第18話
「よし!帰るか!」
テンションがヤバイ方向にぶっ飛んだアリーを宥めて、校舎区画から帰ることにする。
ソフィは未だに恐怖が抜けないのか、腕にしがみつきながらプルプルしているが…
「…進…ご飯…どうする?…」
「うーん…今日は疲れたからなぁ…」
「…外食?…」
「惣菜とかにするかなー」
「いやいやいやいや!」
「「…?…なに?…」」
「二人揃って首を傾げないでよ!」
「…なにか…変なとこ…あった?…」
「そうそう」
特におかしなとこは無かったと思うんだが…
「え?あれ?私がおかしいの?」
「…晩御飯の話を…してるだけ…特におかしくは…無い…」
「そうそれ!そこがおかしいの!」
「…?…どこが?…」
「まるで、付き合ってるみたいな…というか同棲してるみたいに話すじゃない!」
「…付き合っては…無い…寮が同じ…だけ…」
「うんうん」
「いやいやいやいや!寮って言ってもマンションでしょ?それだけでそうはならないわよ!」
「…?…私達の寮は…一軒家…」
「そういえば、桐生さんがそんなこと言ってたっけ」
「は?…え?…はい?」
「…ちょうど良いから…今日はアリーも…一緒にご飯…」
「おっ良いな!じゃあ、たこ焼きにでもするか!」
たこ焼き器は、この前のパーティーの時に誰かが持ってきたのがそのまま置いてあるから…それ使おう。
「え?…え?」
「…そうと決まったら…買い出しに行く!…」
おぉ、ソフィの目がキラキラしてる。
「…たこ焼き…パーティー♪…」
ああ、憧れてたんだな…
「え?…私の意見は?…無視?」
「よーし、いくぞー」
「…ゴー…ゴー…」
「うっわぁ…ホントだったのね…」
何故かどん引いてる様子のアリーを他所に、鍵を開けて入っていく。
「ありゃ?誰か来てる?」
何足か靴が置いてあるってことは…
「あっやっぱり」
我が家のリビングでは、絶賛宴会が行われていた。
「おー!今日の主役が来たぞー!」
最早ベロンベロンに酔っ払った熊先生をよけ………熊先生!?
「…今日はまた…いっぱいいる…」
「へ?先生?なんで?どうして?」
うんうんと頷くソフィに、ダル絡みされる俺…目をグルグル回しているアリーと、リビングは見事に混沌と化していた。
「…で?サプライズしようと準備したは良いけど、我慢できずに飲んじゃったと…」
「「「すいませんでした」」」
「挙げ句の果てに生徒にダル絡みして…その結果がこれですか?」
俺は、アリーがキレてボロボロになったリビングを眺める。
「「「申し開きもございません」」」
「現状維持の魔方陣がかかってて良かったですね?そうじゃなかったら家具とか吹き飛んでましたよ?」
正直、現状維持の魔方陣の効果が、攻撃にまで及んでいたのは驚きだった。
まあ、結果オーライと言うやつである。
「「「はい…」」」
「熊先生?なにか言いたそうですね…なんですか?」
「俺達…一応教師………」
「なにもないようなので、これにて解散とします」
「「「はい!」」」
それでもなにかを言おうとしていた熊先生は、周りの先生方に押さえ込まれている。
俺の後ろでソフィが見てるからね!仕方ないね!
「各自掃除はきちんとする事!良いですね!」
「「「わかりました!」」」
そうして解散した臨時説教部屋は、元のざわめきを取り戻しながら掃除されていく。
「先生…」
約一名ほど、教師を可哀想な者を見る目で見ていた生徒がいたが、まあ、気にしなくて良いだろう。
「えー、我等の新しい後輩が通過儀礼をこなしたことを祝して…カンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」
「カンパ………え?決闘が通過儀礼なの!?」
そんな通過儀礼存在してほしくなかったんですけど!
「まあ、俺達の時は旧寮を下に見る風潮が強かったからなぁ…」
「新寮生が吹き飛ばされるのが、春の風物詩だったよな…」
そんな風物詩は嫌だ!
「んで、今回吹き飛ばされたのは誰だったんだ?」
「…ギルバート・グランド…っていう…最低の男…」
「ああ、グランド卿の…」
「元神童のキリギリスか…」
元神童?
「…元神童…だったの?…」
二人して目を丸くして驚いていると、アリーが驚いていた。
「ああ、彼がそうだったのね…」
「…知ってるの?…」
「まあね、昔は有名だったのよ」
「3歳で魔法を使って、5歳で熊倒したらしいからな」
あっ熊先生だ。
「…それで…神童…」
「机上戦争でも負け無しだったらしいしな」
「…それが…なんで?…」
調子に乗って…ってパターンかな?
「母親が死んじまったからだな」
うっそん…めっちゃ重い!
「え?そうだったんですか!」
あら?アリーも知らなかったのか?
「俺は丁度その時期奴の家にいたからな…そこからは…まあ、母親の居ない寂しさを紛らわせようとしたんだろうな…」
「親の名前を使って…散財三昧…」
ああ…それで…
「父親も、止めるに止めれなかったんだろ」
「そうして、結果的に付いた異名が………」
「七光りのキリギリスってこったな」
「でも…なんでキリギリスなんです?」
そこが今一わからないんだが…
「ギルバートはな、使うのは親の名前なのに、財布は自分のを使ってたんだよ」
「へ?」
「猟やら賞金やらで稼いでたみたいでな、それを使って散財してたんだが…」
「ある年のオークションで、アイツが無茶苦茶欲しがってた日記があってね…周りの人達も、あれだけ散財してたんだから、当然これにも参加するとばかり思ってたんだけど…」
急にアリーが引き継いだな…ここからは有名な話なのか?
「アイツ、門前払いされたのよ…それも参加費不足で」
「ありゃあ…」
「そのオークションが冬だったのも相まってかしらね…アリとキリギリスって童話になぞらえて…キリギリスが…そうなるまで親の金で散財し続けたから、七光りが付いたって感じね」
なるほどなるほど…
「んで実際は、使ってたのは自分の金で…無くなったのも自分の金って訳だな」
「そうね…ただのキリギリスだったって事ね…」
まあでも、神童かぁ…
「…あいつの…謎のカリスマが…ちょっとだけ…わかった…」
少ししんみりしつつも、パーティーはまだまだ続いていく。




