第17話
「中立のはずの審判が奴に肩入れしてるではないか!反則敗けで奴の敗北だろう!」
まあ、間違えでは無いだろう。
金髪貴族君もルール違反してただろって?グレーゾーンまっしぐらではあるが、ルール上に観客席からの攻撃禁止…なんて無いからなぁ…まあ、わざとなんだろうけど。
「中立?なに言ってんだ?俺は第三者と言ったんだぞ?決して中立ではない」
「なっ!」
「そして、審判が乱入してはいけないなんてルールもねぇな!」
「そっそれは…」
「大体、こんな面白そうなやつ…この俺がただ黙って見てるだけなわけねぇだろ!」
あーっ!やっぱそうですか!そうですよね!
「始めの目潰しで決まった時は、このまま連戦で吹っ掛けてやろうと思ったが…相手が狂人の魔法使いだったからなぁ…」
うーん…嫌な予感するなぁ…気のせいだといいなぁ…
「勝った方と戦おうと思ってたのに…てめぇ!まとめて殺ろうとしやがって!」
それが助けた理由かぁ…うーん…自分に正直だなぁ…
「まあ、火力不足で両者五体満足なのは誉めてやってもいい」
えっマジで?うわっ!マジじゃん!狂人さん気絶してるけど五体満足じゃん!
「言いたいことは…それだけか?」
おっ…金髪貴族君の反撃か?
「私は、そいつが代理等とは一言も言っていない!つまり、勝負はまだついていないと言うことだ!今だ!撃て!」
いや、嘘だろおい!そんな屁理屈…って、熊先生頷いてるぅ!
「喰らえ!ライトニングストーム!」
四方八方から飛んでくる魔法群。
まあ、でも…
「狂人が気絶してる今なら…割とどうとでもなる!」
前門の虎後門の狼って状態だったから、どうしようも無かったが…
「狼単体なら、処理できるんだよ!」
金髪貴族君が立っている側の観客席へと走っていく。
「ソフィ!階段頼んだ!」
「…ん…アイスシールド!…」
前方の壁に、氷の盾が二枚生えてくる。
「よっしゃ十分だ!」
もうこの後は考えなくて良い!
全力で魔力を使って、一気に距離を詰める!
「盾だ!盾を狙え!」
金髪貴族君の指示に従い、魔法を射ってくるが…少し遅い!
魔法の下を潜り抜けつつ、金髪貴族君へと拳を振り上げ………
「甘いわ!ライトニングボルト!」
「そっちがな!武装展開!」
その拳のなかに剣を発現させて、魔法をぶったぎる!
「なっ!?」
そうして隙だらけになった金髪貴族君に向かって…
「喰らえやぁ!」
峰での一撃を叩き込む!
「グッ…ハッ…」
ドサッと、気絶し倒れ込む金髪貴族君。
「そこまで!」
二度目のその宣言に抗う者は…居なかった…
「勝者…黒田進!」
グッと握った拳を掲げる。
パラパラと散発的な拍手や、少数のどよめきが聞こえる。
これは後で知ったことだが…金髪貴族君が連れてきていた、買収済みの観客以外にも、少数ながら観客はいたらしい。
こうして俺は、少数の味方を作る事が出来たのだった。
「…進!…」
「進君!」
「ソフィ!…と、名前教えてもらえなかった人!」
決闘が終わって少したった後…熊先生をなんとか言いくるめて会場を出たところで、本日の功労者二人と合流した。
「あれ?私の名前教えて無かったっけ?」
その言葉に首を縦に振っていると…クスリと笑いながら教えてくれた。
「私の名前はアリシア・ボマーよ!よろしくね」
「ああ、よろしく」
すっと出された手を握りながら、挨拶を返す。
「ところでボマーさんは………」
「アリーって呼んで?」
「いや、流石にいきなりそれは…」
「アリーって呼んで?」
威圧感が凄いですよお嬢さん?
「アリシア…さん?」
「んー?それでも良いんだけど…私の恩人なんだから、もっと気楽に呼んでほしいな?」
いや、言葉とは裏腹に…威圧感がやべぇんでごぜぇます!
「あっ、アリー…」
「それでよろしい」
うんうん頷いてる…良かった…
「…良かったね…アリー…」
「ほんとよ…」
あれ?お二人さん?
「ああ、私ね?自分の名前が好きじゃないのよ…」
「そりゃあ…どうして?」
「まず、ボマーの方だけど…この名字、お父さんの爆発好きを拗らせすぎた結果の産物でね…」
そういえば、熊先生が『流石爆発公の娘だな』って言ってたっけ…
「小さい頃から、それが原因で周りの子から避けられちゃって…」
「あらら…」
「アリシアの方はね、私のお祖母ちゃんと同じ名前なの」
「あれ?それなら別に良いんじゃ?」
と言った途端に、アリーの目からハイライトが消える。
「私のお祖母ちゃんね…お父さん以上の爆発狂いだったらしくて…」
「おっおう…」
なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ…
「私が小さい頃にね?魔法を使ったのよ…なんかね、才能があるって褒められて、嬉しかったんだけど…」
なんか…目が更に死んでません?
「才能開花した年がお祖母ちゃんと同じだって事で…生まれ変わりって言われて、大人にまで避けられるようになっちゃったの…」
うっおう…過酷な幼少期がドンドン出てくるんですけど…
「改名なんて出来ないし、渾名にするにも、アシーだとお祖母ちゃんと一緒になっちゃう…」
大分思い詰めてるな…
「だから、仲が良いひとには皆アリーって呼んでもらうことにしたの!」
長い赤髪が、夕日に照らされてキラキラと輝く。
アリーさん!むっちゃ怖いです!目のハイライトが無いところが特に!
そっ、ソフィさん…怖いのはわかったから震えながら抱きつかないで!俺も震えてきちゃうから!
「フフッ…いつかお父さんを爆発させるんだ!」
「「…ヒッ…」」
やっぱ訂正!抱きついといて!人の温もりが無いと震え止まらなくなっちゃうから!
「そそそ、そうか…出来たら良いな!」
「うん!頑張るね!」
うん!怖い!




