第19話
「飲んでるかーい?」
「「「イエーイ!」」」
日が暮れて暫く立っても、このパーティーは終わらない。
「酔ったついでに大発表!」
「「「ウェーイ!」」」
「毎年恒例の新入生トーナメント…今年も開催決まりましたー!」
「「「イエーイ!」」」
「イエ………いや、とんでもない重大情報!」
「そして今年はー…」
「「「ワクワク!」」」
「え?なに?これ以上の出てくるの?」
「新旧戦が、復活しまーっす!」
「「「イエーイ!」」」
「うわぁぁ…って知らないよ!」
「えぇ…知らないのかぁ?」
「うわぁ!ダル絡みだ!」
うわっ!酒臭っ!
そうやって、面倒臭い大人達をなんとか捌いていると、なんとなく概要が掴めてきた。
「つまり…新寮側の最高戦力と、旧寮側の最高戦力がぶつかる総力戦ってことか?」
「「「そうそう」」」
「………勝ち目無くね?」
「「「だよなー」」」
「だよなーじゃ無い!」
「「「えぇ…」」」
「…進の…いう通り…というか…旧寮は…二人しか居ないのに…最高もなにも…無い…」
「「「でも、どうせだからさー」」」
だからこの息の合い様は何なんだよ!全員ダル絡みとか余計に質が悪いわ!
言い合いをする俺達を見ながら、アリーが一人離れたところで手を合わせている。
「御愁傷様」
そんなアリーの声は、すっと虚空に消えていった。
「「「アリーちゃんは、我々がしぇきにんを持って送りとどけましゅ」」」
「また明日ね」
今日の宴会も、お開きの時間である。
「おーう、気を付けてかえれよー」
「…今度は…タコパ…やる!…」
毎回律儀に片付けはしつつ、何かしら置き土産を置いていく彼等は、今回は何を置いていったのだろうか…
「うわっ!またゲーム機増えてる!」
前回来たときに、最新ハードが揃い踏みしてたから、もうこれ以上増えることは無いと思ってたんだが…
「…此方には…ホットプレート…」
「三台もあるし…しかもそれぞれメーカー違いで…」
調理器具もか…前回巨大蒸籠を持って来た時に仕舞う場所が無いって………
「ちょっと待て…あんなところに扉なんてあったか?」
「…!?…確かに!…」
台所の入口付近に、不自然に設置された扉………まさか!?
「マジかよ…」
「…あの人達…頭おかしい…」
俺もこの前の一件を経て調べたのだ…この空間拡張のお値段がいくら程するのかと…
その値段はまあ…ソフィが思わず吐き気を催す程度だとだけ言っておこう。
それがまた増えているのだ…若干目眩を覚える。
「…そういえば…階段前に…ポストが出来てた…」
「え?そんなのあったっけ?」
と言いながら、ろうかに顔を出すと…
「えぇ…」
「…意見箱って…書いてる…」
赤い色合いに、四角形のフォルム…ものすごく見覚えのある物が…
「あれ?ちょっと待って?そういえば封筒持ってきてた先生が何人かいたような…」
「…確かに…いた…」
なーんか嫌な予感をしつつ、ポストを見るものの…開け口はない。
「これ…まさか…」
トントンと音を立てながら階段を登り、正面にある自室の扉を………
「やっぱりかー!」
執務室ぽかった部屋は、書類や判子の登場と共に完成され…完全な執務室へと変貌した。
「あぁ…しかも無駄に高性能!」
書類が入っている各トレーには、それぞれ『火急』や『後回しでも可』などが書かれており、提出者の名前がごちゃ混ぜになっていることから、整理もしてくれるのだろう。
「許可してないのに…勝手に祭り上げられた…」
ここまで来たら、もうやるしかないのだろうと腹を括っていると、トコトコとついてきていたソフィが、情報を覗いていた。
「…明日から…仕事?…」
そう言う彼女の顔は明らかにほっとしており、寮長の大役を押し付けて良かった…という気持ちが滲み出ている。
フフフ…でもなぁ…
「ああ、ソフィとな!」
なんか新しい机があったんだよね!それも副寮長って書かれた札が置いてあるやつが!
「…え?…私と?…」
そう言って、ギリギリと音を立てながら俺の指差す場所を見ると…
「…ああ…そんな…」
見事に崩れ落ちた。
「…私の…学生生活が…」
そんなソフィの肩にポンと手を置きつつ、ニッコリ笑う。
「これから三年間頑張ろうな…」
「…そうだね…」
その時の俺達の目は、確実に死んでいたと思う。
ピピピピピ!
「んぁ?朝か…」
次の日。
あれは夢だったのではと思いながら着替え、寝室から出ると…
「あぁ…」
大量の書類に、これは現実だと思い知らされることになる。
「…夢じゃ…無かった…」
扉の方から聞こえる声に顔を上げると、死んだような顔をしたソフィと目が合う。
恐らく、俺も同じ顔をしているのだろう。
「朝食…食べるか…」
「…そうだね…」
そうして、新たな日常が始まった。




