第16話
「ヒャッハァ!」
開幕、世紀末な掛け声と共に突っ込んでくる狂人。
取り敢えず、初手が魔法じゃない時点で、こいつがガチで狂っていることが確定した。
薬物なんかを使うと、集中できなくなって魔法を使えなくなるらしいんだが…好都合だ。
こちとら近接戦闘しか出来ない、根っからの剣士だからな!
「シッ!」
初手は勿論―――
「目ガァ!」
―――目潰しだよね!
下からの切り上げで、砂を巻き上げ目を潰す。
そしたら後は…
「オラッ!」
武装を解きつつ、身体強化をして鳩尾に一発。
「ウグッ…」
「シッ!」
下がってきた顎にもう一発。
「ガッグゥ…」
膝をついたら武装を発現させて、首筋にトン。
「そこまで!」
武器を仕舞うのと同時に、身体強化をして大きく後ろに飛ぶ。
「ヒーヒヒヒ!」
まあ、ですよね!
視力を回復した狂人との、第二ラウンド開始である。
え?熊先生?どうせ面白がって、助けには来ないだろうよ!
「ヒャッヒ!」
唐突になにもない場所でナイフを振り始めたので、取り敢えずナイフの射線上から逃げてみたんだが…どうやら正解だったようだ。
「こりゃ…風の魔法か」
目に見えない斬撃だから、大体正解だろう。
というか、流石にただの狂人ではないか…
「ヒャッヒ!」
「よっと…」
狂人の魔法使いとは…一つの境地である。
それは、魔法使いの魔力が精神依存であることに起因する。
通常魔法使いは、魔法を使う度に精神を磨耗しながら戦っていく。
そして、それに耐えきれなくなったら…気絶する。
「ヒョヒョッ!」
「よっとっ…」
そんな感じで、精神の強さイコール魔力量なんだが、そんな魔法使いが…
例えば、もうこれ以上精神を磨耗しなかったら?
例えば、磨耗と言う感覚がなかったら?
「ヒヒッヒッヒッ!」
「よっほっとっ!」
無尽蔵の魔力を持つ、人間兵器の出来上がりである。
まあ、大体はそこに辿り着くまでに狂いすぎて、魔法が使えなくなるんだが…こいつは違うみたいだ。
「うし!見えた!」
回避に専念して奴の攻撃を見続けたお陰で、なんとなくわかった。
こいつの攻撃は、ナイフ術の型をいくつも繋げての連撃だ。
俺はナイフ術の型を知らないから、繋ぎ目がわからないのだが―――
「ここッ!」
―――終わりは、わかる!
十中八九攻撃を誘ってる間だろうが…しょうがない、そこ以外に隙がなかった!
剣を持ち、全力で奴に突っ込む。
「ヒャヒッ!」
持ち手と逆の手が…上がって………ッ!マズッ!
「武装解除ォ!」
剣を消し、身体強化を全力で掛けた上での緊急回避!
「ヒヒヒヒハハハ!」
あっぶねぇ!ちょっとかすった!
「そうだよな…普通に魔法も使えるよな…」
「ヒャホッ!」
「クソッ!」
ナイフでの攻撃を、後ろへと大きく回避して剣を構える。
「仕切り直しかよ…」
仕方ない…次の切れ目で………
「ライトニングボルト!」
ッ!?
「ガッグッ!」
クッソ…警戒…外しちまった!
「ヒャヒッハ!」
そりゃ追撃するよね!
グゥ…回避は無理か…なら…
「ぶったぎる!」
魔法は見えない…が、地面に若干の砂埃がたっている!
「リズムゲームはッ!苦手なんだよッ!」
奴の型の特長は、ドンドンと速さが増していくこと。
始めの様子見の大振りを終えると………
「ヒャッヒヒヒヒヒヒ!」
猛スピードの連撃が始まる!
「武装解除!」
こんなもん!どう足掻いても受けきるの無理!
「身体強化ァ!」
なら…足に強化集中して逃げ切る!
「遅い遅い遅いッ!」
奴を中心に円を書くように走りながら、時々来る先読みの攻撃を足を緩めたり、軽く飛んだりして避けていく。
「ヒャヒヒヒ!ヒャハハハハ!」
「グッウゥ…」
多少の被弾はこの際必要経費だ!
そろそろ…そろそろ来る…
「ヒャッフッ!」
来た!連撃の切れ目!
「今だッ!」
方向転換しつつ、全力で奴へと突っ込む!
「打てぇ!ライトニングストーム!」
ウッソだろお前!このタイミングで観客掌握すんのかよ!
全方向から放たれる、魔法!魔法!魔法!
「流石にこれは………」
無理じゃ………
「…アイスシールド!…」
「出来た…ビッグボム!」
ズンッ………ガドォン!
「「「うわぁぁぁぁぁ!」」」
阿鼻叫喚だよ!ってあれ?俺生きてる?
「すげぇなあの嬢ちゃん!流石爆発公の娘だな!ガッハッハッ!」
「熊…先生?」
「いや、流石にあれをアイスシールドだけじゃ無理だと思ってな、引っ張り上げたんだが………」
そうして、熊先生が指さす場所を見ると…
そこには、今だ健在な三枚の氷の盾が…
「俺はいらなかった…というよりも邪魔しちまったみたいだな」
そう言って観客席の方を指差すので、そちらを見ると…
「あらぁ…」
かつて無い程に頬を膨らませたソフィの姿が…
「まっ…ご機嫌取りは坊主に任せたわ!頑張れよ、色男!」
「大丈夫かなぁ…」
そう言いながら、闘技場へと戻った熊先生は、高らかに宣言する。
「この勝負、坊主の勝利だ!」
「…ん…当たり前…」
「勝ったっ!凄いっ!」
シーンとなる闘技場に、響く二人の声…いや、三人か…
「ふざけるな!」
爆風に巻き込まれて倒れていた金髪貴族君が、叫びながら立ち上がる。
さて…なにを言って来るのやら…




