうっていうか…」
「「…??…」」
「なんでわからないのよ!」
一体何を言っているのだろうか?
「隠さなくてもバレバレよ!腕組んで二人で登校してるのに、カップルじゃないとかあり得ないでしょ!」
「「…ああ…なるほど…」」
二人でうんうんと頷きながらも、ソフィが訳を話す。
今日はなんだか…長い一日になりそうである。




